- 研究紹介
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スタッフの研究分野と連絡先
教員
研究分野 | 氏名 | 職名 | 研究紹介 | 居室 | TEL |
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事務・技術職員
氏名 | 職名 | 居室 | TEL | FAX | |
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藤原 貴生 | 技術専門職員 | B141 | 7890 | g-wara | |
三宅 優子 | 事務補佐員 | A339 | 7891 | 7895 | miyakeyu |
※電話とFAXの局番は086-251です。
※メールアドレスは@okayama-u.ac.jpが後ろにつきます。
野坂 俊夫 准教授:研究と教育 ― 若い人たちへのメッセージ
研究内容の紹介
私の専門は岩石学です。岩石学とは,ひとことで言えば,地球や地球型惑星を構成する岩石の成因を研究し,それを通して地球と太陽系の過去,現在,そして未来の姿を明らかにしようとする学問です。地球外の岩石で直接手にとって調べることのできるものは非常にまれ(今のところ隕石と,月と小惑星から得られたわずかな岩石試料だけ)なので,岩石学の研究対象は,普通は地球のリソスフェアを構成する岩石です。
固体地球は組成の異なる3つの層,すなわち地殻,マントル,コアに分けられます。このうち地殻とマントル最上部は固い岩石でできているので,ひとまとめにして“リソスフェア(岩石圏)”と呼ばれています。リソスフェアは,固体地球(半径約6,400 km)の表面を覆う,厚さ100kmくらいの岩板ですが,それは一枚岩ではなく,数十枚に分かれています。その一枚一枚を“プレート”と呼びます。個々のプレートは,高温で流動性のあるマントル(アセノスフェア)の上に浮かび,別々の方向に移動しています。そして互いに衝突し,地球内部へと沈み込んで消滅し,また別の場所で再生するということを繰り返しています。このような現象と概念を総称して“プレートテクトニクス”と言います。
プレートの移動の速さは年間数cm~10cm程度であり,我々人間の感覚からすれば随分ゆっくりとしたものです。プレートの動きは,時折起きる大地震によって気付かされることはありますが,通常は実感されることはありません。しかしそれは長い年月の間に,大陸を引き裂き,そびえ立つ大山脈や深遠な海溝などを作ってきました。リソスフェアには,そのような壮大な地殻変動の,過去40億年にわたる記録が残されています。それはまさに “地球の履歴書”であり,これをひもといていくことが岩石学最大のテーマと言えるでしょう。私もこれまでに大陸地殻の進化やプレート間衝突などの記録を調べてきました。
またリソスフェアは,地圏と水圏・気圏との間の境界面として,現世と未来の地球環境に対して決定的な役割を担っています。特に地球表面の7割を覆う海水と海洋リソスフェアとの相互作用は,地球全体の水の循環,海洋底の地殻変動,海溝周辺の地震や火山活動,鉱物資源の供給と貯蔵,あるいは深海生物コロニーや地下生物圏の形成など,惑星全体の進化と人類の未来に関わる重要なプロセスです。この海洋底の岩石と水との反応プロセスも,現在私が取り組んでいる研究テーマの一つです。
私たち研究者が扱う岩石は多種多様で,それに応じて研究手法もまた多岐にわたります。岩石学では地質学,鉱物学,化学,あるいは物理学などの知識と技術を複数組み合わせて用いますが,どういう岩石に注目し,どういう手法を採用するかは研究者個々人で違っています。例えば,フィールドワーク(野外での観察とサンプリング)を中心に据える人もいれば,実験室での研究に重点を置く人もいます。
私の場合は,主に上部マントルと下部地殻の岩石を研究対象として,山や海,あるいは砂漠や草原へと,地球上のいろいろな場所に出かけてフィールドワークを行っています。そして野外から持ち帰った岩石について,光学顕微鏡と電子顕微鏡による観察や,分析装置を用いた化学分析などを行い,岩石内部での化学反応の解析を行っています。特に微小領域(数ミリメートル~数ミクロンのスケール)の観察と化学分析に重点を置き,その結果に基づいてリソスフェアの進化とテクトニクス(数10km~数100kmのスケール)の解明に取り組んでいます。このように,岩石学ではスケールが10桁以上も異なる世界を同時に扱います。ミクロの世界からマクロの世界へと視野を広げ,さらに現在から過去,あるいは未来へと時空を超えて思考を展開していくところに,岩石学の醍醐味があると言えるでしょう。
専門教育および社会との関わり
