国立大学法人 岡山大学

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CO₂を「見える化」せよ!~前回の現地見学を踏まえ、ライフサイクルを可視化する実践型ワークショップを開催~

2025年11月13日

 本学は11月10日、岡山県商工会連合会と連携し、学生と地域企業によるCO₂排出量の可視化チャレンジを進めるキックオフ・プロジェクトの第2回ワークショップを、津島キャンパスの共育共創コモンズで開催しました。
 本取り組みは、令和5年度から進めている岡山県商工会連合会との連携・協力協定に基づくもので、地域企業のカーボンニュートラル実現を学生とともに後押しする実践型教育・研究活動です。前回の現地見学では、学生たちがシバムラグループのブルーベリー農園や加工所、「道の駅かよう」などを訪問し、農産品の生産から販売に至る多様な事業を体感しました。その中で、地域に根ざした同社の活動が町全体を支える「地域のインフラ」として機能していることを実感し、「ブルーベリージュースや農産加工品など、実際の生産・流通の流れを通じてCO₂排出の仕組みを学びたい」という声が学生から上がっていました。
 こうした現場での気づきを踏まえ、今回のワークショップでは、シバムラグループの芝村啓三代表をはじめ6人が参加し、学術研究院社会文化科学学域の天王寺谷達将准教授のゼミに所属する学生11人、研究・イノベーション共創機構産学官連携本部の舩倉隆央副本部長、そして岡山県商工会連合会、吉備中央町商工会から経営指導員等4人が参加。学生・企業・支援機関が一体となり、実際の製品を題材にカーボンフットプリント(CFP)算定の基礎から実践までを学びました。
 冒頭では、天王寺谷准教授より、前回の見学内容を振り返りながら、CO₂排出量の「見える化」が企業経営にどのような意味を持つか、またサプライチェーン全体での排出削減を進める上で、定量的な算定の意義について説明がありました。その後、参加者全員でシバムラグループが生産・販売する「ブルーベリージュース」と「ポン菓子」を取り上げ、製品の原材料調達から製造、流通、消費、廃棄に至るまでのライフサイクルフローを詳細に整理しました。
 学生たちは、実際の算定を進めるために必要な情報を一つひとつ丁寧に確認しながら、疑問点をシバムラグループの社員に直接問いかけました。ブルーベリージュースに関しては、「栽培の際に農薬を使用しているか」「原料や製品を運ぶ際の車両の種類と燃料」「輸送時の積載率」「販売先までの距離」といった、農業と物流の両面に関わる質問が出されました。一方、ポン菓子では、「算定範囲を稲の栽培から始めるべきか」「玄米栽培に必要な肥料・農薬・機械(コンバインや籾まき機など)」といった具体的な工程に踏み込んだ議論が行われました。
 ワークショップの終盤では、各グループが整理したライフサイクルフローをもとに今後のデータ収集方針を共有しました。さらに、中電環境テクノス株式会社の高田氏から、Jクレジット制度の概要とその活用可能性についての説明が行われ、将来的に算定結果をもとにしたカーボンオフセットやクレジット創出の可能性を探る視点が提示されました。
 参加した学生からは、「現場を見て理解したつもりでいたが、工程を詳細に確認すると抜けや漏れが多くあることに気づいた。現場の方との対話を通じて一つひとつを精緻化していくことが、正確な算定につながると実感した」と振り返り、実践を通じて学びを深める機会となりました。
 今後は、今回議論した内容を踏まえて必要なデータの収集を進め、年内に両製品のカーボンフットプリント算定を完了させる予定です。そして、2026年1月19日には、学生たちが算定結果を報告し、企業と商工会関係者とともに成果を共有する報告会を開催予定です。 
 今回の取り組みは、昨年度に本学が採択された環境省「地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」を基盤とし、今年5月に立ち上げた「カーボンフットプリントを起点とした価値創造ワーキンググループ(CFP Nexus WG)」とも連動しています。
 岡山大学は今後も、学生・地域企業・支援機関が一体となり、CO₂排出量の「見える化」を通じた地域ぐるみの価値創造と持続可能な未来の実現に向け、挑戦を続けていきます。

○カーボンフットプリント
 カーボンフットプリントとは、製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHGの排出量をCO₂排出量に換算し、製品に表示された数値もしくはそれを表示する仕組みのこと。
出典:カーボンフットプリント ガイドライン(経済産業省、環境省)

シバムラグループ
 岡山県吉備中央町を拠点に「冠婚葬祭ギフト」「観光×農業」「暮らしのサポート」など多様な事業を地域密着で展開する企業グループ。

※本学では、企業や自治体の皆さまに最新研究成果を直接ご覧いただき、共同研究・新規事業化のきっかけとして活用いただく年に一度のイベント「岡山大学 R&D Showcase 2025」を2025年12月2日(火)に本学津島キャンパス創立五十周年記念館にて開催いたします。ぜひご参加ください。

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【本件問い合わせ先】
 研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部 舩倉
 TEL:086-251-7151
 Email: co-creation◎adm.okayama-u.ac.jp
 ※@を◎に置き換えています。

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