本学は、岡山商工会議所と連携し、学生と地域企業が協働してCO₂排出量の可視化に挑む「カーボンフットプリント(CFP)算定プロジェクト」を推進しています。7月に実施したキックオフ・ワークショップに続き、11月4日、有限会社東山冷機の本社工場を訪問し、再生フロンの製造プロセスを学ぶ工場見学を行いました。
当日は、学術研究院社会文化科学学域(経済)の天王寺谷達将准教授のゼミに所属する学生ら4人が参加。現地では同社の小原章弘代表取締役より、再生フロンの回収から再利用までのプロセスについて詳細な説明がありました。学生たちは、再生の各工程や使用される機器の仕組み、品質管理の工夫などを間近で観察し、活発な質疑応答を交わしました。
特に、廃棄処理によってフロンを破壊する「破壊プロセス」と、再利用を目的として精製を行う「再生プロセス」との違いについて理解を深めたことが大きな成果となりました。見学後のディスカッションでは、学生から「再生プロセスの方がCO₂削減効果を高めることは先行研究からわかっているが、東山冷機独自の再生プロセスについて算定してみたい」、「工場見学を通じて小原社長の思いがよくわかり、今回のチャレンジを通じて再生フロンを普及させていきたいと強く感じた」といった意見が挙がり、今後の分析方針の方向性が共有されました。
学生たちは今後、今回の見学で得た知見をもとにライフサイクルフロー図を作成し、カーボンフットプリント算定に必要となるデータを特定。年内の算定完了を目指して作業を進める予定です。再生フロンの環境負荷低減効果を定量的に示すことで、脱炭素経営に向けた新たな知見を提供することを目指します。
また、今回の工場見学には両備ホールディングス株式会社および株式会社両備リソラの担当者も参加し、今後の連携可能性について意見交換が行われました。フロン回収・再生を軸に、地域内での循環型ビジネスの構築や、物流・設備分野との協働の可能性が検討され、産学連携の新たな展開に期待が寄せられています。
小原代表取締役は、「再生フロンはまだ一般にはあまり知られていませんが、環境負荷を大幅に減らす重要な技術です。今回の学生との取り組みをきっかけに、再生フロンの意義や可能性が広く認知され、地域から全国へと広がっていってほしい」と語りました。
この活動は、昨年度に環境省「地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」に本学が採択され進めてきた活動を基盤とし、今年度はその成果を踏まえて支援体制・企業連携のさらなる強化を図りながら、より実践的で波及力のある取組へと発展させています。今後も、学生・地域企業・支援機関が一体となって、地域ぐるみの脱炭素化に向けた挑戦を力強く進めていきます。
○カーボンフットプリント
カーボンフットプリントとは、製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHGの排出量をCO₂排出量に換算し、製品に表示された数値もしくはそれを表示する仕組みのこと。
出典:カーボンフットプリント ガイドライン(経済産業省、環境省)
〇有限会社東山冷機
岡山県岡山市を拠点に、冷凍冷蔵庫および冷暖房機器の工事・修理・メンテナンスを行う地元密着の会社。顧客満足を重視し、設計・施工・アフターサービスまで一貫して対応。
【関連記事】
CO₂の「見える化」に挑戦!学生と地域企業が連携する削減プロジェクトが始動
【本件問い合わせ先】
研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部 舩倉
TEL :086-251-7151
Email:co-creation◎adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
CO₂を「見える化」せよ! 学生が再生フロンの現場を学ぶ
2025年11月10日