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マウスのiPS細胞からがん幹細胞のモデル作成に世界初の成功

概要:  
 岡山大学大学院自然科学研究科の妹尾昌治教授らの研究グループが、マウスのiPS細胞を用いてがん幹細胞のモデルの作成に世界で初めて成功した。
 がん幹細胞は癌組織の中に存在する幹細胞で、がん細胞を生み出す元になる細胞と考えられており、制がん剤や放射線治療に対して強い耐性があるため、癌治療の面から重要な研究対象とされている。しかし、通常がん組織の中のがん幹細胞は数%しか存在せず、その性格を解析することは困難であった。今回の樹立されたモデルを用いて解析を進めれば、がん幹細胞の研究の進展に拍車がかかるものと期待される。
 本研究の成果は、科学誌PLoS ONEに4月12日(米国東部時間17:00)に掲載された。
 幹細胞はその周りの微小な環境の影響を受けて分化し成熟な細胞となると考えられている。そのような環境で前駆細胞の状態を経て神経、脂肪、筋、血液などいろいろな成熟した細胞へ分化していく。正常な環境の中でがんへ分化していく事は希有である。しかし、幹細胞は「がん幹細胞」というがん細胞へ分化していく前駆細胞へ分化する可能性を秘めている。では、そのような「がん幹細胞」が生まれる環境とはどのようなものかという点を解明するためにこの研究が始まった。今日iPS細胞については通常の幹細胞と同様に様々な正常な細胞を生み出すために種々の研究が行われている。これらの研究は正常な環境に置かれた正常な分化を対象としているが、妹尾らはこのiPS細胞を「がんに由来する細胞」を培養して得られた培地を用いて培養する事で、「がん幹細胞」の性質をもった細胞を作成する事に世界で初めて成功した。iPS細胞をマウスに移植した場合、通常は良性の腫瘍が形成されるが、今回作成された細胞は成長の早い悪性腫瘍が形成される。
 このモデルを用いることにより、腫瘍の転移、浸潤、血管新生といった様々ながんの性質をがん幹細胞の悪性の性質をもとに研究する事が今後可能となる。今回の研究はマウスの細胞を用いた結果であるが、ヒトの細胞への展開も可能性が高く、ドラッグデリバリーシステムを含めがん治療に向けた新たな研究の展開の可能性も大きく期待される。
 本研究の内容は、米国シカゴで開催されているアメリカ癌学会で4月1日に発表され好評であった。さらに科学誌PLoS ONE に掲載。これに先立って行われた米国国立がん研究所での講演でも、多くの研究者から関心を寄せられ、活発な質疑応答が行われた。

論文題目:"A Model of Cancer Stem Cells Derived from Mouse Induced Pluripotent Stem Cells"

発表:
米国国立がん研究所3月29日(フレデリック、メリーランド州)
米国癌学会(シカゴ)4月1日
米国ノースウェスタン大学4月5日(シカゴ、イリノイ州)

詳細は報道発表資料をご覧ください。

【本件お問い合わせ先】
自然科学研究科
教授 妹尾昌治
(電話番号)086-251-8216

(12.04.13)