よく専門外の人からは「石を調べて何の役に立つの?」などと聞かれます。これに対して「学問は人類の知的好奇心を満たし,また豊かな人間社会を築くために有用なものである」などと大上段に構えた答え方をすることもできます(実際のところ私自身はそのように思っています)が,おそらく軽い気持ちで「役に立つの?」と聞く人の意味するところは,「経済的に」とか「実生活に」ということだと思います。
大学ではどちらかと言えば即効性のある研究よりも基礎的な研究に重点がおかれます。ですから「大学での研究が役に立つかどうか」という問題は,つまり基礎研究をするにしても「将来の実用性を見据えて研究テーマを選んでいるかどうか」と言い換えることができるかもしれません。岩石学の場合,一般にその答えは「NO!」です。では岩石学の研究者が行う専門教育も非実用的なものかと問われれば,その答えもやはり「NO!」だと私は思います。
日本はもともと資源の乏しい国であるうえ,数少ない炭鉱や鉱山がほとんど閉鎖されてしまった今となっては,私たちの生活が地下資源に支えられていることは日常生活ではほとんど意識されません。しかし実際には,自動車にも,電化製品にも,住宅にも,衣類にも,化粧品にも,時には食品にまでも,身の回りのあらゆるものに地下資源が利用されているのです。またこの先,石油に代わるエネルギー資源として,海底下に存在するメタンハイドレートが有望視されていますが,その実用化の暁には,日本は世界有数の資源大国になるかもしれません。さらに将来,人類が月や火星で生活するためには,地下資源の現地調達が必要となるでしょう。このように地下資源は私たちの現在と将来の暮らしに直接関わる大切なものであり,これを探査し,効率よく採掘するためには,岩石学,地質学あるいは地球科学の知識が必要不可欠なのです。
他にも,岩石学の知識や分析技術が直接的または間接的に活かされる場面が,世の中にはたくさんあります。例えば,岩盤を削って道路やトンネルを作ったり宅地を造成したりするとき,あるいは地震・崖崩れ・火山噴火の原因究明,放射性廃棄物の地下処分法の検討,アスベスト等有害物質の鑑定など,公害・災害の対策や予防策を講じるときです。他にも,岩石学で用いる顕微鏡観察や化学分析の手法は,各種工業製品(コンクリート,セラミックス,半導体,人工骨など)の開発・品質管理や,考古学(石器や玉などの産地の特定)などに応用されていますし,やや意外なところでは絵画の鑑定・修復(顔料の原料の特定など)や,警察の犯罪捜査(犯人が残した石の産地の特定)などにも貢献しています。私たちが行う専門教育は,このような実用面・応用面でのポテンシャルを内包しているのです。
しかしながら,研究テーマを設定するときには(少なくとも私個人は),社会に役立つことを意識しているわけではありません。私自身の研究の目的はただ一つ,「地球をより良く知る」ということです。その背景には単に知的好奇心だけでなく,「地球の住人である人類が長くそこに安住しようとするならば,その住まいのことをもっと良く知らなくてはならない」という思いがあります。住人を代表して住まいを調べ,その結果を公にし,得られた知見を次の世代に受け継いでもらう,それこそが私たち地球を科学する者に課せられた本来の役割だと思います。
地球科学と学びのススメ
この場を借りて,中・高校生の皆さんにぜひ伝えておきたいことを述べます。後半は大学生諸君へのメッセージでもあります。
高校の理科の授業では,「地学」の学習に十分な時間を掛けていないかもしれませんが,それは大学で地球科学を学ぶ上での問題とはなりません。むしろ地球科学の諸分野では,物理または化学(少なくともどちらか一方)の知識と手法を使って研究することが多いので,高校ではそれらの科目の基礎をしっかり身につけておいた方が良いでしょう。また古生物学(化石)や生物地球化学などの分野では,生物学の知識も役に立ちます。
ついでに他の教科について言っておくと,数学の必要度は地球科学科の中でも分野あるいは研究者ごとに違っており,数式をほとんど使わない場合もあれば,大学で学ぶ高等数学が必要な場合もあります。国語や英語は(入試科目に入っていなくても)必須科目です。文献を読む時や,自分で論文を書いたり学会で発表したりする時に必要となるからです。これは他の理系分野でも同様です。「自分は英語や国語が得意だから文系だ」と決めつけないで下さい。ただ,外国語の能力は大学入学後にも磨くことができるので,今はさほど得意でなくても,過剰の心配は無用です。
地球科学が他の分野と違うところは,「地球という惑星を理解することを最終的な目標とする」という点にあります。地球科学を志す者に最も必要なのは,学習経験や知識ではなく,地球に対する興味です。そして何事にも言えることですが,やってみないと本当の面白さはわかりません。いま,地球に少しでも興味がある人,惑星探査に関心がある人,太陽系の起源を探りたい人,高山・深海・南極など未知の地域を調査してみたい人,理科が好きだけれど志望学科を絞り込めずにいる人,自然観察が好きな人・・・どれかひとつでもあてはまる人は,地球科学科への進学を考えてみてはいかがでしょうか?
