国立大学法人 岡山大学

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マウスは太るがラットは太らない?!~摂食抑制ホルモンが生物種によって異なる働き~

2022年10月28日

◆発表のポイント

  • ニューロメジンUは摂食抑制ホルモンとして知られています。
  • 世界で初めてゲノム編集によるニューロメジンU欠損ラットの作出に成功しました。
  • ニューロメジンU欠損マウスとは異なり,ニューロメジンU欠損ラットは摂食量が増加せず、肥満にもなりませんでした。
  • 本研究成果は、近縁種でもホルモンの働きが異なることを示しており、生物は想像以上に多様であることを示唆しています。

 岡山大学学術研究院自然科学学域の相澤清香准教授の研究グループは、重井医学研究所の松山誠博士との共同研究で、摂食抑制ホルモンとして知られるニューロメジンUが、ラット1)では摂食抑制作用を持たないことを示しました。哺乳類のモデル動物であるマウス2)の研究から、ニューロメジンUは摂食を抑制するホルモンであることがわかり、抗肥満薬の候補として期待されていました。しかし今回、別の哺乳類モデル動物であるラットを用いて、ニューロメジンU欠損動物を作出したところ、ニューロメジンU欠損ラットは摂食量や肥満において正常なラットと変わらないことがわかりました。さらにその原因として、マウスとは異なり、ラットでは摂食制御に関与する脳領域にニューロメジンUやその受容体がほとんど発現していないことがわかりました。これらの研究成果は、10月27日、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。本研究結果は、非常に近縁な種であっても、同じホルモンが同じ働きをもたない場合があることを示しています。このことは、モデル生物の実験結果をヒトに適用する際には慎重な検討が必要であり、生物は私たちが考えているよりも何倍も多様である可能性を示しています。

◆研究者からひとこと

今回のラットの実験では、これまでのマウスの実験とは異なる結果となり、はじめは理解に苦しみました。私は実験でマウスとラットを用いますが、同じネズミと思ってその違いを気にもしてきませんでした。よく考えてみれば、体の大きさも10倍違うのだから、いろいろなことが違って当たり前なのかもしれません。「みんなちがって、みんないい。」なんて思いながら実験を続け、予想外の思わぬ展開となった今回の研究を論文として報告できて嬉しいです!
相澤准教授

■論文情報
論文名: Neuromedin U-deficient Rats do not Lose Body Weight or Food Intake
邦題名「ラットにおけるニューロメジンUの欠損は体重も摂食量も減少させない」

掲載誌: Scientific Reports
著者: Kyoka Yokogi, Yuki Goto, Mai Otsuka, Fumiya Ojima, Tomoe Kobayashi, Yukina Tsuchiba, Yu Takeuchi, Masumi Namba, Mayumi Kohno, Minami Tetsuka, Sakae Takeuchi, Makoto Matsuyama, Sayaka Aizawa
DOI: 10.1038/s41598-022-21764-6

■研究資金
本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(若手研究・JP20K15833,研究代表:相澤清香)と公益財団法人三島海雲記念財団「学術研究奨励金」(個人研究奨励金)と公益財団法人小柳財団「研究助成」と山陽放送学術文化財団「研究助成」を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
マウスは太るがラットは太らない?!~摂食抑制ホルモンが生物種によって異なる働き~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院自然科学学域
准教授 相澤 清香
(電話番号)086-251-7871 


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