国立大学法人 岡山大学

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奥行知覚検査「三桿法」の科学的有効性を初めて検証

2014年09月25日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学分野の松尾俊彦准教授らの研究グループが、運転免許試験で行われている奥行知覚検査の「三桿法(さんかんほう)」の測定結果と、眼科で行われている立体視の検査結果が互いに相関することを初めて発見しました。本研究成果は、2014年7月24日にアメリカの科学雑誌『Strabismus』に掲載されました。
 三桿法は、1960年に制定された道路交通法の施行規則で実施が決められている奥行を検査するものです。それ以降50年以上にわたって大型やタクシーなどの運転免許の視覚(深視力)試験として実施されてきました。しかし、医学の分野である眼科の診療において立体視の検査を行う場合は、三桿法とは違う方法を使っており、この三桿法が医学的、科学的に有効であるものなのかを検証したことは今までにない状態でした。
 本報告は、法律に基づいて実社会で行われている三桿法の検査を科学的に検証した一例です。今後、眼科医らの協力によって、より簡便で効率的な運転免許の視覚(深視力)試験の開発にもつながると期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学分野の松尾俊彦准教授らの研究グループは、運転免許試験で行われている奥行知覚検査の「三桿法(さんかんほう)」の測定結果と、眼科の臨床検査として行われている立体視の検査結果が相関することを初めて示しました。
 1960年に制定された道路交通法の施行規則によって、通常の運転免許試験では視力検査のみが課せられていますが、大型やタクシーなどの運転免許試験では視力検査のほかに奥行知覚(深視力)検査の実施が定められ、この検査には三桿法を使うことが規定されています。
 しかし、眼科の診療で立体視の検査を行う場合は三桿法とは違う方法を使っており、立体視の検査結果と三桿法の測定結果が相関するのかどうかという点を検証した研究は、これまでに報告がありませんでした。

<見込まれる成果>
 三桿法は、古くから行われている奥行知覚の検査方法です。実際の検査は、3本の棒を立てて両脇の2本を固定した状態で真ん中の1本を前後に動かします。被験者は、3本の棒が横一列に揃ったと思った時点でボタンを押すか声を出して知らせます。このとき、真ん中の棒と両脇の2本の棒とのズレ幅が2cm以内であれば合格となる奥行知覚の検査方法です(図1)。
 運転免許試験において三桿法の実施が決められた1960年以降、いろいろな立体視の検査法が開発され、眼科診療でも使われてきました。
 本研究によって、眼科で使われている立体視の検査結果と三桿法の測定結果とが相関することがはじめて分かりました。三桿法のように、社会で実施されてきている検査が妥当かどうかを、最新の科学によって検証することは非常に大切です。この研究は、そのような科学的検証の一例を示しています。また今後、眼科医らの協力によって、より簡便で効率的な運転免許の視覚(深視力)試験の開発にもつながると期待されます。

図1.奥行知覚(深視力)を測る三桿法。3本の棒を立て、両脇の2本を固定した状態で真ん中の1 本を前後に動かす。被験者は、3本の棒が横一列に揃ったと思った時点でボタンを押すか声を出して知らせる


発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Matsuo T, Negayama R, Sakata H, Hasebe K. Correlation between depth perception by three-rods test and stereoacuity by Distance Randot Stereotest.. Strabismus, 2014, 22(3), 133-137. (doi: 10.3109/09273972.2014.939766)

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
眼科学分野 准教授 松尾 俊彦
(電話番号)086-235-7297
(FAX番号)086-222-5059
(URL)//www.okayama-u.ac.jp/user/opth/index.htm

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