国立大学法人 岡山大学

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死んだふりに見られた緯度クライン~北の虫は死んだふりをよく行う~

2023年03月29日

◆発表のポイント

  • クワガタムシなど多くの昆虫は、刺激を受けると死んだように動かなくなる「死んだふり行動」を示します。
  • ファーブルとダーウィンが、昆虫の死んだふり行動に興味を持って以来、この不思議な行動は世界の誰も十分なデータで研究していませんでしたが、死んだふりが天敵を回避するのに有効な戦略であることを世界に先駆けて示した岡山大学の研究チームは、昆虫の死んだふり行動は緯度で変化すること(緯度クライン)を発見しました。
  • 本研究では、日本各地に設置されているコイン精米機から採集されたコクヌストモドキを用いて、採集地の緯度と死んだふりの関係を調査したところ、高緯度(北)の個体は低緯度(南)の個体よりも、死んだふりを高頻度で長い時間行うことが明らかになりました。
  • 本研究は昆虫の死んだふりの進化は緯度の影響を受けていることを示唆した世界で初めての報告となりました。

 岡山大学学術研究院環境生命科学学域の松村健太郎研究助教と宮竹貴久教授は、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)という昆虫を用いて、生息地の緯度と死んだふり行動の関係を調査しました。日本各地に設置されたコイン精米機から採集したコクヌストモドキの死んだふり行動を調べたところ、高緯度(北)の個体は低緯度(南)の個体よりも、死んだふりを高頻度で長い時間行うことが明らかになりました。この研究結果は、3月29日、英国王立協会の国際雑誌「Biology Letters」のResearch Articleとして掲載されました。死んだふりは、昆虫や哺乳類を問わず多くの動物で見られる一般的な捕食回避行動として知られていますが、その頻度や持続時間に緯度クラインが見られることを示したのは本研究が世界で初めてとなりました。

◆研究者からひとこと

時折見かけるコイン精米機の床や壁をじっくりと観察されたことはありますか?そこには、体は小さいですが、様々な昆虫達が生息しています。今回私達は、その一種であるコクヌストモドキを対象として日本各地のコイン精米機を巡って昆虫採集を行い、死んだふり行動の緯度クラインを明らかにしました。身近な所で生息している地味な昆虫からでも、世界を驚かす発見があると私は思っています。
松村研究助教

■論文情報
論文名:Latitudinal cline of death-feigning behaviour in a beetle (Tribolium castaneum)
邦題名「コクヌストモドキにおける死んだふり行動の緯度クライン」

掲載誌:Biology Letters
著者:Kentarou Matsumura, Takahisa Miyatake
DOI:10.1098/rsbl.2023.0028

■研究資金
本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(20J00383, 26291091, 16K14810, 17H05976, 18H02510, 21H02568)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
死んだふりに見られた緯度クライン~北の虫は死んだふりをよく行う~

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)
研究助教 松村 健太郎
(電話番号)086-251-8339 (FAX番号)086-251-8388

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