国立大学法人 岡山大学

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新しいがん治療の実現にむけて 第2回中性子医療研究センターシンポジウムを開催

2019年01月30日

 本学中性子医療研究センター(NTRC)では、がん細胞のみをピンポイントで破壊する次世代のがん治療法「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)※1」に関する新規治療法を産学・学学連携で精力的に進めています。また、ルールの確立のために国際原子力機関(IAEA)とも密に連携しています。今回、同センターのこれまでの取り組み紹介と共に、世界で注目される中性子医療の近年の研究成果と未来への期待についてのシンポジウム「新しいがん治療の実現にむけて~中性子捕捉療法の現状と岡山大学の挑戦~」を昨年12月12日、本学鹿田キャンパスJunko Fukutake Hallで開催しました。
 シンポジウムは同センター副センター長を務める古矢修一副理事・特任教授により進行。はじめに来賓として、文部科学省研究振興局の吉田光成研究振興戦略官よりあいさつが行われました。続いて、大阪医科大学附属病院がん医療総合センターの宮武伸一特任教授が「BNCTの現状と未来」と題して、国内外で取り組まれてきたBNCTの研究開発と共に最先端の医療現場への応用などについて紹介しました。その他、総合南東北病院口腔がん治療センターの瀬戸晥一センター長からは「口腔外科臨床からBNCT研究開発の将来に期待する」、京都大学複合原子力科学研究所粒子線腫瘍研究センターの鈴木実教授からは「医療機関におけるBNCTがもたらすNCT研究の方向性」、大阪府立大学研究推進機構BNCT研究センターの切畑光統センター長からは「BNCT用ホウ素化合物開発の現状と課題」、中性子医療研究センター(NTRC)の道上宏之准教授からは「BNCTを用いた新規岡山大学メラノーマ集学的治療へ向けた取り組み」と題してそれぞれの最新の知見について講演が行われました。
 講演の合間に開催されたランチョンセミナーでは、同センターの市川康明特任教授が「BNCTに関する最近の話題~IAEAの動向他~」と題して講演。本学と国際原子力機関IAEAとのBNCTの協力協定が締結などの国際連携や研究開発の動向などについて紹介しました。
 パネルディスカッションでは、同センターの井川和代准教授がコーディネーターを務め「BNCT治療の現実とこれから」と題して、登壇者らと共に議論。BNCTに関する治療法やルールなどの方向性、医療として広く医療現場に社会実装するための課題とその解決方法などについて、参加者らを巻き込んだ熱心なディスカッションが行われました。
 今回のシンポジウムを進行した古矢副理事・特任教授は「切らずに治すがん治療の本命のひとつと考えられるBNCTを、がんゲノム医療と結びつけ、岡山大学病院という最上のパートナーとの連携から、がんの集学的治療法の中にしっかり位置付けられるよう挑戦したい」とコメント。IAEAとの国際連携や企業とのより効果的なホウ素薬剤の開発など、本学の強みある医療分野の研究開発力の総力を活かし、新しいがん治療の実現を行います。


※1  BNCT(Boron Neutron Capture Therapy、ホウ素中性子捕捉療法)
 中性子とホウ素原子(10B)が衝突することで大きなエネルギーを生み出す「アルファ崩壊反応」を活用したがん治療法です。あらかじめホウ素薬剤を用いてがん細胞にホウ素原子を取り込ませた後、中性子を照射することで、がん細胞のみにアルファ崩壊反応を起こし、これを破壊します。中性子自体もエネルギーは小さく、正常な細胞へのダメージが少ないため、副作用の少ない「切らずに治す」がん治療となることが期待されています。


<参考>
岡山大学広報誌「いちょう並木」Vol.86(2017年7月号) 特集「BNCT 近未来のがん治療」


【本件問い合わせ先】
岡山大学中性子医療研究センター 
TEL:086-235-7785
https://www.ntrc.okayama-u.ac.jp/

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