国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.55 発行

2018年07月24日

本学は7月16日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.55を発行しました。
2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者等にニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)腎・免疫・内分泌代謝内科学分野の和田淳教授と三瀬広記医員ら尿1滴で分かる尿中糖鎖の違いで糖尿病腎症の悪化を予測できることに成功した成果について紹介しています。
和田淳教授、三瀬広記医員らの研究グループは、尿中の糖鎖※1排せつ量の違いが糖尿病患者における将来の腎臓病悪化を予測できる新たなバイオマーカーであることを世界で初めて突き止めました。糖鎖は生体においてさまざまな役割を担っている重要な生体高分子ですが、構造が複雑であるためその測定が困難で、腎臓病や糖尿病における糖鎖の研究は進んでいませんでした。今回、共同研究者であるグライコテクニカ社の開発したレクチンアレイ※2を用いることで、尿1滴(20マイクロリットル、マイクロは100万分の1)を用いるだけで、多くの患者の尿中の複数の糖鎖量を短期間かつ同時に測定できるようになりました。そして、多施設における糖尿病患者の尿中糖鎖量を測定し、将来腎臓の機能が悪くなる人では、特定の尿中糖鎖量が大きく異なっていることを発見しました。
尿中糖鎖量は、糖尿病腎症が悪化する際の重要なメカニズムを反映している可能性があり、尿中糖鎖の更なる研究が、糖尿病腎症の新たな治療ターゲットにつながることが期待されます。
岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系から生み出される成果を社会や医療現場、健康維持増進へより早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

※1 糖鎖
糖鎖とは、糖がグリコシド結合によってつながった一群の化合物のことを指します。タンパク質やDNAに続く第3の生体高分子と言われ、発生、免疫、感染、ホルモン分泌、細胞接着、発がんなど多くの生体機能に関わっていますが、最大の特徴は構造の多様性にあります。結合する糖の種類や数による多様性に加え、分枝状結合による構造の複雑性から、これまで糖鎖構造の同定には膨大な時間や労力を要していました。

※2 レクチン
 一般に、レクチンとは糖鎖に対して特別な結合活性を有するタンパク質の総称であり、2つ以上の結合部位を持ち動物や植物の細胞を凝集することができるという特徴を持ちます。臨床の現場では、この糖鎖とレクチンとの特別な結合性を応用したものとして「腫瘍マーカー」が知られています。がん細胞やがん細胞の影響で他の細胞が産生する特殊な糖タンパク質や糖脂質における「糖鎖」を、レクチンを用いて検出・測定しています。同様に、糖鎖とレクチンの結合性を利用し、多くのレクチンを用いて多彩な糖鎖を検出するためのキットがレクチンアレイです。


Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.55:Diabetic kidney disease: new biomarkers improve the prediction of the renal prognosis


<Back Issues:Vol.47~Vol.54>
Vol.47:Candidate genes for eye misalignment identified (大学院医歯薬学総合研究科(医学系) 松尾俊彦准教授)
Vol.48:Nanotechnology-based approach to cancer virotherapy (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)藤原俊義教授)
Vol.49:Cell membrane as material for bone formation (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)松本卓也教授)
Vol.50:Iron removal as a potential cancer therapy (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)大原利章助教)
Vol.51:Potential of 3D nanoenvironments for experimental cancer (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)江口傑徳助教)
Vol.52:A protein found on the surface of cells plays an integral role in tumor growth and sustenance (大学院保健学研究科 廣畑聡教授)
Vol.53:Successful implantation and testing of retinal prosthesis in monkey eyes with retinal degeneration (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦准教授、大学院自然科学研究科(工学系)内田哲也准教授)
Vol.54:Measuring ion concentration in solutions for clinical and environmental research (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 紀和利彦准教授)


<参考>
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp

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