国立大学法人 岡山大学

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データサイエンスを基盤としたドラッグリポジショニングにより抗がん剤副作用に対する治療法を開発

2022年03月18日

◆発表のポイント

  • 医療ビッグデータやオミクスデータなどを活用したデータサイエンスにより、高脂血症治療剤シンバスタチンが抗がん剤誘発末梢神経障害に有効であることを見いだしました。
  • シンバスタチンが抗がん剤誘発末梢神経障害を抑制する分子メカニズムの一部を解明しました。
  • 本研究アプローチを用いることで、他の薬剤性副作用や、癌をはじめとする難治性疾患に対する創薬につながることが期待されます。

 岡山大学病院薬剤部の座間味義人教授、牛尾聡一郎特任助教、同大学院医歯薬学総合研究科医療教育センターの小山敏広准教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部 臨床薬理学分野の石澤啓介教授・新村貴博研究員、相澤 風花特任助教、九州大学大学院薬学府 臨床育薬学分野の川尻雄大助教らの研究グループは、データサイエンスを基盤とした新たな創薬アプローチにより、高脂血症治療剤シンバスタチンが抗がん剤誘発末梢神経障害に有効であることを見いだしました。
 抗がん剤であるオキサリプラチンは、副作用としてしびれなどを伴う末梢神経障害を高頻度で発現し、がん患者のQOL低下や治療の中止にもつながるため、治療法の開発が求められていました。しかしながら、オキサリプラチン誘発末梢神経障害は患者数が少なく、治療薬候補の有効性評価が困難であるため、これまでに臨床応用された有効な治療薬はありませんでした。本研究では、医療ビッグデータとオミクスデータを用いて、既存承認薬の中からオキサリプラチン誘発末梢神経障害に対して臨床上の有効性が示唆される治療薬候補を抽出し、有効性と作用機序を明らかにしました。今後、実臨床におけるさらなる有効性の検討するために、多施設共同臨床研究を展開し、臨床応用を目指しています。さらに、本研究で用いた創薬戦略は、様々な疾患に応用可能であり、希少疾患や癌をはじめとする難治性疾患の治療薬開発に貢献することが期待されます。
 本研究成果は、2022年3月1日に米国の医学誌「Biomedicine & Pharmacotherapy」に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

本研究では、がん患者さんのQOLを著しく低下させる副作用であるオキサリプラチン誘発末梢神経障害に対して、安全な治療薬候補を見いだすことができました。
今後も、医療ビッグデータ解析を中心としたデータサイエンスにより、薬剤性副作用や癌をはじめとする難治性疾患などに対する治療法を見つけていきたいと考えています。

座間味教授

■論文情報
 論 文 名:Identification of Prophylactic Drugs for Oxaliplatin-Induced Peripheral Neuropathy using Big Data
 掲 載 紙:Biomedicine & Pharmacotherapy (Impact Factor: 6.529)
 著  者:Yoshito Zamami, Takahiro Niimura, Takehiro Kawashiri, Mitsuhiro Goda, Yutaro Naito, Keijo Fukushima, Soichiro Ushio, Fuka Aizawa, Hirofumi Hamano, Naoto Okada, Kenta Yagi, Koji Miyata, Kenshi Takechi, Masayuki Chuma, Toshihiro Koyama, Daisuke Kobayashi, Takao Shimazoe, Hiromichi Fujino, Yuki Izawa-Ishizawa, Keisuke Ishizawa
 D O I:10.1016/j.biopha.2022.112744
 U R L:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35240525/

<詳しい研究内容について>
データサイエンスを基盤としたドラッグリポジショニングにより抗がん剤副作用に対する治療法を開発


<お問い合わせ>
岡山大学病院
薬剤部 助教 牛尾 聡一郎
(電話番号) 086-235-7650
(FAX) 086-235-7794

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