就職の際に「つぶしがきかない」という予想が,地球科学科への進学をためらわせるかもしれません。しかし一般論として言えば,そのような予想は正しくありません。既に述べたように,地球科学科で学ぶ知識や技術は,様々な分野で応用できるものです。また,人物選考の際に出身学部・学科を重視する企業もあるでしょうが,学部・学科に関係なく人物をしっかり見て採用する企業もたくさんあります。一般に理系の学生に求められるのは,「分析力」や「論理的思考能力」などの基礎的な能力だと思われますが,それらの能力は理系の学部・学科であればどこでも,専門教育を通して一定程度は身につけることができるはずです。ただ,何事もたくさん努力した人の方が成功する可能性が高くなるでしょうから,結局は就職活動の成否を左右するのは,所属する学部・学科というよりも,むしろ入学後の自分自身の努力(プラス「時の運」)だと思います。
就職に関することを述べましたが,実のところ大学は職業訓練の場ではありません。そもそも皆さんは何のために大学に進学するのでしょうか? 「就職のことはさておき,大学で好きなことを学びたいから」と言う人も多いでしょう(私自身がそうでした)。この「好きな(=面白い)こと」と「学ぶ」という言葉が,大学を語る際のキーワードになると思います。
学部・学科を問わず,大学での学習や研究に喜びを感じられる学生は幸せですが,世間を広く見渡せば,そうでない学生も少なからずいるようです。しかし,たとえ自分が後者であっても,何も落ち込むことはありません。受験期に抱いた(さほど根拠のない)将来の展望などに固執すべきではないのです。むしろ「面白くない」と感じたときこそが,自身の可能性を広げるチャンスなのかもしれません。もちろん「面白くない」と嘆くだけでは何も生まれないのであって,他に何か「面白いもの」を見つけなければチャンスにはならないでしょう。そこで,所属する学部・学科にとらわれず,「自ら学ぶ」という姿勢が必要になります。自ら求める人にとって,世の中は面白くないことよりも面白いことの方が多いのですから。
しかしながら,本当に面白いことは,そう簡単に見つかるものでもありません。当然のことですが「面白いこと」と「愉快なこと」は違います。スポーツにおける基礎体力トレーニングのように,「面白いこと」には不愉快な努力がつきものなのです。学問・研究の喜びも困難の先にあります。初めのうちはあまり楽しくなくても,学んでいくうちに,高校生の自分が知らなかった学問・研究の面白さにハッと気がつく時が来るかもしれません(若き日の私のように)。「学ぶ」ということは,苦しいことかもしれません。しかし苦しいことを「面白くない」と言って避けてばかりでは,本当に面白いことはいつまでも見つからないでしょう。
皆さんが大学で過ごす 20歳前後の時期は,人生においてとても大切な時期です。その学生時代を,社会に出る前の単なるモラトリアム期間にしてしまうのは,あまりにももったいないことです。この貴重な時期に,ぜひ自ら学び,本当に面白いことを見つけてください。所属する大学,学部,学科,研究室は環境条件という意味では重要ですが,それにこだわる必要はありません。大切なのは,「どこで学んだか」ではなく「何を学んだか」です。
主な研究・教育実績
研究論文等
研究活動は基本的には個人的な営為ですが,科学の世界ではひとりの力で自然の全てを理解することはできないので,知識の共有と蓄積が必要となります。そのため,プロの科学者は研究成果を論文として公表しなければなりません。ではたくさん論文を書けばよいのかというと,そうとも限りません。論文にも質の良し悪しがあるからです。当然,人々の理解を根本的に変えたり飛躍的に前進させたりする大発見が最も重要なのですが,そこまでではなくとも,一般に科学論文というものは,その後の研究に対する貢献度の高いものほど重要であると言われています。しかしながら,この「貢献度」には必ずしも明確な尺度があるわけではありません(被引用回数など,目安とされる数値はありますが,時流に乗っていない研究は低く評価されてしまうという問題があります)。このため,目指すゴールの方向は研究者によって違います。
私自身が目指しているのは,地域ごとに多様で複雑な様相を呈する岩石から,地球全体に当てはまる普遍的法則性や,地球が現在の姿に進化する上で不可欠であった重要な事象を発見すること,そしてその発見を世界共通語である英語の論文にまとめて,世界中に情報発信することです。私のこれまでの研究成果の詳細については,研究紹介のページをご覧下さい。
学位
理学博士
受賞・顕彰
- アメリカ地質学会 「exceptional reviewer (優秀査読者)」 (2010年)
- 日本鉱物科学会 「平成23年度日本鉱物科学会論文賞」(2012年)
受賞論文:Nozaka, T. & Ito, Y. (2011) Cleavable olivine in serpentinite mylonites from the Oeyama ophiolite. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 106, 36-50.
