国立大学法人 岡山大学

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食塩に含まれる塩化物イオンは、甘味受容体に作用し甘味を引き起こす〜薄い塩水はほんのり甘い〜

2023年03月01日

◆発表のポイント

  • 食塩に含まれる塩化物イオンが、甘味やうま味の受容体に結合し、糖やアミノ酸などの味物質成分が引き起こすのと同じ作用を示すことを発見しました。
  • 塩化物イオンは、甘味やうま味の受容体を介して、実際に「おいしい(甘い・うまい)」味として感知されていることがわかりました。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・薬学部の渥美菜奈子さん、高科百合子さん、伊藤千晶さん(いずれも卒業・修了生)、安井典久准教授、山下敦子教授と東京歯科大学短期大学・安松啓子教授らの研究グループは、食塩を構成する成分の1つである塩化物イオンが、甘味やうま味の受容体に作用して味覚を引き起こすことを発見しました。
 これらの研究成果は2月28日、米国の生命科学誌「eLife」に掲載されました。
 味覚においては、糖は甘味受容体、食塩に含まれるナトリウムイオンは塩味受容体で感知され、それぞれ甘味、塩味として認識されます。一方、食塩については、ごく薄い食塩水を甘く感じるという不思議な現象が知られていました。今回の発見は、食塩を構成する塩味成分ナトリウムイオン「じゃない方」の成分で、これまで味覚における役割があまりわかっていなかった塩化物イオンが、甘味受容体で感知されており、この不思議な現象に関わっていた可能性を示すものです。
 食塩の摂取は、過剰でも不足でも健康に影響を与えます。本研究成果は、食塩摂取に大きな影響を与える味覚において、食塩がどのように感知されているのかに関する新たな知見をあたえるものです。

◆研究者からひとこと

私たちの口の中で甘味やうま味を感じるセンサーとしてはたらく受容体の解析をしていたところ、本来感知する味物質の近くに、「何か」がくっついているのを見つけたのが、研究のきっかけです。研究室3期生で、いつも笑顔のスゴ腕実験家・渥美さんが、その正体を塩化物イオンと突き止め、実際の結合を証明しました。その後、この塩化物イオンは、甘味やうま味の受容体に対し、通常の味物質と同じ作用を示すことを、研究センス抜群の7期生・高科さんが見つけたことが、今回の発見につながりました。(山下)
渥美さん

高科さん


■論文情報
論 文 名:Chloride ions evoke taste sensations by binding to the extracellular ligand-binding domain of sweet/umami taste receptors
掲 載 紙:eLife
著  者:Nanako Atsumi, Keiko Yasumatsu, Yuriko Takashina, Chiaki Ito, Norihisa Yasui, Robert F. Margolskee, Atsuko Yamashita*
D O I:10.7554/eLife.84291
U R L:https://elifesciences.org/articles/84291

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会・科学研究費補助金(JP18H04621, JP20H03195, JP20H04778, JP21H05524 , JP20H03855, JP20K02415)、公益財団法人三島海雲記念財団、公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団(No.2039)、創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業(No.1264)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
食塩に含まれる塩化物イオンは、甘味受容体に作用し甘味を引き起こす〜薄い塩水はほんのり甘い〜


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬域(薬)
教授 山下 敦子
(電話番号)086-251-7974
(FAX)086-251-7974

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