国立大学法人 岡山大学

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カリフォルニア工科大学・下條信輔教授によるJ-PEAKS特別講演会を開催―ヒト磁気感覚を手がかりに、知覚・意識・AIをめぐる問いを考える―

2026年08月19日

 研究・イノベーション共創機構は7月29日、創立五十周年記念館において、カリフォルニア工科大学(Caltech)の下條信輔教授を講師に、J-PEAKS特別講演会「ヒト磁気感覚は本当か?~心理学史上のスキャンダル、その科学的解決と、AIへの問題提起~」を開催しました。本講演会は、おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム(OI-Start)との共催により実施し、企業の方や学生など72人が参加しました。
 下條教授は、実験心理学・認知神経科学を専門とし、視覚、錯覚、注意、無意識、意思決定など、人間の知覚と意識に関する研究で国際的に活躍しています。本講演会は、本学学術研究院環境生命自然科学学域の明石卓也教授と下條教授が、ニューロサイエンスとAIに関する融合研究において10年以上にわたり共同研究を続けてきたことをきっかけに実現したものです。
 講演では、長年にわたり再現性をめぐって議論されてきた「ヒト磁気感覚」研究を題材に、脳波測定や行動実験、多感覚統合の観点から得られた新たな科学的知見について紹介しました。1980年代に「人間にも磁気コンパスがある」とする実験結果が報告され、大きな注目を集めた一方で、その後の追試では再現が困難であったことから、ヒト磁気感覚研究が心理学史上の論争的テーマとなった経緯が説明されました。その上で、本人には磁場変化の自覚がない場合でも、特定の磁場変化に対して脳活動が変化する可能性が示され、「脳が磁場に反応していること」と「その情報を方位判断や行動に利用できること」は区別して考える必要があると述べました。
 また、磁気感覚と視覚など他の感覚との統合、本人が刺激の存在や規則性に気づかないまま学習が進む「潜在学習」、さらにAIへの問題提起へと議論が展開されました。下條教授は、人間の認知はその場で与えられた入力情報だけで決まるものではなく、遺伝、身体的経験、他者との関係、社会や文化、これまでの学習や生活の履歴といった個人の「来歴」によって形成されると指摘。現在のAIを考える上でも、潜在知覚、潜在学習、確信度(=自己のメタ認知)、身体性、社会性、歴史性をどのように捉えるかが重要であると述べました。
 参加者からは、ヒト磁気感覚の科学的検証に関する質問に加え、潜在学習、意識、AI、身体性など、分野を越えた多様な質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。
 講演会終了後には、下條教授が那須保友学長を表敬訪問し、今回の講演テーマである人間の知覚・意識、潜在学習、AIをめぐる研究について意見交換を行いました。面談では、今回の特別講演会を契機として、同分野に関する講演をシリーズ化し、年1回程度の開催を継続していくことについて意見が交わされました。今後も下條教授が継続的に本学を訪問し、講演や研究交流を進めていく予定です。
 本学では、J-PEAKSを通じて、分野横断的な研究力強化と総合知の創出を推進しています。今後も、自然科学、工学、医療、人文・社会科学、データサイエンス等を横断する知の交流を促進し、地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学の実現を目指していきます。


【本件問い合わせ先】
OI-Start事務局
(岡山大学自然科学系総合研究棟6F第1区画)
TEL:080-7178-7277、090-7185-8436
E-mail:oi-start◎okayama-u.ac.jp
 ※@を◎に置き換えています。

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