総トリヨードサイロニン, T3 (total triiodothyronine) 
平成14年3月31日まで院内検査
平成14年4月1日より外注(OML)
平成23年4月1日中止(受託実績僅少のため)


臨床的意義
 
T3、T4はサイログロブリンを前駆体とし、チロシン残基がヨウ素化された後、ヨウ素化チロシン2残基間の酸化的なカップリングが分子内部の複数の箇所で起こり、ついで加水分解で切り出されて甲状腺から血中に放出されるホルモンである。T3の核受容体に対する親和性はT4の数倍から10倍高く、生物学的活性も同様である。甲状腺から約20%が分泌され、残りの80%は肝臓、腎臓などの末梢組織でT4から5*脱ヨード酵素により転換される。T3は、血中において大部分がTBG(thyroxine binding globulin)、サイロキシン結合プレアルブミンおよびアルブミンと結合して存在する。蛋白と結合しないFT3はわずか0.3%にすぎない。しかし、この0.3%のFT3のみが細胞内に移行して、核内の甲状腺ホルモンレセプターに結合してホルモン作用を発現するため、FT3は甲状腺機能および末梢でのT4代謝のより鋭敏な指標となる。また、T3はTBG濃度の影響を受けるが、FT3はこれらの影響を受けない。血中のT3、FT3濃度の測定は、生体の甲状腺機能状態を知る指標として、また末梢組織におけるT4の代謝状態を知る指標としても重要である。

異常値を示す疾患
高値疾患: 
甲状腺機能亢進症、遺伝性TBG増加症、妊娠、新生児、胞状奇胎、経口避妊薬服用、異常T3結合蛋白(抗T3抗体、異常アルブミン)存在、甲状腺ホルモン不応症

低値疾患: 状腺機能低下症、遺伝性TBG減少症、ネフローゼ症候群、蛋白喪失性腸炎、重症肝硬変、アンドロゲン・蛋白同化ステロイド使用

測定原理: 電気化学発光法(ECLIA法)(平成14年3月31日まで)

測定機器: エクル−シス2010(平成14年3月31日まで)

測定試薬: ロシュ(平成14年3月31日まで)

相関:
(平成20年12月22日)


基準範囲: 0.57〜1.15 ng/mL(平成20年12月22日より)
        0.8〜1.8 ng/ml(平成16年4月1日より平成20年12月21日まで)外注
        80〜180 ng/dl (平成14年4月1日より)外注
                  0.69〜1.46 ng/ml (平成14年3月31日まで)院内

小児の基準値
 出生直後には低値であるが、TSHの上昇にT4とともに上昇し、生後1週間程度ではT3は1.4〜2.6g/mlと高値となる。その後、1歳頃までに低下するが、それでもなお成人レベルよりは高値である。先天性甲状腺機能低下症をはじめとする新生児・乳児期の甲状腺機能の評価においては、この点に注意をする必要がある。1歳以後も緩徐に低下を続け、思春期年齢に至って、ほぼ成人レベルとなる。

採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管

関連項目

T4
FreeT4
TSH
サイロキシン結合グロブリン(TBG)

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