血清補体価(CH50)

臨床的意義
 
補体系は、古典経路あるいは第二経路により活性化される。補体成分の活性化により生じる補体成分の分解産物には、活性化物質に結合して補体系の活性を次々に伝える成分と、液相中に放出される成分に分かれる。血清中でC1は、1分子のC1qと各々2分子のC1r、ならびにC1sがC2+を介して結合した、分子量74万の巨大分子として存在する。IgGあるいはIgMが抗原と反応し免疫複合体を形成すると、C1qが抗体のFc部分に結合し、その結果C1qの高次構造が変化しC1rの自己触媒的な活性化が生じる。C1rはC1sを限定水解し、活性型C1s(活性化された補体成分はCnと表される)とする。以上の反応によりC1分子が全体として活性型のC1となる。抗原抗体複合物以外にも、CRPやマンノース結合蛋白などは古典経路を活性化する。C1はC4をC4aとC4bに限定水解し、さらにC2をC2aとC2bに水解する。その結果、古典経路由来のC3転換酵素であるC14b2aが生じる。これはC3をC3aとC3bに分解する。新しく形成されたC14b2a3bは、C5転換酵素としての活性をもち、C5をC5aとC5bに分解する。以下補体の活性化はC6、C7、C8、C9と進むことになる。補体価とは、活性化を受けずに残ったC1〜C9の総合的な活性を表す指標である。したがって、体内で過剰な補体系の活性化が生じると補体成分は分解、消費され補体価は低下することになる。血清を種々の補体活性化物質と試験管内で反応させた後、補体成分の変動を測定してみると、大量の免疫複合体と反応させた場合、古典経路の活性化が強く起こり、その結果、補体価は低下をするし、C1〜C9の全補体成分が低下する。臨床的には、血清病や全身性エリテマトーデスの活動期にみられる所見である。少量の免疫複合体を反応させた場合には、補体価の軽度の低下がみられるが、補体成分については、C1、C4、C2の初期反応補体成分の低下のみで、C3以降の補体成分の低下は認めない。主として全身性エリテマトーデスの回復期にみられるパターンである。第二経路の活性化物質を反応させると、補体価の低下とC3、C5の低下がみられるが、C1、C4、C2の初期反応補体成分にはほとんど変化がない。これは一部の慢性腎炎などにみられるパターンである。低補体価の場合、C3、C4の低下パターンからいずれによる補体価の低下なのかを類推する。検査の目的はいわゆる膠原病を中心とした自己免疫疾患、腎疾患、易感染性など補体系の関与が推測される疾患においてスクリーニング検査として行う。

異常値を示す疾患
高値: 
膠原病ならびに類縁疾患(慢性関節リウマチ、結節性多発性動脈炎、大動脈炎症候群、ベーチェット病など)、原発性胆汁性肝硬変、悪性腫瘍(癌、悪性リンパ腫など)、糖尿病、急性・慢性感染症、妊娠

低値
軽度: 
SLE、急性糸球体腎炎回復期、膜性増殖性糸球体腎炎、慢性肝炎、肝硬変、エンドトキシンショック、自己免疫性溶血性貧血、脂肪異栄養症、I(C3bインアクチベータ)欠損症、遺伝性または後天性血管神経性浮腫(C1インヒビター欠損症)、補体cold activation

中等度: 
SLE(特にループス腎炎合併)、悪性関節リウマチ、慢性関節リウマチ関節液、劇症肝炎、亜急性肝炎、急性糸球体腎炎急性期、膜性増殖性糸球体腎炎、DIC、多臓器不全、アナフィラキシーショック、血管神経性浮腫発作時、血清病、補体cold activation、C9欠損症

著明低下(ほぼ0): 
補体成分欠損症(C9以外の補体成分欠損症)、補体cold activation、SLE活動期

測定方法: リポソーム免疫測定法(平成30年4月24日より)
       
免疫比濁法(平成30年4月23日まで)

測定機器:  日本電子BM6050(平成26年3月24日より)

         日本電子BM1650(平成18年7月18日より)

         日立7070自動分析装置(平成18年7月14日まで)

測定試薬: 血清補体価CH50キット補体価HA−テストワコー(和光純薬工業株式会社)(平成30年4月24日から)
        血清補体価CH50キット免疫比濁テストCH50オート(日本ピーシージー製造株式会社)(平成30年4月23日まで)製造販売中止

基準値:  32〜58 U/mL(平成30年4月24日から)
       
30〜50 U/mL(平成30年4月23日まで)

相関
平成30年4月23日


平成18年7月18日
X=旧機器
Y=新機器
Y=0.88X+6.00 r=0.972  n=200

採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管

関連項目

C3
C4
C3a
C4a
C5a
免疫複合体
抗核抗体
抗DNA抗体
抗RNP抗体

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