C3


臨床的意義
 
C3は、分子量19万で2本のポリペプチド鎖からなる糖蛋白である。血中補体成分の中では最も高濃度に存在する。主として肝臓で産生されるほか、単球やマクロファージにおいても産生される。また慢性関節リウマチ患者の関節滑膜組織がC3を産生、分泌するが、その他の関節の変性疾患では産生しないとされている。細胞内でまず1本鎖のproC3が合成され、糖鎖の結合、2本鎖への切断が生じ、C3となり分泌される。ヒト胎児の臍帯血中には、母体血液中の約半分量のC3が存在すること、また、すでに11週の胎児にC3の出現が認められることなどから、胎児期にすでにC3の産生が生じていると考えられている。抗原抗体複合物が形成されると、C1分子が活性型のC1(活性化された補体成分はCnと表される)となる。C1はC4ならびにC2に作用し、C4b2aを形成する。これは古典経路由来のC3転換酵素と呼ばれ、C3を分子量約9,000のC3aと、分子量185,000のC3bに分解する。C3転換酵素とC3bが反応したC4b2a3bはC5転換酵素としてC5を限定水解する。以降の補体の反応はC6、C7、C8、C9と進む。C3のα鎖内のチオールエステル基(S-C=O)が加水分解を受けたC3(H2O)と、BからなるC3(H2O)B複合体にDが作用し生じるC3(H2O)Bb(初期C3転換酵素)と、C3bBにDが作用し生じるC3bBb(第二経路由来のC3転換酵素)によりC3は限定水解され、C3aとC3bに分解される。C3転換酵素活性は、I因子(C3bインアクチベーター)とHにより不活化され、過剰な活性化が起こらないよう制御を受けている。C3bBbにC3bが反応してできる(C3b)2Bbは、C5転換酵素活性をもち、C5を限定水解する。以降の反応は古典経路と共通である。C3転換酵素により水解され生じたC3bは、免疫複合体や膜表面に結合し、一方、C3aは液相中に遊離される。C3bはI因子およびHによりiC3bとなり溶血活性を失い、さらに蛋白分解酵素によりC3cとC3d、gに分解される。これらの分解産物は、生体内で細胞膜上の種々のレセプターと反応し、多彩な生物学的活性を示すことになる。液相中に遊離されたC3aは、アナフィラトキシン活性を有する。抗原抗体複合物は、表面に結合したC3bを介して、細胞上のC3bに対するレセプター(CR1)に結合する。CR1はヒトでは赤血球、Bリンパ球、一部のTリンパ球、顆粒球、単球、マクロファージなどに認められる。C3bとCR1の反応は、抗原・抗体・補体結合物にヒト赤血球やウサギ血小板が付着し、凝集することで知られており、免疫粘着現象と呼ばれていた。微生物上のC3bと貪食細胞のCR1の免疫粘着現象は、微生物の貪食を高める。いわゆるC3bがオプソニン物質として作用する。C3bのオプソニン作用は、IgGとならんで異物排除機構に重要である。赤血球のCR1は、C3bを結合した免疫複合体と反応し、それらを網内系へ運搬、除去するのに重要な働きを担っている。リンパ球上のCR1は、抗体産生の調節に関与していると考えられている。C3aはC4a、C5aとともにアナフィラトキシンと呼ばれ、平滑筋収縮、血管透過性亢進などの作用を示す。また肥満細胞や好塩基球に働いてヒスタミンなどの遊離を促す。免疫複合体は、補体の存在下で沈降しにくくなる。この現象は、C3bを含む補体第二経路が中心的な役割を果たしており、補体による可溶化現象と呼ばれる。可溶化を受けた免疫複合体は、補体や膜との反応性を失う。C3eは、骨髄からの白血球遊出を促進する作用を示す。C3は膠原病や自己免疫疾患、腎疾患など補体系、免疫系がその病態に関与すると考えられる疾患の診断や治療効果、経過の観察などを目的として測定する。C3は古典経路と第二経路の両経路に関与する重要な補体成分である。補体価(CH50)が低下している場合、C4やC3の低下のパターンから古典経路か第二経路のいずれかの活性化が優位かを推測する。一般的には、古典経路の活性化による補体価の低値ではC4低下が著明であり、第二経路による場合はC4が正常でC3が低下する。

異常値を示す疾患
低値: 
SLE、悪性関節リウマチ、DIC、多臓器不全、アナフィラキシーショック、急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、エンドトキシンショック、C3NeFの存在、I(C3bINA)欠損症、C3欠損症、慢性肝炎、肝硬変、劇症肝炎、亜急性肝炎

測定方法: 免疫比濁法

測定機器: 日本電子BM6050(平成26年3月24日より)
          日本電子BM1650(平成18年7月18日より平成26年3月20日まで)
          日立7170自動分析装置(平成18年7月14日まで)

測定試薬: 日東紡績株式会社

基準範囲 : 73〜138 mg/dL (平成27年7月1日より共用基準範囲へ変更)
      65〜135 mg/dL  (平成17年3月7日より平成27年6月まで)
         67.0〜129.0 mg/dl (平成10年2月から平成17年3月6日まで)
          
45〜87mg/dl (平成10年1月まで)

相関
平成18年7月18日
X=旧機器
Y=新機器
Y=0.968X+2.45 r=0.995  n=200

平成17年3月
X=旧試薬(日本凍結乾燥研究所)
Y=現試薬
Y=1.10X-0.55  r=0.994 n=176

平成10年1月
X=旧試薬(協和発酵)
Y=現試薬
Y=1.619X+3.301   r=0.990

小児の基準値

 C3の産生は肝で行われ、かつ補体の活性化によって変動するので産生と消費の差を見ていることになるので注意が必要である。また基準値の幅が広い。AllotypeとしてSとFの二つの蛋白があり、日本人はほとんどS型である。産生は11週の胎児より出現し、新生児期は成人の約2/3の血中濃度であるとされる。低補体血清が存在し、C3の蛋白量が低値の場合、膠原病、腎炎の他に家族性の場合もあるので両親を調べてみることも重要である。

採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管

関連項目

C4
補体分解産物
C3NeF
I(C3bINA)
抗核抗体
抗DNA抗体
抗RNP抗体
免疫複合体

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