- 日本物理学会 「Award for top 10 articles highly cited in 2012 (年間引用数ベスト10)」(2012年)
受賞論文:Kakiya, S., Kudo, K., Nishikubo, Y., Oku, K., Nishibori, E., Sawa, H., Yamamoto, T., Nozaka, T. & Nohara, M. (2011) Superconductivity at 38K in the iron-based compound with platinum-arsenide layers Ca10(Pt4As8)(Fe2-xPtxAs2)5. Journal of the Physical Society of Japan, 80, 093704.
国際協力および共同研究
- 中華人民共和国鉱物資源探査研究センター(JICA事業)短期派遣専門家(1998年~2001年)
- 中国科学院との内蒙古オフィオライトに関する共同研究(1999年~2001年)
- 統合国際深海掘削計画(IODP)第305次航海乗船研究員(2005年)
- アメリカ合衆国ハワイ大学客員研究員(2006年)
- 全米科学財団(NSF)研究計画調書審査員(2007年,2014年)
- ハワイ大学(米),モンペリエ第2大学(仏)との大西洋下部地殻に関する共同研究(2005年~2010年)
- アシュート大学(エジプト)とのエジプト東部砂漠地帯のオフィオライトに関する共同研究(2012年~)
- 統合国際深海掘削計画(IODP)第345次航海乗船研究員(2013年)
- インディアナ大学(米),ローレンス・リバモア国立研究所(米),ベルゲン大学(ノルウェイ)との太平洋下部地殻に関する共同研究(2013年~)
担当授業(分担を含む)
- 地球科学ゼミナールI, II, III, IV(学部1~3年生向け英語教科書の輪読)
- 地球科学巡検(学部1~3年生向けの地質見学・実習)
- 基礎岩石学(学部2年生向けの講義)
- 火成論(学部3年生向けの講義)
- 顕微鏡岩石学実験(学部2年生向けの顕微鏡観察の実習)
- 地質調査法実習(学部3年生向けの野外調査の実習)
- 地球科学輪講(学部4年生のためのゼミ)
- 課題研究(学部4年生の研究指導と卒業論文作成指導)
- 教養地球科学実験(学部1年生向けの一般教育科目)
- 総合演習U(教育学部開講科目)
- 教育実践演習(教育学部開講科目)
- 地球システム基礎科学(大学院生向けの講義)
- マントル岩石学(大学院生向けの講義)
- 地球科学ゼミナール(大学院生のためのゼミ)
- 地球科学特別研究(大学院生の研究指導と修士論文作成指導)
野坂 俊夫 准教授:研究紹介
研究テーマ:下部地殻~上部マントルの変成作用とリソスフェアダイナミクス
- 海洋性リソスフェアにおける岩石-水相互作用とテクトニクス
- オフィオライトかんらん岩の変質・変形履歴
- 蛇紋岩の脱水変成作用
- 深部捕獲岩の成因と大陸性下部地殻の成長
- ユーラシア大陸東部の広域変成作用とテクトニクス
最近の国際共同研究プロジェクト
- 東太平洋海膨近傍の海洋下部地殻の変質作用(IODP:欧米亜各国)
- エジプト東部砂漠地帯のオフィオライト(エジプト)
- 大西洋中央海嶺近傍のコアコンプレックス(IODP:欧米亜各国)
- モホールプロジェクト(IODP:欧米亜各国)
- 中国,内モンゴルのオフィオライト(中国)
主要な研究成果
以下は,自分で書いた(筆頭著者として執筆した)論文の要点をまとめたもの。学術雑誌に発表した論文では,単なる地域地質の記載に止まらず,発見した事実の示唆する普遍的法則性,あるいは研究手法の一般的有効性の提示を目指してきた。
1. 海洋性リソスフェアにおける岩石-水相互作用とテクトニクス
海洋リソスフェアの海水・熱水との反応による化学的改変と,そのテクトニクスへの影響を明らかにすることを目的として,海洋底から得られた岩石試料の研究を行い,以下のような成果を得た。
- 低速度拡大海嶺近傍にしばしば形成されるドーム状山塊(海洋性コアコンプレックス)の代表的な一つであるAtlantis Massifの主体を構成するかんらん石斑れい岩類が熱水性脈に貫かれており,その周辺に累帯性変質帯が生じていることを発見した。詳細な観察と熱力学的考察に基づいて,この変質帯が比較的高温(450℃以上)での継続的な熱水浸透によって生じたことを明らかにした。かんらん岩ー斑れい岩境界におけるこのような高温変質作用が,全ての海洋性コアコンプレックスの隆起の引き金となっている可能性が高いこと(したがって低速度拡大海嶺近傍のテクトニクスを決定付ける重要な要素であること)を示した(Nozaka et al., 2011)。
