国立大学法人 岡山大学

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ガンを発症させる細胞の環境(ニッチ)とは?~慢性炎症が放つフォース~

2022年03月22日

◆発表のポイント

  • ガンの発症とは正常な細胞ががん幹細胞へ変化する過程と考えられますが、がん幹細胞の起源についてこれまでの研究を基に新しい概念を提唱しました。
  • 糖尿病や肥満などの成人病を含む慢性の疾患にガンの発症の原因があると考えると、がん幹細胞の起源が見えてきます。
  • 「ガンを発症させる細胞の環境」は「ガンを維持する細胞の環境」とは明らかに異なり、前者を明確に捉えることによりがんの予防が確実に行える様になります。

 ガンが日本における疾病による死亡原因の第1位を占める様になって40年が経ちました。この間、飛躍的な技術革新のおかげで、製薬会社や研究機関は新しい治療薬や治療方法を次々と開発してきましたが、ガンがこの第1位の座を譲らないのはなぜでしょうか?これは一つにはガンという病気が一言では済ませられない複雑な病であることが理由と考えられますが、ガンは遺伝子の病気と決めつけてしまうことにも一つの原因があると考えられます。実際に遺伝子異常と診断されているガンは意外と少なく大半は原因不明と考えられているのです。
 岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域の妹尾昌治教授らの研究グループでは、この10年間iPS細胞からがん幹細胞が生まれる条件を研究してきましたが、iPS細胞を慢性炎症様の環境に晒すことにより、遺伝子に異常をもたらす様な条件を用いずとも短期間でがん幹細胞が発生することを見出してきました。そこで、がん幹細胞が発生する細胞の環境について新しい概念を提唱し、肝臓、膵臓および卵巣の場合を例に挙げて、がん分野でも権威のある学術誌「British Journal of Cancer」に発表し、3月15日に掲載されました。この概念が広く受け入れられる様になれば、ガンを予防する方法が明らかになると考えられます。

◆研究者からのひとこと

副題の「慢性炎症が放つフォース」に使った「フォース」は映画スター・ウォーズに出てくる言葉を準えたものです。
Afify博士(左)と妹尾教授

■論文情報
 論 文 名:Cancer-inducing niche: the force of chronic inflammation
 掲 載 紙:British Journal of Cancer
 著  者:Said M. Afify, Ghmkin Hassan, Akimasa Seno & Masaharu Seno
 D O I:https://doi.org/10.1038/s41416-022-01775-w
 U R L:https://rdcu.be/cI5La

<詳しい研究内容について>
ガンを発症させる細胞の環境(ニッチ)とは?~慢性炎症が放つフォース~


<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院ヘルスシステム統合科学学域
教授 妹尾 昌治
(電話番号)086-251-8216
(FAX)  086-251-8216

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