国立大学法人 岡山大学

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アナフィラキシー反応のメディエータ物質であるヒスタミンは、血管内皮細胞からHMGB1を放出し症状を増悪する

2022年10月07日

◆発表のポイント

  • アナフィラキシー反応のメディエータ物質であるヒスタミンは、組織障害分子パターン(DAMP) の代表的存在であるHMGB1を血管内皮細胞核から細胞外へ放出する。
  • ヒスタミンの血管内皮細胞に対する作用は、典型的なH1サブタイプ受容体を介して出現する。
  • 肥満細胞からの全身性ヒスタミン遊離によって重篤な症状を生じるアナフィラキシー反応では、ヒスタミンによって放出されるHMGB1が反応を増幅する。この増幅作用は抗HMGB1抗体で遮断できる。

 High Mobility Group Box-1(HMGB1)は、あらゆる細胞核に普遍的に存在する核内因子ですが、ある種の刺激や細胞・組織障害に応じて細胞外に放出され、炎症反応を多様に増幅する性質を持ち、DAMP(組織障害関連分子パターン)とも呼ばれています。岡山大学学術研究院医歯薬学域の西堀正洋特任・特命教授の研究グループは、中国清華大学高尚澤博士との共同研究で、アレルギーやアナフィラキシー反応の重要な媒介因子であるヒスタミンが培養血管内皮細胞に働くと、細胞核内のHMGB1が細胞外へ放出されることを世界ではじめて明らかにしました。ヒスタミンによるHMGB1の放出反応は、4種類あるヒスタミン受容体サブタイプのうち、典型的なH1サブタイプ受容体を介しており、臨床でアナフィラキシーの治療に用いられるアドレナリンなどのカテコールアミンの添加で抑制されました。
 本研究成果が、抗HMGB1抗体を用いたアナフィラキシーやアナフィラキシー様反応の治療法開発につながることが、強く期待されます。本研究成果は、2022年10月6日(日本時間)に国際学術誌Frontiers in Immunologyに掲載されました。

◆研究者からひとこと

アナフィラキシーショックの標準治療は、一定量のアドレナリンの筋肉注射です。今回の研究で、ショックを惹き起こす主要な活性物質であるヒスタミンにDAMPsの代表であるHMGB1遊離作用があることがわかったことから、抗HMGB1抗体という新たな治療薬の選択肢が加わる可能性があります。
西堀特任・特命教授

■論文情報
論 文 名:Histamine induced high mobility group box-1 release from vascular endothelial cells through H1 receptor
掲 載 紙:Frontiers in Immunology, 2022.
著  者:Gao S, Liu K, Ku W, Wang D, Wake H, Qiao H, Teshigawara K, Nishibori M.
D O I:10.3389/fimmu.2022.930683
U R L:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2022.930683/full

■研究資金
本研究は、厚生労働科学研究費(JPMHLW22FG1003)、日本学術振興会科学研究費(19H03408; 17K15580)および中国National Key R&D Program (2021YFE0109300) の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
アナフィラキシー反応のメディエータ物質であるヒスタミンは、血管内皮細胞からHMGB1を放出し症状を増悪する


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域
特任・特命教授 西堀 正洋
(電話番号)086-235-7393

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