- Atlantis Massifの斑れい岩類中に,これまでに海洋底斑れい岩からは報告例のない粘土鉱物類(タルク+サポナイト混合相とバーミキュライト)を発見した。それらの粘土鉱物の生成は,下部地殻斑れい岩が比較的速く上昇したため,緑色片岩相(300℃前後)での変質を受けることなく,低温酸化条件下で海水と反応したことを示唆している(Nozaka et al., 2008)。またこの研究過程で,光学顕微鏡,電子線マイクロアナライザーおよびラマン分光分析法を組み合わせた非破壊的分析方法が,海洋地殻に産する粘土鉱物の新たな同定法として有効であることを示した。
- 海洋底かんらん岩の変質作用の文献調査を行い,かんらん石と輝石の差別的変質過程が,地震波速度の低下とモホ面の深度を規定している可能性があることを指摘した(野坂,2008)。
- 蛇紋岩化作用に伴う水素生成反応に関する文献調査を行い,磁鉄鉱の生成と蛇紋岩化作用について,解明すべき課題があることを指摘した(野坂,2012)。
2. オフィオライトかんらん岩の変質・変形履歴
陸上に露出した海洋リソスフェアの断片であるオフィオライトを研究材料として,海洋リソスフェアや上部マントル物質の上昇運動に伴う化学的・物理的改変の諸過程を明らかにした。
- 飛騨山脈の八方超苦鉄質岩体と一連のオフィオライト・ベルトに属する,前弧起源の大江山オフィオライトにおいて,かんらん石+フロゴパイトから成る交代性脈と,その脈に貫入されたかんらん石の組成不均質性を発見した。この交代作用はかんらん岩の塑性変形とほぼ同時に同じ温度条件で起こっており,さらにかんらん石結晶内での元素拡散が十分に起こっていないことから,沈み込むスラブから供給された水溶性流体の添加が,マントルウェッジの軟化と前弧かんらん岩の急激な上昇を引き起こしたものと考えられる(Nozaka, 2014)。
- 飛騨山脈の八方超苦鉄質岩体から蛇紋岩マイロナイトを発見した。このタイプの岩石は海洋域では産出せず,島弧などのプレート収束帯で特徴的なものであることを示した。さらに岩石組織と鉱物組成の解析に基づいて,八方岩体が温度条件の異なる2段階の塑性変形を受けたことを明らかにし,島弧におけるマントルかんらん岩の上昇運動が,温度低下に伴う水の浸透と塑性変形作用の相互促進効果によって進行することを示した(Nozaka, 2005)。
- 八方岩体の蛇紋岩マイロナイトにおける蛇紋岩化作用は,変形作用と同時に比較的高温(400~600℃)で,かんらん石+トレモラ閃石からアンチゴライト+透輝石を生ずる反応により進行したものであることを実証した(Nozaka, 2005)。このような蛇紋岩の形成過程が,一般的な蛇紋岩(造山帯に産する昇温的なアンチゴライト片岩や海洋底に産するリザダイトを主とする蛇紋岩)とは明らかに異なっていることを強調するために,これを“高温蛇紋岩化作用high-temperature serpentinization”と呼んだ。
- 変成超苦鉄質岩において,昇温(温度上昇)変成作用で生じたトレモラ閃石と後退(温度降下)変成作用で生じたトレモラ閃石の間に,Na/Si比の明瞭な差異を見出し,これが世界各地のオフィオライトかんらん岩の変成-テクトニック履歴の指標として有効であることを示した(Nozaka, 2005)。
- オフィオライトかんらん岩中のかんらん石に,しばしば劈開状の直線的な割れ目が発達することは古くから注目されてきたが,その成因については諸説あった。そこでかんらん石の化学組成と結晶方位,およびアンチゴライトの産状を調べ,劈開性かんらん石が比較的低温での変形・変質作用に起因したものであることを明らかにした(Nozaka and Ito, 2011)。この研究によって,劈開性かんらん石の定向配列の測定が,沈み込み帯の上部マントルの応力場解析に有効な手段となり得ることを示した。
- かんらん岩の蛇紋岩化作用の際に生じた還元性流体が,高圧変成帯における酸素フュガシティーの外的緩衝材として作用し,その結果,蛇紋岩近傍に産する青色片岩がほぼ一定かつ低いFe3+/Fe2+比を持っていることを明らかにした(Nozaka, 1999)。これは高圧変成帯では酸素分圧が蛇紋岩によって制御されていることを示す証拠であり,沈み込み帯における水素の移動性(あるいは見かけ上の酸素の移動性)と酸化還元状態の基礎的理解に貢献するものである。
