国立大学法人 岡山大学

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母乳育児は子どもの肥満を予防する

2013年09月25日

 岡山大学大学院環境生命科学研究科人間生態学講座の山川路代研究員と頼藤貴志准教授、同大大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野の土居弘幸教授らの研究グループは、乳児期の授乳とその後の子どもの肥満との関連を検討し、生まれてから母乳で育った子どものほうが、粉ミルクだけで育った子どもよりも、太り過ぎや肥満になるリスクが低いことを明らかにしました。
 本研究成果は2013年8月12日、アメリカ医師会の小児科領域雑誌『JAMA Pediatrics』オンライン版に掲載されました。
 本研究成果により今後、母乳による育児が、乳児に多い呼吸器感染症や下痢症などの予防につながるだけではなく、乳児期を過ぎた子どもにも、肥満の予防という良い影響をもたらす可能性があります。
<業 績>
 岡山大学大学院環境生命科学研究科人間生態学講座の山川路代研究員と頼藤貴志准教授、同大大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野の井上幸子大学院生と土居弘幸教授、ならびに、広島大学医歯薬保健学研究科公衆衛生学研究室の加藤承彦特任助教らの共同研究グループ5人は、厚生労働省が2001年から実施している「21世紀出生児縦断調査」に収集されたデータを用いて、生まれてから6~7か月まで母乳だけを与えられて育った子どもは、粉ミルクだけで育った子どもよりも、7歳の時点で太り過ぎになるリスクは15%、肥満になるリスクは45%も減少することがわかりました。8歳の時点でも同様の結果となり、母乳育児が子どもの肥満予防に効果があるということが明らかになりました(図1、2)。
 母乳による育児が子どもの肥満を予防する効果をもたらすかどうかについては、世界的に議論されているところですが、その効果はないとする考えが主流になりつつありました。しかし、今回の研究成果は、この流れとは反対に、母乳育児が子どもの肥満を予防するという結果が得られました。


図1 過体重の標準体重(7歳)多変量解析結果



図2 肥満の標準体重(7歳)多変量解析結果

<見込まれる成果>
 母乳育児は、乳児の呼吸器感染症や下痢の予防など、さまざまな良い影響が知られています。特に、感染症により乳児が死に至るケースも多い開発途上国では、母乳育児の重要性が訴えられています。
 今回は、日本において、母乳育児が7歳から8歳の子どもの肥満予防という効果をもたらすことが明らかとなったため、日本のような先進国においても、母乳育児をさらに推し進めていくべきであると言えるでしょう。

<補 足>
 なぜ母乳育児が乳児期を過ぎた子どもの肥満を予防するのかについては、まだはっきりとした理由はわかっていませんが、母乳中に含まれるホルモンなどの成分、母乳と粉ミルクの摂取方法の違いの観点から検討されています。今後、この理由を解明するための研究が必要とされています。

 本研究は、独立行政法人厚生労働科学研究費補助金(No. H24-次世代-一般-004)の助成および公益財団法人住友財団環境研究助成(No.113375)を受け実施しました。

添付資料はこちらをご覧ください

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Yamakawa M, Yorifuji T, Inoue S, Kato T, Doi H. Breastfeeding and obesity among schoolchildren: A nationwide longitudinal survey in Japan [published online August 12, 2013]. JAMA Pediatr. (doi:10.1001/jamapediatrics.2013.2230.)

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
(所属)岡山大学大学院環境生命科学研究科
    人間生態学講座 
(氏名)准教授 頼藤貴志 研究員 山川路代
(電話)086-251-8925
(FAX)086-251-8925

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