プロトロンビン 時間(PT) prothrombin time
臨床的意義
外因系凝固過程に関与する凝固因子の先天性および後天性の低下に際してPT延長がみられる。後天性(消費性)減少の代表的疾患がDICであり、そのため厚生省DIC診断基準の判断材料の一つとされている。また、肝機能障害による各因子の産生不良、ビタミンK欠乏、ビタミンK拮抗剤(ワーファリン)、循環抗凝血素などによってもPTの延長をきたす。
測定法:Quick一段法
組織トロンボプラスチン・塩化カルシウム混合液を患者血漿に添加し凝固時間を測定
測定機種: CS-5100(シスメックス株式会社)(平成26年3月24日より)
ACL TOP(三菱化学ヤトロン社)(平成18年1月10日より平成26年3月23日まで)
STA(ロシュ・ダイアグノスティック株)(平成18年1月9日まで)
STAコンパクト(ロシュ・ダイアグノスティック株)(平成18年1月9日まで)
測定値の表示および基準値
PT 秒 : 凝固時間
PT % : 正常対照血漿の希釈検量線から求められた値
PTーINR : PT測定値のバラツキおよび施設間差をなくす目的で、国際血液学標準化委員会よりINR(International Normalized Ratio)に関する勧告が発表された。それは、試薬の力価をヒト脳由来組織トロンボプラスチンを基準にして感度表示(International Sensitivity Index;ISI)を行い、さらにPT比(患者血漿のPT時間/正常対照血漿のPT時間)のISI累乗をINRとして表示する。(PT比)ISI
PT % 73〜118%(平成26年3月24日より)(シスメックス社内データ)
基準値変更情報:
80〜120%(平成18年1月10日より平成26年3月23日まで)
75〜120%(平成10年2月4日より平成18年1月9日まで)
11.0〜12.5 秒(平成元年12月19日より平成10年2月3日まで)
13.5〜15.0 秒(平成元年12月18日まで)
相関
y=1.451x-26.019 r=0.949 n=328
x:旧試薬 y:新試薬(平成18年1月9日)
異常値を示す疾患
延長疾患: プロトロンビン欠乏症 ・ 肝障害 ・ ビタミンK欠乏症 ・ DIC ・ V因子欠乏症 ・ VII因子欠乏症 ・ X因子欠乏症 ・ 無フィブリノゲン血症 ・ フィブリノゲン異常症
検体採取・測定条件
・3.2%のクエン酸ナトリウム入り試験管にクエン酸ナトリウム1血液9の割合で採血し,転倒混和を5〜6回繰り返した後,すみやかに提出する。
・溶血すると不正確になるため注意が必要である。
・検体採取時には,組織トロンボプラスチンの検体への混入を避ける為,ダブルシリンジ法を用いるとよい。
・採血方法・血漿の取り扱い・保存状態・測定手技・器具などの条件によりPTに大きな影響を与える。
生理的変動
・性差はないとされる。妊娠により各凝固因子とともに上昇し,PTは短縮傾向を示す。
・日内変動・季節・運動・食後にも変動しない。
・乳児期から成人まで有意差はない。
関連項目