岡山大学病院 矯正歯科

English
当科における矯正歯科治療

リスクについて

矯正歯科治療におけるリスクマネージメントについて患者様にお伝えしたいこと

歯並びや咬み合わせは、見た目だけでなく、機能的な面からも非常に大切です。それらの改善を目的に矯正歯科治療を行いますが、矯正歯科治療にはいくつかの危険性(リスク)や、それに伴う治療の限界があります。

歯根吸収

 矯正歯科治療の過程で、1〜2 mmほど歯根の長さが短くなること(歯根吸収)はよく起こりますが、中には著しい歯根吸収がみられる場合もあります。その場合、これ以上歯根吸収が進まないように、2〜3か月間、力をかけることを中断したり、治療計画の再検討を行う必要があります。

歯肉(歯茎)の退縮

 矯正歯科治療により歯の前後的な動きが生じると、歯の前側あるいは後ろ側の歯茎が部分的に下がることがあります。他にも、歯間部の歯茎が全体的に下がった場合は、三角形の隙間(ブラックトライアングル)が生じることがあります。歯茎が下がることで歯が長く見えたり、知覚過敏が生じる可能性があります。

う蝕(カリエス)

 矯正装置をつけることで、装置周囲の歯磨きが難しくなります。磨き残しの長時間の停滞は、脱灰(ホワイトスポット)や、う蝕(カリエス)の発生につながります。カリエス治療が必要な場合は、部分的に装置をはずす可能性もあります。

失活歯

 まれに、矯正力がかけられた歯の神経が壊死をおこす(失活する)ことがあります。失活した歯は白色から褐色に変化します。原因は分かっておらず、失活した場合には歯の神経を抜く処置が必要となります。

エナメル質の亀裂および破折

 加齢や強い咬合力(歯ぎしり、くいしばり)により、歯の表層のエナメル質に亀裂(クラック)が入ることや破折することがあります。矯正歯科治療の過程では、装置を撤去する際の負荷で生じることがあります。クラックはう蝕のリスクには影響しないと言われています。

歯根の露出

 歯の位置と歯を支える骨の幅(歯槽骨幅)のバランスによっては、歯根の形状に白い骨のようなものが透けてみえることがあります。

骨性癒着(アンキローシス)

 歯と歯槽骨が一部分でも癒着(アンキローシス)している場合には、矯正力をかけても歯は動きません。矯正歯科治療を開始後にアンキローシスが判明した場合は、治療計画を変更させていただく可能性があります。

歯周病

 歯周病があるにも関わらず矯正歯科治療で歯を動かすと、新たな歯周病の発生や進行を促す可能性があります。また、装置をつけると歯茎が磨きにくくなり、同じように歯周病が進行する可能性があります。歯周病の方は、歯周病を増悪する因子となる喫煙の制限をお願いしております。

骨隆起

 骨に力がかかることで、歯茎に硬い凹凸ができることがあります(骨隆起)。治療における矯正力よりも、歯ぎしりや食いしばりなどの生活習慣で生じることが多いと言われています。矯正歯科治療に影響があると思われる場合には、骨削合を行うことがあります。

顎関節(あご)の異常

 まれに、矯正歯科治療により歯並びや咬み合わせを改善する過程で、顎関節が痛くなったり音がなり始めることがあります。症状がひどい場合には、矯正歯科治療を中断してマウスピースなどで顎関節の治療を優先する場合があります。

誤飲・誤嚥

 矯正歯科治療の過程で、装置や破折した歯の一部等が口腔内に落下し、偶発症として誤飲・誤嚥が生じることがあります。状況により、画像検査や除去等の処置を受けて頂く場合があります。

成長

 成長発育の正確な予想は非常に困難です。そのため、成長発育の変化により当初の治療計画を修正することがあります。(骨格性の開咬や反対咬合に対する外科矯正歯科治療の適用など。)
 また、歯の萌出時期や動くスピード、顎・顔面の成長発育には個人差があるので、治療期間が当初の予定よりも長くなることがあります。各種装置の効果、顎の成長、歯の生え変わり、口腔内状態の変化等によっては、当初の治療計画とは異なる種類の装置を使用することがあります。

Page Top