◆発表のポイント
- ザリガニ類に共生する小型甲殻類の1種である外来貝形虫Ankylocythere sinuosaを、沖縄県那覇市で採集した特定外来生物ミステリークレイフィッシュから世界で初めて確認しました。
- 本貝形虫の日本最南端記録になるとともに、原産地である北米以外ではアメリカザリガニ以外のザリガニ類から初めて確認された事例になります。
- 本貝形虫はこれまでアメリカザリガニからのみ確認されていたことに加え、沖縄県ではアメリカザリガニが長年定着していることから、アメリカザリガニからミステリークレイフィッシュへ宿主転換(ホストシフト)した可能性が示されました。
- 雌のみで繁殖できる特異な外来ザリガニであるミステリークレイフィッシュについて、沖縄県における既知の生息地の天久ちゅらまち公園から約1km離れた那覇市内の地点と、約6.4km離れた浦添市内の地点で新たに生息を確認し,沖縄県内での分布拡大を明らかにしました。
- 那覇市内の新たな生息地点では43個体の稚仔を抱えた個体を確認し、天久ちゅらまち公園以外でも野外で再生産していることを初めて明らかにしました。
- 今後、ミステリークレイフィッシュとそれに伴って移動する共生生物の分布拡大により、沖縄の豊かな淡水生態系への影響が懸念されます。
岡山大学大学院環境生命自然科学研究科博士後期課程の咸成南大学院生(応用生態学)、学術研究院環境生命自然科学学域(工)の中田和義教授(保全生態学)らの研究グループは、沖縄県に侵入した特定外来生物ミステリークレイフィッシュの分布状況と、それに共生する外来貝形虫について調査を行いました。その結果、ザリガニ類に共生する小型甲殻類の1種である外来貝形虫 Ankylocythere sinuosa を、ミステリークレイフィッシュから世界で初めて確認しました。
また、本貝形虫の日本最南端記録になるとともに、原産地である北米以外ではアメリカザリガニ以外のザリガニ類から初めて確認された事例となりました。さらに、本貝形虫が沖縄県内に定着しているアメリカザリガニからミステリークレイフィッシュへ宿主転換(ホストシフト)した可能性も示されました。
沖縄県内において、これまで分布が知られていた那覇市の天久ちゅらまち公園に加え、新たに那覇市の別地点と浦添市でもミステリークレイフィッシュの生息を確認しました。那覇市内の新たな生息地点では抱稚仔個体が確認され、天久ちゅらまち公園以外でも、ミステリークレイフィッシュが野外で再生産していることが初めて明らかになりました。
ミステリークレイフィッシュは、雄を必要とせず単為生殖によって繁殖する非常にユニークな外来ザリガニです。そのため、1個体のみが自然環境へ放流された場合でも新たな個体群を形成できる可能性があります。今回の成果は、本種が沖縄県内で分布を拡大しつつあることを示すとともに、外来種が共生生物を伴って分布を拡大する可能性を示した重要な研究成果です。沖縄には固有種を含む豊かな淡水生物相が存在することから、今後の分布拡大や生態系への影響が懸念されます。
本研究の成果は、2026年7月13日および7月22日に米国の国際学術誌「Journal of Crustacean Biology」の電子版に2編の論文として掲載されました。
◆咸さんからのひとこと
| 私はアメリカザリガニを研究するため、韓国から岡山大学に留学しました。研究を進める中で、共同研究者のSmith博士のご協力のもと、アメリカザリガニで研究してきた外来共生貝形虫を、ミステリークレイフィッシュから世界で初めて確認することができました。この発見は、外来ザリガニに伴う共生生物の拡散や宿主転換に注目する必要性を示す成果であると考えています。このような成果を残すことができ、大変光栄に思います。また、今回の成果を可能にしてくださった中田先生のご指導と、岡山大学のご支援に心より感謝申し上げます。 | ![]() 咸大学院生 |
◆中田教授からのひとこと
| ザリガニ類の研究を始めて約30年になりますが、ミステリークレイフィッシュから外来共生貝形虫を世界で初めて確認できたことは、大変うれしく思います。今回の成果は、咸さんがアメリカザリガニに共生する貝形虫の研究を進める中で、「この貝形虫はミステリークレイフィッシュにも共生しているのではないか?」という着想を持ち、その仮説を検証したことで得られたものです。咸さんの着眼点と粘り強い研究が世界初記録につながったことを、指導教員として誇らしく感じています。 | ![]() 中田教授 |
■論文情報
論文名:First worldwide record of Ankylocythere sinuosa (Rioja, 1942) (Ostracoda: Podocopida: Entocytheridae) on the marbled crayfish, Procambarus virginalis Lyko, 2017, with a possible host shift from the invasive red swamp crayfish, Procambarus clarkii (Girard,1852) (Decapoda: Astacidea: Cambaridae)
掲載誌:Journal of Crustacean Biology
著者名:Seong-Nam Ham, Robin James Smith, Kazuyoshi Nakata
DOI:https://doi.org/10.1093/jcbiol/ruag045
URL:https://academic.oup.com/jcb/article/46/3/ruag045/8740167
論文名:Evidence of establishment and range expansion of the invasive marbled crayfish, Procambarus virginalis Lyko, 2017 (Decapoda: Astacidea: Cambaridae) in Okinawa, Japan
掲載誌:Journal of Crustacean Biology
著者名:Seong-Nam Ham , Kazuyoshi Nakata , Rio Soma , Tomoyasu Shirako , Hiroo Ishimori , Kouta Ikehara , Masatoshi Nakamura , Takahisa Kanno , Masaki Asano
DOI:https://doi.org/10.1093/jcbiol/ruag043
URL:https://academic.oup.com/jcb/article/46/3/ruag043/8733289
<詳しい研究内容について>
雌のみで繁殖する外来ザリガニ「ミステリークレイフィッシュ」から外来共生貝形虫を世界初確認!~アメリカザリガニからの宿主転換の可能性と沖縄での定着・分布拡大を明らかに~
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(工)
教授 中田 和義
(電話番号)086-251-8872 (FAX番号)086-251-8872
(メール)nakatak◎cc.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。

