国立大学法人 岡山大学

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高齢者施設入所者のおよそ1割は予防接種にもかかわらず免疫反応が極めて弱く、対応が必要

2022年07月29日

◆発表のポイント

  • 新型コロナウイルス感染症の対策として高齢者施設での対応が注目されています。
  • 微量の血液を利用し抗体価を測定した結果、ワクチンへのレスポンスが極めて弱い方が高齢者施設入所者のうちおよそ1割に及ぶことがわかりました。
  • これらの方に対しては、施設でのクラスター発生の際に特段の注意が必要だと考えられます。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)総合内科学講座萩谷英大准教授、大塚文男教授、岡山大学研究推進機構医療系本部中山雅敬教授のグループは、医療従事者、高齢者施設利用者およそ1900人の抗体価を測定し3回目接種の効果を検討しました。その結果、70歳以上の高齢者の中に、追加接種にもかかわらず中和抗体の産生が全く誘導されない、あるいはほとんど誘導されない方が1割程度いることが明らかになりました。この結果は、一定数の高齢者が予防接種にもかかわらずその恩恵を受けることができないという事実を示唆しています。高齢者施設でのクラスターは、今後コロナ対策を考えた上で極めて重要だと考えられますが、予防接種によってレスポンスしない方を感染後に積極的な治療対象としてトリアージすることにより、限られた医療資源の有効活用につながりえると考えられます。 
 本研究成果は7月11日、英国感染症協会の学術雑誌「Journal of Infection」に掲載されました。

◆研究者からひとこと

高齢者介護施設の方、地元の医師会の方々には本研究を遂行するにあたり、大変お世話になりました。様々な背景の方が入所されている施設では、静脈血を採取して抗体価を測定するのは容易ではなく、本研究では微量の指先全血を用いて検査をする方法を採用しましたが、施設の方の協力なしには、成し遂げることはできませんでした。本研究成果をもって、高齢者施設の運営に少しでも役に立てば幸いです。
中山教授

■論文情報
論 文 名:Poor vaccine responsiveness towards third-dose mRNA vaccine of COVID-19 in Japanese older people
掲 載 紙:Journal of Infection
著  者:Hideharu Hagiya, Takao Hikita, Tomohiro Habu, Masaki Asada, Takashi Yorifuji, Shinichi Toyooka, Fumio Otsuka, Masanori Nakayama
D O I:https://doi.org/10.1016/j.jinf.2022.07.007
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0163445322004133?via=ihub

■研究資金
 この研究は、三菱総合研究所が内閣官房の委託を受けて推進している「ポストコロナ時代の実現に向けた主要技術の実証・導入に向けた調査研究業務」の一環として実施したものに、岡山大学予算による追加の解析を含めたものです。

<詳しい研究内容について>
高齢者施設入所者のおよそ1割は予防接種にもかかわらず免疫反応が極めて弱く、対応が必要


<お問い合わせ>
岡山大学 研究推進機構 医療系本部
教授 中山 雅敬
(電話番号)086-235-7888

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