本学は4月21日、共創イノベーションラボ「KIBINOVE」において、先進材料科学の最前線を共有する第2回「J-PEAKS Special Seminar: New Horizons in Advanced Materials Science」を開催しました。本セミナーは、学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)の仁科勇太教授をホストとして実施し、材料・化学工学分野の研究者ら約30人が参加しました。
今回は、トポロジカル超分子を用いた高分子材料研究を専門とする東京大学の伊藤耕三特別教授を招き、循環型社会の実現に向けた最新の研究成果が紹介されました。講演冒頭では、自身が約25年前に世界で初めて合成した環動高分子材料「スライドリング・マテリアル(SRM)」について紹介され、架橋点が滑車のように移動する「滑車効果」により応力集中を分散し、強靭性や耐久性を大幅に向上させる特徴が映像とともに説明されました。また、自己組織化によって形成される擬ポリロタキサンナノシートについても紹介され、医療・ヘルスケア分野への応用可能性が示されました。
講演後半では、伊藤特別教授がリーダーを務めるムーンショット型研究開発事業および戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)における研究の取り組みが紹介されました。こうした研究は政策面でも注目されており、セミナーと同日に開催された「循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する関係閣僚会議」の第4回会合でも、SIPの取り組みが繰り返し紹介されました。会議で決定された「循環経済行動計画」には、2030年までに官民合わせて1兆円規模の投資を行う方針が示されており、プラスチックに加えて金属なども含め、資源循環に関する研究開発の予算化が今後本格化することが見込まれます。
愛媛県愛南町における実海域でのフィールドテストでは、従来は分解しないと考えられていたナイロン製の釣り糸が海中で分解することが確認され、その仕組みとして結晶構造と微生物の働きが関与する「マルチロック機構」が明らかになるなど、ゴーストギア(漁業系プラスチックごみ)問題の解決につながる可能性が示されました。また、食品容器などの使用済みプラスチックを自動車部材へと再利用できる可能性が示されるなど、資源循環の実現に向けた具体的な展開についても紹介されました。伊藤特別教授は、「プラスチック自体が悪いのではありません。どう使うかが重要です」と述べ、材料科学が社会課題解決の鍵となることを語りました。参加者からは、材料の分解メカニズムや複合材料のリサイクル、次世代材料開発の方向性などについて多くの質問が寄せられ、活発な議論が行われました。
本セミナーは、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)の取り組みの一環として開催され、最先端の高分子材料研究と資源循環・海洋プラスチック問題といった社会課題との関わりについて理解を深める有意義な機会となりました。本学は今後も、J-PEAKS事業を通じて、循環型社会の実現に向けた先進材料科学分野の研究交流と研究展開を推進していきます。
<参考>
・文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
・第1回J-PEAKS特別セミナー「New Horizons in Advanced Materials Science」を開催~国内外の第一線研究者が材料開発・応用を語る~
【本件問い合わせ先】
学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎)
教授 仁科勇太
E-mail:nisina-y◎cc.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
J-PEAKS特別セミナー「New Horizons in Advanced Materials Science」を開催~循環型社会の実現に向けた先進材料研究の最前線~
2026年04月30日