3. 蛇紋岩の脱水(昇温)変成作用
水和したマントルかんらん岩(蛇紋岩)の脱水反応は,日本列島などの島弧周辺の地震や火山活動の一因ともなる重要なプロセスである。西南日本各地に点在する変成蛇紋岩体の岩石学的研究を行い,蛇紋岩の脱水変成作用に対する制約条件を明示した。
- 蛇紋岩の昇温変成作用における非珪酸塩鉱物(磁鉄鉱,ペントランド鉱,アワル鉱など)の分解は,従来考えられていたよりも低温(400℃以下)で起こり始め,その結果かんらん石や斜方輝石などの珪酸塩鉱物に著しい組成不均質性が生じることを示した(Nozaka, 2003)。蛇紋石と磁鉄鉱は水和した超苦鉄質岩中に普遍的に産する鉱物であり,ここで得られた新知見は,上部マントル物質と水との相互作用に基本的な制約条件を与える。
- 直閃石は変成蛇紋岩に普通に産することが予想されるにもかかわらず,出現したりしなかったりする鉱物である。このような直閃石の偏在は古くから知られていたが,その理由は分かっていなかった。そこで直閃石の産する岩体と産しない岩体の地質学的・岩石学的特徴を詳細に比較検討した結果,直閃石の偏在は,結晶核形成反応速度が小さいことが主要因である可能性が高く,特に熱変成作用の場合には,熱源マグマの熱量が直閃石生成反応の進行に大きな影響を及ぼすことを示した(Nozaka, 2011)。
4. 深部捕獲岩の成因と大陸性下部地殻の成長
日本列島のような大陸縁辺部の島弧における下部地殻形成過程は,大陸地殻の生長メカニズムを解明するために不可欠な情報である。大陸地殻の生長は地球の進化の中で最も重要な過程のひとつである。その実態を探るべく,西南日本の新生代玄武岩中に包有される深部起源の捕獲岩の分析を行った。
- 輝岩,斑れい岩およびアノーソサイト捕獲岩中に,相当量のざくろ石分解生成物(かんらん石-斜長石-スピネルの細粒集合体),藍晶石,およびコランダムを発見した(Nozaka, 1990, 1997)。
- 捕獲岩中の鉱物間の反応組織の解析と平衡温度条件の見積もりを行い,下部地殻~上部マントルにおける地下構造と地温勾配を推定した。また岩石組織の観察によって,透輝石+コランダム → 斜長石+スピネルという反応関係を見出し,熱力学的計算によってそれらの鉱物共生の安定条件を確定した(Nozaka, 1997)。
- 西南日本弧の下部地殻が,背弧起源の玄武岩質マグマのモホ面直下への底付けによって厚く生長したものであり,その際にマグマと既存の古い地殻物質が反応してアルミ過剰な塩基性および超塩基性岩が生じたことを示唆する証拠を示した(Nozaka, 1997)。
5. ユーラシア大陸東部の広域変成作用とテクトニクス
ユーラシア東部の地質構造発達史の解明を目指して,日本を含むアジア諸国において様々な時代の地層・岩体の野外調査と岩石学的研究を行い,以下のような成果を得た。
- 内モンゴルに露出する賀根山オフィオライトが中央海嶺起源であることと,中生代に中圧型変成作用を受けたことを明らかにし,華北地塊とシベリア地塊の衝突時期,および大興安嶺山脈形成との関連性を示唆する証拠を提示した(Nozaka and Liu, 2002)。シベリア地塊と華北地塊の衝突はアジアのテクトニクスにおける第一級の大事件であり,今後の議論に対する重要な制約条件が得られた。
- 山陰地方に産する低圧型変成岩類と,北陸地方に産する中・低圧変成岩類の化学的特徴を明らかにし,古生代における両地域の不連続性を示唆する証拠を提示した(Nozaka et al., 2003)。この成果は,日本列島の地質構造発達史の制約条件となる。
その他の論文とレポート(下記文献リスト参照)の多くは,岩石学を中心とした地域地質学的研究である。個々の内容と結論は(自分が筆頭で執筆したものに限って言えば)必ずしも大きなインパクトを持つものではないが,いずれも海洋リソスフェアの進化やアジアのテクトニクス,あるいは地元岡山の自然をより良く理解するのに役立つものと期待される。
公表論文等リスト
論文
Nozaka, T. (2014) Comment on "Dehydration breakdown of antigorite and the formation of B-type olivine CPO" by Nagaya et al. (2014) Earth and Planetary Science Letters (in press).
