遊離サイロキシンT4, Free T4, FT4 (Free thyroxine)
臨床的意義
甲状腺ホルモンであるT4(サイロキシン)は甲状腺のみで産生され、1日分泌量は約80μg(成人)である。血中T4の大部分(99.97%)は甲状腺ホルモン結合蛋白(TBG、アルブミン、プレアルブミン)に結合して、0.02〜0.03%のみが遊離型ホルモン(FT4)として存在する。FT4は標的細胞の細胞膜を通過し、主に細胞内でFT3に転換してホルモン作用を発揮する。
異常値を示す疾患
高値 | 低値 | |
甲状腺中毒症 | 甲状腺機能亢進症 | T3製剤の過剰投与 |
Basedow病、Plummer病、TSH産生腫瘍、胞状奇胎、絨毛上皮腫、新生児一過性甲状腺機能亢進症、下垂体型甲状腺ホルモン不応症 | ||
亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、甲状腺ホルモン製剤(T4または乾燥甲状腺末)の過剰投与 | ||
正常甲状腺機能 | 全身型甲状腺ホルモン不応症(一部)、家族性異常アルブミン血症、T4結合プレアルブミン過剰症、抗T4抗体、TBG増加(先天性、妊娠、エストロゲン投与、急性肝炎など) | 妊娠後期、低T3・T4症候群、 T3製剤補充療法、TBG減少(先天性、ネフローゼ症候群、肝硬変、アンドロゲン服用など) |
甲状腺機能低下症 | 甲状腺ホルモン不応症(全身型、末梢型) | 原発性 |
先天性(形成異常、ホルモン合成酵素欠損、TSH不応症) | ||
後天性(橋本病、特発性粘液水腫、術後、放射性ヨード治療後) | ||
下垂体性(2次性)、視床下部性(3次性) | ||
亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎の回復期 |
測定原理: 電気化学発光法(ECLIA法)
測定機器 : コバス8000(平成29年5月8日より)
Eモジュール(平成18年7月18日より平成29年5月2日まで))
エクルーシス2010(平成18年7月14日まで)
測定試薬 : ロシュ
基準範囲 : 0.97〜1.69 ng/dL
相関
平成29年5月8日
X=旧機器
Y=新機器
Y=0.985X-0.031 r=0.996 n=169
平成18年7月18日
X=旧機器
Y=新機器
Y=0.97X+0.17 r=0.992 n=100
小児の基準値
出生直後は低値であるが、出生後急速に上昇し生後1〜2週間では著明な高値となる。したがって、新生児・乳児期の甲状腺機能の評価にはこの点に留意する必要がある。その後徐々に低下するが、小児期を通じて成人レベルよりやや高値が続く。
採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管
関連項目
T4
T3
FreeT3
TSH
放射性ヨード摂取率
TSH受容体抗体
抗マイクロゾーム(甲状腺ペルオキシダーゼ : TPO)抗体
抗サイログロブリン抗体