国立大学法人 岡山大学

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性別違和の人口割合を0.3–1%と大幅に上方修正!(人口ベース調査)

2022年06月15日

◆発表のポイント

  • われわれは、日本における性別違和の人口割合を0.31%(狭義)、0.96%(広義)と算出しました。…2015年のオランダにおける推定値の11–35倍にのぼります。
  • 性別間で意味のある差は見いだされませんでしたが、年齢間の差(若年層 > 高年齢層)を認めました。
  • 身体的治療を望まない人が多くを占めていると考えられることから、そうした人たちのことを考慮することが大切です。

 岡山大学病院精神科神経科の大島義孝医員は、学術研究院医歯薬学域精神神経病態学分野の研究グループにおいて、日本における性別違和の人口割合を、性別と年齢分布ごとに調査しました。調査にはユトレヒト性別違和スケールという定評のある質問票を使用しました(人口割合の算出に、初めて信頼性のある質問票を用いたことが本研究の特徴です)。その結果は、従来の研究の推定値をはるかに上回るものでした。
 その研究成果は、2022年4月14日に米国の医学誌「The Journal of Sexual Medicine」にオンライン公開されました。また、本研究は、同年5月5日に英国の医学誌「Nature Reviews Urology」にて紹介されました。
 本研究で得られた所見は、専門のクリニックで診断・身体的治療を受けていない人々の中にも性別違和に苦しんでいる方が多いかもしれないことを示唆しており、身体的治療に重点を置いた従来の画一的な見方に見直しを求めるもので、医療、教育、政策などに反映されることが望まれます。また、研究領域においても、通説や方法の見直しといった概念変更を要請するものといえます。

◆研究者からひとこと

 論文は短ければ短いほどよいというのが私の信条なのですが、結果的に、長大で、しかもかなり“尖った”ものになってしまいました。統計ソフトのスクリプトが12,000行を超えたのも、今となっては…いや、やはり苦い思い出です。調査会社の担当の方が親切にしてくださったことが唯一の心の救いでした(ありがとうございました)。
 今回の研究はあくまで予備的なものです。正式な疫学調査が絶対に必要です!

大島医員

■論文情報
論 文 名:Prevalence of Gender Dysphoria by Gender and Age in Japan: A Population-Based Internet Survey Using the Utrecht Gender Dysphoria Scale
「日本における性別違和の人口割合:ユトレヒト性別違和スケールを用いたインターネット調査」

掲 載 誌:The Journal of Sexual Medicine
D O I:https://doi.org/10.1016/j.jsxm.2022.03.605
U R L:https://www.jsm.jsexmed.org/article/S1743-6095(22)01238-3/fulltext
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1743609522012383


引 用 誌:Nature Reviews Urology
著 者:Maria Chiara Masone
D O I:https://doi.org/10.1038/s41585-022-00606-0
U R L:https://www.nature.com/articles/s41585-022-00606-0

■研究資金
本研究は、田辺三菱製薬研究支援(MTPS20160521009)を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
性別違和の人口割合を0.3–1%と大幅に上方修正!(人口ベース調査)


<お問い合わせ>
岡山大学病院精神科神経科
医員 大島義孝
(電話番号)086-235-7242
(FAX)086-235-7246

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