Nozaka, T. (2014) Metasomatic hydration of the Oeyama forearc peridotites: Tectonic implications. Lithos, 184-187, 346-360.
Gillis, K.M., Snow, J.E., Klaus, A., Abe, N., Adrião, A.B., Akizawa, N., Ceuleneer, G., Cheadle, M.J., Faak1, K., Falloon, T.J., Friedman, S.A., Godard, M., Guerin, G., Harigane, Y., Horst, A.J., Hoshide, T., Ildefonse, B., Jean, M.M., John, B.E., Koepke, J., Machi, M., Maeda, J., Marks, N.E., McCaig, A.M., Meyer, R., Morris, A., Nozaka, T., Python, M., Saha, A. and Wintsch, R.P. (2014) Primitive layered gabbros from fast-spreading lower oceanic crust. Nature, 505, 204-207.
野坂俊夫(2012)蛇紋岩化作用における水素の発生に対する岩石学的制約条件.岩石鉱物科学,41, 174-184.
Blackman, D.K., Ildefonse, B., John, B.E., Ohara, Y., Miller, D.J. and IODP 304-305 Science Party. (2011) Drilling Constraints on Lithospheric Accretion and Evolution at Atlantis Massif, Mid-Atlantic Ridge 30ºN. Journal of Geophysical Research, in press. 116, B07103, doi: 10.1029/2010JB007931.
Nozaka, T. (2011) Constraints on anthophyllite formation in thermally metamorphosed peridotites from southwestern Japan. Journal of Metamorphic Geology, 29, 385-398.
Nozaka, T. and Fryer, P. (2011) Alteration of the oceanic lower crust at a slow-spreading axis: insight from vein-related zoned halos in olivine gabbro from Atlantis Massif, Mid-Atlantic Ridge. Journal of Petrology, 52, 643-664.
Nozaka, T. and Ito, Y. (2011) Cleavable olivine in serpentinite mylonites from the Oeyama ophiolite. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 106, 36-50.
Kakiya, S., Kudo, K., Nishikubo, Y., Oku, K., Nishibori, E., Sawa, H., Yamamoto, T., Nozaka, T. and Nohara, M. (2011) Superconductivity at 38K in the iron-based compound with platinum-arsenide layers Ca10(Pt4As8)(Fe2-xPtxAs2)5. Journal of the Physical Society of Japan, 80, 093704, doi: 10.1143/JPSJ.80.093704.
Nozaka, T. (2010) A note on compositional variation of olivine and pyroxene in thermally metamorphosed ultramafic complexes from SW Japan. Okayama University Earth Science Reports, 17, 1-5.
Nozaka, T., Fryer, P. and Andreani, M. (2008) Formation of clay minerals and exhumation of lower-crustal rocks at Atlantis Massif, Mid-Atlantic Ridge. Geochemistry Geophysics Geosystems, 9, Q11005, doi:10.1029/2008GC002207.
Michibayashi, K., Hirose, T., Nozaka, T., Hariagane Y., Escartin J., Delius, H., Linek, M. and Ohara, Y. (2008) Hydration due to high-T brittle failure within in situ oceanic crust, 30°N Mid-Atlantic Ridge. Earth and Planetary Science Letters, 275, 348-354.
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書籍
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Blackman, D.K, Ildefonse, . B., John, B.E., Ohara, Y., Miller, D.J., MacLeod, C.J. and the Expedition 304/305 Scientists (2006) Proceedings of the Integrated Ocean Drilling Program,304/305. Integrated Ocean Drilling Program Management International, Inc., College Station, USA, 2361pp.
報告書等
Expedition 345 Scientists (2013) Hess Deep plutonic crust: exploring the plutonic crust at a fast-spreading ridge: new drilling at Hess Deep. IODP Preliminary Report. Integrated Ocean Drilling Program Management International, Inc., College Station, USA, 89 pp.
