アンチトロンビンIII, AT III ( Antithrombin III )
臨床的意義
アンチトロンビンIIIは,分子量65000,肝および血管内皮細胞で産生され生理的には抗凝固作用を有しており,その欠乏により過凝固状態を引き起こしやすくなる。また,AT IIIの血中濃度は産生と消費のバランスにより左右されるため,意義として生体内での凝固系の動き,産生状態,血栓症の病因を知ることが重要。またAT III遺伝子は,染色体1q22-25上に存在し,先天性の場合はこの遺伝子レベルの異常により,産生が不十分な場合はAT III欠乏症となり,異常なAT IIIを産生する場合はATV異常症となる。なおAT IIIの生体内半減期は健常人で65時間であるが,DICでは短縮する。生体内では血中,血管内皮,血管外にそれぞれ4:1:5の比率で分布している。
測定機種: CS-5100(シスメックス株式会社)(平成26年3月24日より)
ACL TOP(三菱化学ヤトロン社)(平成18年1月10日より平成26年3月23日まで)
STA(ロシュ・ダイアグノスティック株)(平成18年1月9日まで)
STAコンパクト(ロシュ・ダイアグノスティック株)(平成18年1月9日まで)
測定法: 発色性合成基質法
基準値: 80〜130%(平成26年3月24日より)(添付書引用)
71〜115%(平成18年1月10日より平成26年3月23日まで)
80〜120%(平成18年1月9日まで)
相関
y=1.238x-8.237 r=0.969
n=77 x:旧試薬 y:新試薬(平成18年1月9日)
異常値を示す疾患
低値疾患: 先天性AT III欠損症 ・ DIC ・ 重症感染症およびMOF ・ 肝機能不全 ・ ネフローゼ症候群
検体採取・測定条件
・3.2%のクエン酸ナトリウム1に血液9の割合で採血し,転倒混和を5〜6回繰り返した後,すみやかに提出する。
・溶血すると不正確になるため注意が必要である。
・検体採取時には,組織トロンボプラスチンの検体への混入を避ける為,ダブルシリンジ法を用いるとよい。
関連項目
トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)