国立大学法人 岡山大学

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地球の上部マントルでは粘性への水の影響は小さいことを発見

2013年09月26日

 ドイツ・バイロイト大学地球科学研究所の桂智男教授とHongzhan Fei大学院生(博士課程)、岡山大学地球物質科学研究センター地球内部物理学研究室の山崎大輔准教授らの研究グループが、地球の上部マントルを主要に構成しているカンラン石中のケイ素の自己拡散の含水量依存性を調べた結果、この依存性は今まで考えられてきたよりも小さく、上部マントルの流動における水の効果は極めて小さいということが分かりました。
 本研究成果は、2013年6月13日、イギリスの総合科学雑誌『Nature』に掲載されました。
 今後、マントルを構成している他の重要な鉱物についても水の影響を調べることにより、全マントル対流について新たな知見が得られると思われます。
<業 績>
 これまで水は、地球内部の力学的過程に非常に大きく影響を及ぼしていると考えられてきました。特に、変形実験の結果は重量で数十ppm存在しただけでカンラン石の粘性率を数桁低下させることが示されています。しかしながら、このような変形実験は水の濃度が限られていることや、実際の地球内部に比較して極めて高い応力下で実験されています。従って、得られた結果を地球内部に当てはめるには限界があると考えられます。
 一方、地球内部に匹敵する高温では鉱物の変形速度は最も自己拡散が遅い元素によって律速されるので、岩石の変形はケイ素の自己拡散の効果としても考えることが出来ます。そこで今回、研究グループは、カンラン石中のケイ素の自己拡散係数を、高温高圧下で含水量の関数として決定しました。
その結果、拡散係数に与える水の効果は今まで考えられてきたよりも小さいことが明らかになりました。すなわち、カンラン石は含水することによっては粘性率の著しい低下を起こさないということがわかりました。
 地球表層のプレートがなめらかに動くことは、プレート下位に存在するアセノスフェアが低粘性であると言われています。しかしながら、今回の結果から、この低粘性はアセノスフェア内の鉱物が含水することによって引き起こされたのではないと考えられます。また、上部マントル内に低粘性層の存在が言われておりますが、これも含水によって生じているものではないと言えます。今後、マントルを構成している他の重要な鉱物についても水の影響を調べることにより、全マントル対流について新たな知見が得られると思われます。

<補 足>
 地球内部は、主に岩石で構成されています。岩石は固体ですが、長い年月で見てみると、岩石も液体のように流動します。この流動しやすさを「粘性率」といい、地球内部運動を理解する上で非常に重要な要素となります。
本研究では、この粘性率に対する水の効果を調べたのです。水は粘性率のみならず、融点や電気伝導度など物性に大きく影響を及ぼすと考えられています。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Hongzhan Fei, Michael Wiedenbeck, Daisuke Yamazaki & Tomoo Katsur, Small effect of water on upper-mantle rheology based on silicon self-diffusion coefficients, Nature, 498, 213-215 .2013. (doi:10.1038/nature12193)

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
(所属)岡山大学地球物質科学研究センター
    地球内部物理学研究室 准教授
(氏名)山崎 大輔
(電話番号)0858-43-3741
(URL)http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~hacto/top_j.html

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