Ildefonse, B., Blackman, D.K. John, B.E., Ohara, Y., Miller, D.J., MacLeod, C.J. and IODP Expeditions 304/305 Scientists (2006) IODP Expeditions 304 & 305 characterize the lithology, structure, and alteration of an oceanic core complex. Scientific Drilling, 3, 4-11.
The IODP Expeditions 304 and 305 Scientists (2005) IODP Expeditions 304 and 305:Oceanic core complex formation, Atlantis Massif. Scientific Drilling, 1, 28-31.
Expedition Scientific Party (2005) Oceanic core complex formation, Atlantis Massif, Mid-Atlantic Ridge: drilling into the footwall and hanging wall of a tectonic exposure of deep, young oceanic lithosphere to study deformation, alteration, and melt generation. Integrated Ocean Drilling Program Expedition 305 Preliminary Report. Integrated Ocean Drilling Program Management International, Inc., College Station, USA.
高須晃・野坂俊夫・阪本志津枝・植村眞(2000)大佐山・大野呂山周辺の高圧変成岩と超苦鉄質複合岩体,および吉備高原の深部捕獲岩.日本地質学会第107年学術大会見学旅行案内書,147-160.
柴田次夫・鈴木茂之・野坂俊夫(2000)半田山に分布する江尻層砂岩の化学組成.平成11年度岡山大学教育研究学内特別経費研究成果報告書,44-50.
野坂俊夫・柴田次夫・鈴木茂之 (1999)万成花崗岩の鉱物化学組成.平成10年度岡山大学教育研究学内特別経費研究成果報告書,30-35.
鈴木茂之・柴田次夫・野坂俊夫 (1998)漸新世における半田山周辺の古地理.平成9年度岡山大学教育研究学内特別経費研究成果報告書,25-29
柴田次夫・鈴木茂之・野坂俊夫 (1997)江尻層砂岩中の砕屑性褐色スピネル.平成8年度岡山大学教育研究学内特別経費研究成果報告書,33-38.
野坂俊夫・柴田次夫・鈴木茂之 (1996)半田山周辺の花崗岩.平成7年度岡山大学教育研究学内特別経費研究成果報告書,34-39.
鈴木茂之・柴田次夫・野坂俊夫 (1995)雲母の再結晶過程からみた半田山の泥質岩の変形・変成.平成6年度岡山大学教育研究学内特別経費研究成果報告書,45-47.
柴田次夫・鈴木 茂之・野坂俊夫 (1994)半田山の泥質岩の化学組成. 平成5年度岡山大学教育研究学内特別経費研究成果報告書, 45-50.
野坂俊夫・鈴木 茂之・柴田次夫 (1993)半田山の堆積岩における接触変成作用.平成4年度岡山大学教育研究学内特別経費研究成果報告書, 51-55.
川地武・住野正博・野坂俊夫 (1991)RC造地中構造物のイオウ化合物による劣化とその機構. 土質工学会・日本粘土学会共催シンポジウム発表論文集, 55-60.
隈元 崇 教授:研究紹介
研究テーマ
1. 内陸大地震を対象とした確率論的地震動予測地図の作成
1995年の兵庫県南部地震のような内陸の活断層から発生するM7以上の大地震を対象に,変動地形やトレンチ掘削調査の成果を基にした古地震データから,将来の地震の規模と発生頻度を確率的に予測し,地震長期危険度評価マップを作成する.
2. 内陸中規模地震を対象とした確率論的地震動予測地図の作成
内陸の活断層から発生するM6~M7程度の中規模地震を対象に,地震の規模別頻度分布(Gutenberg-Richter(GR)式)と地震活動データを用いてシミュレーションを行い,地震の規模と発生頻度の時空間モデルを作成して,地震長期危険度評価マップへ生かす.
3. 内陸活断層から発生する地震の強震動シミュレーション
内陸の活断層から発生するM7以上の大地震を対象に,シナリオ作成に必要な地震発生モデルや破壊開始地点推定のための形態単位モデルを高精度化しながら,主に経験的グリーン関数法を用いて強震動シミュレーションを行って地震工学の分野と連携する.
4. 地形変化シミュレーションモデルの構築
山地の隆起・侵食過程について論じるために,日本列島の地形計測と地形単元の類型化を地理情報システム(GIS)を用いて行い,関連する地質学・地震学・地球物理学の成果と統計的な手法を取り入れながら,地形変化シミュレーションモデルの構築を目指す.