岡山大学
京都大学
科学技術振興機構(JST)
◆発表のポイント
- 分子の官能基を変えることで、カーボンになるまでの反応経路と、得られるカーボンの構造を制御できることを示しました。
- フェノール樹脂のモデル分子を用い、炭素化の仕組みを分子レベルで明らかにしました。
- 未利用有機物を、吸着材や導電材などの高機能カーボンへ変換する資源循環の設計指針につながります。
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎化学研究所)の仁科勇太卓越教授と京都大学大学院工学研究科化学理工学専攻の生越友樹教授らの研究グループは、フェノール樹脂のモデル分子として「ピラーアレーン」を用い、分子の周囲に付ける官能基を変えるだけで、カーボンになるまでの反応経路と、できあがるカーボンの構造・機能が大きく変わることを明らかにしました。同じ分子骨格から、元の形を保った穴の多いカーボン、段階的に融合したシート状カーボン(層状カーボン)、いったん溶けて再構成されたシート状カーボンが生まれ、それぞれガス吸着や電気伝導に異なる特徴を示しました。これは、経験則に頼ることが多かった炭素化を、分子構造から設計するための新しい学理技術です。本成果は、学術誌「Small」に8月19日付で掲載されます。今後、フェノール樹脂、ピッチ、リグニン、廃プラスチック由来成分などを、有用な吸着材や導電材へ変換する資源循環技術の設計指針になることが期待されます。
◆研究者からひとこと
| 炭素化は、同じ原料を加熱しても、少しの構造の違いでまったく異なるカーボンが生まれる、とても奥深い現象です。今回、分子の周りに付く官能基が、カーボンになるまでの道筋と、最終的な形や機能を左右することを見いだしました。これまで経験に頼ることの多かった炭素化を、将来は「目的のカーボンを作るためのレシピ」として設計できるようにしたいと考えています。廃プラスチックやバイオマスなど、これまで十分に活用されてこなかった有機資源を、役立つカーボン材料へ生まれ変わらせる研究につなげていきたいです。 | ![]() 仁科卓越教授 |
| ピラーアレーンは、形や官能基を分子レベルで精密に設計できる環状分子です。今回、この特徴を生かすことで、分子のわずかな違いが炭素化の進み方や、最終的に得られるカーボンの構造と機能に大きく影響することを明らかにできました。超分子化学で培ってきた「分子を組み立て、形や性質を制御する」という考え方が、カーボン材料の設計にもつながったことをうれしく思います。今後は、分子設計の知見をフェノール樹脂やバイオマスなど、より身近で実用的な炭素資源へ広げ、資源循環に役立つ新しいカーボン材料の創出につなげたいと考えています。 | ![]() 生越教授 |
■論文情報
論文名:Divergent Carbonization of Pillar[5]arenes Produces Porous and Lamellar Carbon Architectures
著者:Tan-Hao Shi, Chen-Yi Ma, Kentaro Ohkura, Riki Kato, Tsubasa Hatanaka, Shoma Hori, Hiroo Suzuki, Shunsuke Ohtani, Kenichi Kato, Yuta Nishina*, Tomoki Ogoshi*
掲載誌:Small
DOI:10.1002/smll.75161
URL:https://doi.org/10.1002/smll.75161
■研究資金
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR24S6)、JSPS 科研費(JP23KF0235、JP22H00334、JP24K21247)および文部科学省 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の支援を受けて実施されました。
<詳しい研究内容について>
有機物を高機能カーボンへ―分子構造から読み解く炭素化の設計原理―
<お問い合わせ>
【研究内容に関するお問い合わせ】
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎)
卓越教授 仁科勇太
(電話番号)086-251-8718
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岡山大学 総務部 広報課
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