本学は6月16日、研究活動を支える限られた天然資源である液体ヘリウムのリサイクルを通じた利用促進と安定的な供給体制の構築を目的とした「中四国・播磨ヘリウムリサイクルネットワーク(通称:中四国・播磨HeReNet)」のキックオフに向け、学内の研究者や総合技術部の技術職員、研究イノベーション共創管理統括部の事務職員ら約30人が出席する学内説明会を津島キャンパスで開催しました。本ネットワークは、他大学・他機関との連携を通じて、液体ヘリウムの有効利用と持続可能な研究基盤の確立を目指す取り組みです。
説明会では、チーム共用タスクフォースの副タスクフォース長・機関連携部門長を務める畑中耕治主任URAが、「中四国・播磨HeReNet」の概要や更新するヘリウム液化装置の詳細、他大学・機関とのヘリウムリサイクル方法、今後のスケジュールなどについて説明しました。今後、液体ヘリウムの供給先となる他大学・機関・高専等の関係者向け説明会も予定しており、関係機関との連携のもと、「中四国・播磨HeReNet」の実現に向け、着実に取り組んでいきます。
液体ヘリウムは、国内生産しておらず全量輸入に依存していますが、コロナ禍や世界的な紛争等のさまざまな要因により年々価格が高騰。多くの大学・研究機関では入手困難となり、研究現場に支障を来しています。これに対して本学は、ヘリウム液化装置を所有しており、学内利用者に液体ヘリウムを供給し発生したヘリウムガスを回収して再液化するシステムを構築しています。核磁気共鳴(NMR)装置などの研究設備から排出されるヘリウムガスを、学内の回収配管を通じて自然生命科学研究支援センター極低温室で回収・再液化し、再び供給することで学内での循環利用を実現しています。
また、ヘリウム液化装置は極めて高額な中規模研究設備であり、また設備運用にコストと高度な技術人材を要するため、その整備は容易ではありません。地域の中核大学、そして研究大学である本学が「中四国・播磨HeReNet」を通じて、学内のみならず近隣の大学、高専、研究機関、企業等に液体ヘリウムを供給できれば、液体ヘリウムを使った研究・開発の裾野を大いに拡げることにつながり、ひいてはわが国の研究力向上・イノベーション創出強化等につながると期待されます。これまで液体ヘリウムの利用促進と安定供給に向けてさまざまな大学・機関と意見交換や視察を重ねており、これらの活動で得られた知見をもとに、本学の運用の強化促進と地域のハブとしての供給・回収を目指しています。
他方、本学のヘリウム液化装置は導入から15年以上が経過し老朽化が進んでいることから、文部科学省からの支援を受けて2026年度末にヘリウム液化装置および周辺設備の更新を予定しています。新たな装置は既存装置の約2倍の液化能力を備えており、加えて、「中四国・播磨HeReNet」に参画する連携機関向けに、ヘリウムガス回収用ガスバッグや圧縮機等の整備も行う予定です。
本学は、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」(実施主体:日本学術振興会)に採択されており、その取り組みの一環として「イノベーション創出の知と技のメッカとなる」ことを掲げ、研究力強化のハブとなる取り組みを推進しています。液体ヘリウムの地域供給体制を確立し、より多くの実験に利用促進することで、「知と技のメッカとなる」地域中核・特色ある研究大学:岡山大学を目指します。地域と地球の未来を共創し、社会変革を実現させるJ-PEAKS採択大学である本学の挑戦に、どうぞご期待ください。
(写真「更新予定のヘリウム液化装置」の引用元:Helium Liquefaction | Air Liquide Advanced Technologies https://advancedtech.airliquide.com/markets-solutions/deep-tech/science/helium-liquefaction)
【本件問い合わせ先】
研究機器の共用の体制・整備等の強化促進に関するタスクフォース(略称:チーム共用)
機関連携部門
TEL:086-251-8705
E-mail:herenetoffice◎adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
「中四国・播磨ヘリウムリサイクルネットワーク」始動に向け学内説明会を実施
2025年07月03日