本学は7月14~28日、研究活動を支える限られた天然資源である液体ヘリウムのリサイクルを通じた利用促進と安定的な供給体制の構築を目的とした「中四国・播磨ヘリウムリサイクルネットワーク(通称:中四国・播磨HeReNet)」の学外説明会を4回に分けてオンラインで開催しました。本件は、先日開催した学内説明会に続くものです。
学外説明会には大学・研究機関・高専などの8つの連携機関関係者が出席。本学の「研究機器の共用の体制・整備等の強化促進に関するタスクフォース」(通称:チーム共用)の畑中耕治副タスクフォース長・機関連携部門長と山﨑秀顕副部門長が、「中四国・播磨HeReNet」の概要や更新するヘリウム液化装置の詳細、他大学・研究機関とのヘリウムリサイクル方法、連携機関向けに整備するヘリウムガス回収用ガスバッグや圧縮機等の詳細など、今後のスケジュール等も含めて説明し、関係者と活発な意見交換を行いました。
液体ヘリウムは、国内生産しておらず全量輸入に依存していますが、コロナ禍や世界的な紛争等のさまざまな要因により年々価格が高騰しています。多くの大学・研究機関では入手困難となり、研究現場に支障を来しています。
これに対して本学は、ヘリウム液化装置を所有しており、学内利用者に液体ヘリウムを供給し発生したヘリウムガスを回収して再液化するシステムを構築しています。核磁気共鳴(NMR)装置などの研究設備から排出されるヘリウムガスを、学内の回収配管を通じて本学自然生命科学研究支援センター極低温室で回収・再液化し、再び供給するリサイクル体制を構築しており、学内での循環利用を実現しています。
ヘリウム液化装置を所有していない大学・高専等の機関の多くは、民間企業から購入した液体ヘリウムを利用し、発生したヘリウムガスは回収する仕組みがないために仕方なく大気開放しているのが現状です。そこで、「中四国・播磨HeReNet」では連携機関にて発生したヘリウムガスをガスバッグで回収し、圧縮機でガスボンベに詰め替えて本学に運ぶ仕組みを整備することで広域リサイクルの実現を目指しています。
ヘリウム液化装置は極めて高額な中規模研究設備であり、また設備運用にコストと高度な技術人材を要するため、その整備は容易ではありません。地域の中核大学、そして研究大学である本学が「中四国・播磨HeReNet」を通じて、学内のみならず近隣の大学、高専、研究機関、企業等に液体ヘリウムを供給できれば、液体ヘリウムを使った研究・開発の裾野を大いに拡げることにつながり、ひいてはわが国の研究力向上・イノベーション創出強化等につながると期待されます。
本学は、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」(実施主体:日本学術振興会)に採択されており、その取り組みの一環として「イノベーション創出の知と技のメッカとなる」ことを掲げ、研究力強化のハブとなる施策を推進しています。液体ヘリウムの地域供給体制を確立し、より多くの実験に利用促進することで、「知と技のメッカとなる」地域中核・特色ある研究大学:岡山大学を目指します。どうぞ本学と連携機関の取り組みにご期待ください。
〇那須保友学長のコメント
本学ではこれまで液体ヘリウムの利用促進と安定供給に向けてさまざまな大学・機関と意見交換や視察を重ねてきました。これらの活動で得られた知見をもとに、本学の運用の強化促進と地域のハブとしての供給・回収を目指しています。
「中四国・播磨HeReNet」は、他大学・他機関との連携を通じて、液体ヘリウムの有効利用と持続可能な研究基盤の確立を目指す取り組みです。わが国の科学技術・イノベーションを支える研究基盤強化の観点からも非常に重要な取り組みであり、今後も関係機関と連携し、「中四国・播磨HeReNet」の実現に向けて、着実に推進していきます。
【本件問い合わせ先】
研究機器の共用の体制・整備等の強化促進に関するタスクフォース(略称:チーム共用)
機関連携部門
TEL:086-251-8705
E-mail:herenetoffice◎adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
「中四国・播磨ヘリウムリサイクルネットワーク」始動に向けた学外説明会を実施
2025年08月22日