国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.105 発行

2022年10月06日

 本学は10月6日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界の一般のみなさんなどに届けるWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.105を発行しました。
 本号では、本学異分野融合先端研究コアの佐藤伸准教授と大学院自然科学研究科の樫本玲菜大学院生らの真皮中でコラーゲンを編み込んでいる「織姫」細胞の可視化に成功!の研究成果を紹介しています。
 皮膚の研究は幅広く行われていますが、実のところコラーゲンを実際に皮膚の中で編込んでいる細胞はどの動物種でも明かされてきませんでした。コラーゲンの編み手となる細胞を明らかにしない限り、皮膚コラーゲンに関する様々な研究は基本情報を欠いたままになってしまいます。 
 ウーパールーパーの皮膚はヒトやマウスなどと比較しても非常に透明度が高く、小さいウーパールーパーでは中の骨まで見ることができるほどの高い透明度を持っています。この透明度は皮膚のコラーゲンの編み手細胞を可視化するのに非常に大きなアドバンテージとなります。
 佐藤准教授と樫本大学院生は、基礎生物学研究所の亀井保博特任准教授、野中茂紀准教授、坂本丞特任助教の協力のもと1細胞イメージング手法を改良し、真皮中において1細胞が編み出すコラーゲンとコラーゲンの編み手細胞の形態を捉える事に成功しました。コラーゲンの編み手細胞は、コラーゲン繊維と同化した格子状の形態をもっていることが分かりました。このような独特の形状を持つ細胞がコラーゲンの編み手として機能していることの発見は、コラーゲンを皮膚の中で編み込んでいる実働細胞をとらえたという観点で非常に重要であると考えられます。今後、同様の細胞がヒトやマウスなどにも存在しているかを探索する予定です。
 また、ウーパールーパーのもつ皮膚再生能力にも着目して研究を行いました。ウーパールーパーは高い再生能力を持っていることから、これまでは皮膚なども簡単に再生できるものとされてきました。しかし、広島大学渡邊朋信教授の協力のもと、コラーゲンの編み手細胞の形態や繊維性の評価などを行い、皮膚が損傷を受けた場合には完全に元通りには再生できないことが分かりました。また、神経を人為的に配置させればコラーゲン繊維はきれいに再生することも分かりました。今後神経の役割については検討する必要がありますが、神経から出される物質の特定を進めることで、ヒトなどにおいて皮膚コラーゲンの繊維性を回復させることや、皮膚のアンチエイジングなどに役立つ知見が得られると期待できます。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示すリサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学を構築し、「岡山から世界に新たな価値を創造し続けるSDGs推進研究大学」となるため、強みある医療系分野やその関係する分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も本学から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場やヘルスケアに活かせる革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.105:The dynamics of skin regeneration revealed.

○Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)
2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行して来ました。またAAAS(American Association for the Advancement of Science)が提供する、世界最大規模のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」を利用し、世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。


<OU-MRU Back Issues:Vol.97~Vol.104>
Vol.97:Artificial intelligence helps to determine cancer invasion (学術研究院医歯薬学域(医)河原祥朗教授)
Vol.98:Okayama University launches clinical trials of a jawbone regeneration therapy using human BMP-2 transgenic protein derived from Escherichia coli (学術研究院医歯薬学域(歯)窪木拓男教授)
Vol.99:A rapid flow process that can convert droplets into multilayer polymeric microcapsules (学術研究院自然科学学域(工)渡邉貴一研究准教授)
Vol.100:Understanding insect leg regeneration (学術研究院医歯薬学域(医)板東哲哉講師)
Vol.101:Oral tumor progression mechanism identified (学術研究院医歯薬学域(歯)河合穂高助教)
Vol.102:Controlled cell death by irradiation with light (学術研究院医歯薬学域(薬)須藤雄気教授)
Vol.103:High-quality growth (学術研究院自然科学学域(工)鈴木弘朗助教)
Vol.104:The determinants of persistent and severe COVID-19 revealed (異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務・企画部広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm◎adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。

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