国立大学法人 岡山大学

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アジド基を利用した深海細菌産生インドールアルカロイド骨格の一挙構築

2023年03月16日

◆発表のポイント

  • 西太平洋の深海細菌から2014年に単離されたshewanelline Cは、一見すると単純な構造でありながら、その合成に関する研究はこれまで報告されていませんでした。
  • 私たちは、反応性に富むアジド基を持ち、各種インドール誘導体の合成素子として機能する試薬である「AZIN」を開発しており、その利用方法を示してきました。
  • AZINのアジド基に由来する窒素原子を活用し、キナゾリン-2,4-ジオン(4)を一挙に組み立てることで、shewanelline Cの骨格を合成しました。
  • 今後、構造変換により、shewanelline Cの全合成が達成される可能性があります。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の山城寿樹(博士課程4年)、德重慶祐(博士前期課程2年)、岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)精密有機合成化学分野の阿部匠講師は、これまでに合成報告の無い特色ある構造を持つ天然物shewanelline Cの骨格の一挙構築に成功しました。この骨格構築は、同研究室で過去にインドール誘導体の合成素子として開発されたAZIN(2-アルコキシ-3-アジドインドリン)試薬、イサト酸無水物とリン試薬を加熱することで達成されました。本手法は、金属試薬や特殊な反応剤を利用しない環境に優しいワンポット合成です。
 本研究成果は、2023年3月8日、アメリカの科学誌「Journal of Organic Chemistry」に掲載されました。Shewanelline Cは回転異性体の存在が報告されているため、今後、この骨格構築法を利用したshewanelline Cの全合成による構造決定と生物活性の解明が期待されます。

◆研究者からひとこと

自然から学ぶことは多く、天然物が存在するからこそ追い求められる化学があります。AZIN試薬を利用して、インドールとキナゾリンを連結しようという試みは、shewanelline Cなしには考えもしなかったものです。本研究によって、期待以上に簡便な方法で目的の骨格構築に成功しました。全合成への夢は、阿部先生のもと、徳重さんの手で叶えてくれることを願っています。
山城院生

徳重院生

阿部講師

■論文情報
論文名: One-pot synthesis of core structure of shewanelline C using an azidoindoline.
掲載誌: Journal of Organic Chemistry
著者: Toshiki Yamashiro, Keisuke Tokushige, Takumi Abe
DOI: https://doi.org/10.1021/acs.joc.3c00013

■研究資金
本研究は科学研究費補助金(22K06503)、の支援を受けて実施しました。山城院生は「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ(略称:OUフェローシップ)タイプB」、並びに日本薬学会長井記念薬学研究奨励支援事業の採用者であり今後の活躍が期待されています。

<詳しい研究内容について>
アジド基を利用した深海細菌産生インドールアルカロイド骨格の一挙構築


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域
講師 阿部 匠

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