岡山大学 歯学部

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.65 発行

2019年03月22日

 本学は3月18日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果を英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.65を発行しました。
 2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
 本号では、岡山大学大学院環境生命科学研究科(農学系)の田村隆教授らの 病原菌を殺さずに無毒化する対感染症の新戦略に繋がる可能性がある、病原細菌の感染と薬剤耐性の獲得に関わるS-S架橋形成メカニズム解明についての研究成果について紹介しています。
 病原細菌はべん毛や繊毛、毒素注入器※1などの巨大タンパク質構造物を細胞表面に構築して、宿主への感染、薬剤からの忌避、さらに薬剤耐性の異種間伝播に用います。その構築にはタンパク質分子内のシステイン残基間に正しくジスルフィド(S-S)架橋を作る仕組みが必要で、酵素であるDsbAがその役割を担っています。
 田村教授らは、DsbAの酸化力をチューニングするタンパク質工学の技術を開発して、酸化力の異なるDsbAを発現させた大腸菌によるFピリ(性繊毛)形成量を調査しました。その結果、DsbAが高い活性を発揮するための要件として、基質に結合する際に深い溝が形成されることを明らかにしました。
 今回の研究成果は、病原性細菌が持DsbAの鍵穴に強く結合して、細菌のタンパク質複合体の構築を停止する新しい薬剤の開発を可能にします。この研究で開発された構造計算手法を活用すればアミノ酸配列から病原菌DsbAの立体構造と溝の形状計算が可能です。この戦略では淘汰圧が発生するリスクは極めて低く、病原菌と人類のいたちごっこに終止符を打つことができます
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系と異分野融合から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術、健康維持増進へより早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。


※1:毒素注入器(毒素注入装置)
病原菌が、感染する宿主細胞にエフェクターと呼ばれる毒素タンパク質を打ち込む仕組みのことです。


Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.65:Game changer: How do bacteria play Tag ?


<Back Issues:Vol.57~Vol.64>
Vol.57:Possible link between excess chewing muscle activity and dental disease (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)皆木省吾教授、加藤聖也医員)
Vol.58:Insights Into Mechanisms Governing the Resistance to the Anti-Cancer Medication Cetuximab (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)江口傑徳助教)
Vol.59:Role of commensal flora in periodontal immune response investigated (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)森田学教授、福原大樹医員)
Vol.60:Role of commensal microbiota in bone remodeling (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)森田学教授、内田瑶子歯科医師)
Vol.61:Mechanical stress affects normal bone development (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)池亀美華准教授)
Vol.62:3D tissue model offers insights into treating pancreatic cancer (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 狩野光伸教授&大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)田中啓祥助教)
Vol.63:Promising biomarker for vascular disease relapse revealed (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)渡辺晴樹助教、佐田憲映准教授)
Vol.64:Inflammation in the brain enhances the side-effects of hypnotic medication (岡山大学病院薬剤部 北村佳久准教授)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp

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