第4回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム「牛白血病ウイルスから大切な家畜を守る」

 本分野は10月11日、岡山市北区で催された「平成27年度獣医学術中国地区学会」において、牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus:BLV)の感染から大切な家畜を守る研究についてのワークショップ「第4回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム -革新的技術で牛白血病ウイルス(BLV)感染から牛を守る-」を開催しました。

 農林水産の現場では、さまざまなウイルスによって経済的・社会的な損失が発生しており、世界的に大きな問題となっています。また自然界においても動物、植物が失われることが多く、自然・環境問題ともなっています。これらの状況を打開するため、さまざまなウイルス感染から動物、植物を守る早期診断法や感染防止の薬剤などの研究開発が強く求められています。

 今回のプラットフォームでは、研究拠点を務める岡山大学と補完研究機関である国立研究開発法人理化学研究所が密に連携し、公益社団法人鳥取県獣医師会の共催協力を得て開催しました。

 畜産現場で大きなウェートを占める牛は、わが国のみならず世界の畜産業で極めて重要な家畜です。BLVは、牛の白血病に関与するウイルスとされており、BLVに感染し、発症した牛は予後不良となり、畜産現場の大きな打撃となってしまいます。今回、BLVの現状と対策の取り組み、そして新たに開発したBLVウイルス検出法について、その叡智の共有化と社会実装について、畜産現場の最前線で活躍する獣医師や家畜衛生保健所職員らと議論を行いました。

 プラットフォームでは、まず革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)でコンソーシアム・プログラム・マネージャー(研究管理総括役)を務める佐藤法仁研究担当学長特命・URAが、同事業の概要紹介と基礎研究者と現場で活躍する専門家らとの連携強化によるウイルス対策の重要性について説明しました。次に補完研究機関である国立研究開発法人理化学研究所分子ウイルス学特別研究ユニットの間陽子ユニットリーダーが、「牛の白血病の新しい克服戦略について」と題して、BLV感染の概要と新たな検査法による克服戦略について紹介しました。また、地方独立行政法人北海道立総合研究機構畜産試験場家畜衛生グループの小原潤子研究主査からは「牛白血病ウイルスの伝播リスク要因について」と題して、同機構での取り組みや問題点とその解決法など事例をもとに紹介しました。次に新たなBLV早期検査法である「BLV-CoCoMo-qPCR法」について、株式会社理研ジェネシスの小峰富美子研究員と理化学研究所の竹嶋伸之輔研究員がその原理と検出法について、さまざまな事例を取り上げながら詳細に説明し、参加した獣医師や家畜衛生保健所職員らとBLVの克服法について熱心に議論を重ね、鳥取県獣医師会の石田茂会長の閉会挨拶をもって終了しました。

 本ワークショップは、本事業において得られた最新研究の叡智を積極的に社会に広めるための取り組みとして実施されました。今後、新たに開発された「BLV-CoCoMo-qPCR法」を広く畜産現場等に社会実装させるため、関係機関との連携をさらに深め、大切な家畜の保護を精力的に押し進めて行きます。

 なお次回のBLVに関するプラットフォームは、2015年11月26日(木)13:30~16:00に北海道ひがし農業共済組合(NOSAI道東)において開催予定です。


異分野融合共同研究による新規ウイルス対策について説明する佐藤法仁研究担当学長特命・URA 牛白血病の新しい克服戦略について説明する理化学研究所の間陽子ユニットリーダー

BLVの伝播リスク要因について説明する北海道立総合研究機構畜産試験場家畜衛生グループの小原潤子研究主査
BLV-CoCoMo-qPCR法を用いたBLVプロウイルスの検出について説明する理研ジェネシスの小峰富美子研究員

BLV-CoCoMo-qPCR法の活用事例について説明する理化学研究所の竹嶋伸之輔研究員
閉会の挨拶を行う鳥取県獣医師会の石田茂会長

講演を熱心に聴き入る参加者ら




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