岡山大学考古学研究室

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定東塚・西塚古墳第3次調査概要報告

4.定西塚古墳

前庭部

石室1(石室の構造・閉塞施設・陶棺/前のページ)


石 室 2

<グラフィック表示:西塚石室内発掘区略図

石室内遺物出土状況
 今回の発掘調査では床面まで掘り下げることができず、1区・2区では陶棺の脚の接地面で、3区では陶棺の身の上端から約20cm掘り下げたところで発掘を停止した。また、0ラインと奥壁の間に土層観察用のベルトを残している。  本調査で出土した遺物は武器・馬具・土器などで構成されており、その大部分が陶棺外から出土した。

 武器は刀身片4点、鞘尻1点、足金具1点、責金具状の金具3点、両頭金具3点、鉄鏃61点が見つかっている。刀身片4点のうち1点は鋒で、袖付近から出土しており、そのすぐ西側から鞘尻が出土している。また、足金具が、環に責金具状の金具を伴う状態で、2A区の2.5ラインから南40cmのところで見つかっている。鉄鏃は有茎平根式が1号陶棺の西側奥壁寄りに集中しているのに対し、長頸式は2A区袖付近に集中している。
上写真)袖付近 遺物出土状況
          <東から/拡大
            /青銅製鞘尻:画面右上、宝珠つまみ付須恵器杯蓋の上>

 馬具は鉄製素環鏡板付轡が1点、両頭鉄製品が1点、かこが2点出土した。鉄製素環鏡板付轡は2B区の南東隅より出土し、両頭鉄製品、かこは共に1号陶棺の西側奥壁寄りから出土した。

 土器は須恵器杯30個体分、はそう2点、甕片、土師器杯身2個体分が出土した。1B区の東側から完形の須恵器杯身が3点出土し、そのうち2点が高台付きであった。また完形の須恵器杯蓋が2点出土している。2A区袖付近の鉄鏃が集中している場所から、完形の須恵器杯身3点、杯蓋5点が出土した。2B区の南東から大形の土師器杯身の中に完形の須恵器杯身2点、杯蓋3点と小形の土師器杯身1点が入った状態で出土した。また、そのすぐ北側からと、5号陶棺の脚の間から1点ずつが見つかった。

中央左写真)須恵器出土状況</拡大

中央右写真)袖部東側壁付近 須恵器・土師器出土状況
  <南から/拡大

 上記のほか、鋲付金銅製品が1号陶棺脚の脇から、青銅製鋲は1B区2.5ライン沿いからそれぞれ1点出土した。また紡錘車状の骨製品は1A区0ライン沿いから、もう一つの不明骨製品は2B区の大形の土師器杯身の直下から出土した。鉄釘は多数出土しているが、原位置を保っていると思われるものはなかった。鉄滓は6点出土したが、すべてが古墳に伴うものかは不明である。また、排土中より刀子片2点、ガラス玉1点を発見した。

下写真)人骨出土状況</拡大
          /大型骨除去後

 なお、人骨が1区、2区より多数出土し、1B区2号陶棺の東側では、大腿骨や脊椎の一部が良好な状態で出土した。



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