国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.68 発行

2019年06月11日

 本学は6月6日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.68を発行しました。
 2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
 本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)消化器・肝臓内科学の岡田裕之教授と松本和幸助教らの「膵癌におけるFNA検体と切除検体とのPD-L1発現の検討」の研究成果について紹介しています。
 PD-1/PD-L1をターゲットとした免疫チェックポイント阻害剤が、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する固形癌に適応となりましたが、MSI-H例は、膵臓癌のわずか1%程度に留まるとされています。肺癌や悪性黒色腫などで報告されている治療効果の予測バイオマーカーに組織中PD-L1染色性があり、高発現のものは薬剤効果が高いとされています。これは膵臓癌においてもPD-L1染色性による治療効果の予測が期待されています。切除検体においてPD-L1染色性が高い症例では予後不良とする報告もありますが、薬剤投与による治療予後はまだ報告されていません。また、本薬剤の主な治療対象となるものは、切除不能進行膵癌であり、そのためには超音波内視鏡下針生検(EUS-FNA)検体を用いてPD-L1染色性を評価する必要があります。しかしながら、針生検で採取した組織検体が、どこまで正しく評価されているかは不明であり検証されていません。
 岡田教授と松本助教らの研究チームは、膵癌切除前にFNAを施行し、十分に組織検体の評価が可能であった症例を対象に、FNA検体と手術検体のPD-L1染色性の一致率を検討しました。その結果は、FNA検体でのPD-L1染色は可能であり、手術検体で陽性例の約半数および陰性例の大多数が、FNAにより診断できました。この結果は、膵癌患者に対して、PD-1/PD-L1をターゲットとした免疫チェックポイント阻害剤を投与する一つの基準になる可能性があり、よりよい膵癌治療につながると考えられます。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も強みある医療系と異分野融合から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術、健康維持増進へより早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.68:Improving the diagnosis of pancreatic cancer


<Back Issues:Vol.60~Vol.67>
Vol.60:Role of commensal microbiota in bone remodeling (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)森田学教授、内田瑶子歯科医師)
Vol.61:Mechanical stress affects normal bone development (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)池亀美華准教授)
Vol.62:3D tissue model offers insights into treating pancreatic cancer (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 狩野光伸教授&大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)田中啓祥助教)
Vol.63:Promising biomarker for vascular disease relapse revealed (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)渡辺晴樹助教、佐田憲映准教授)
Vol.64:Inflammation in the brain enhances the side-effects of hypnotic medication (岡山大学病院薬剤部 北村佳久准教授)
Vol.65:Game changer: How do bacteria play Tag? (大学院環境生命科学研究科(農学系)田村隆教授)
Vol.66:Is too much protein a bad thing? (異分野融合先端研究コア 守屋央朗准教授)
Vol.67:Technology to rapidly detect cancer markers for cancer diagnosis (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 紀和利彦准教授)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp

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