国立大学法人 岡山大学

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尿路結石形成を防ぐ腸内細菌で働く鍵分子・シュウ酸輸送体の立体構造解明

2023年04月03日

岡 山 大 学
自然科学研究機構
京 都 大 学


◆発表のポイント

  • 尿路結石形成の原因となるシュウ酸を分解する腸内細菌に存在し、菌内へのシュウ酸吸収を担うシュウ酸輸送体の立体構造を解明しました。
  • シュウ酸輸送体は、腸内のシュウ酸に似た形の他の栄養素とシュウ酸を見分け、シュウ酸だけを効率よく菌内に運ぶ仕組みを持つことを明らかにしました。
  • 今後研究が進むことで、尿路結石症を軽減する治療法開発につながることが期待されます。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)の山下敦子教授、自然科学研究機構・分子科学研究所の岡崎圭一准教授、京都大学大学院医学研究科の島村達郎特定准教授、理化学研究所放射光科学研究センターの平井照久チームリーダー(研究当時)らの研究グループは、尿路結石形成に関わるシュウ酸分解菌が腸内からシュウ酸を吸収するときに利用するシュウ酸輸送体の立体構造を、SPring-8を用いて解明しました。
 これらの研究成果は4月3日、英国の科学雑誌「Nature Communications」に掲載されます。
 尿路結石症は、3大激痛の1つとも言われ、日々の食事でホウレンソウなどの食品から摂取したシュウ酸が、尿路でカルシウムなどと結晶化して結石を生じることで起こります。腸内細菌の1種であるシュウ酸分解菌は、腸内のシュウ酸を吸収・分解することで、この結石形成リスクを下げています。研究グループは、シュウ酸を分解菌内へ吸収する役目を担うシュウ酸輸送体の立体構造を解明し、この分子が、シュウ酸に似た他の栄養素とシュウ酸を厳密に見分け、シュウ酸だけを結合しその構造を変化させることで、効率よく菌内に運ぶ仕組みを明らかにしました。
 尿路結石症を防ぐ方法の1つとして、シュウ酸分解菌の治療応用の可能性が検討されています。本研究で得られた知見は、同菌に着目した治療法開発の基盤情報となることが期待できます。

◆研究者からひとこと

たくさんの研究者と学生さんの協力により、私たちの腸内で起こっている反応の一端が少しずつ見えてきました。この研究はいま患者さんの痛みを和らげることはできませんが、将来痛みに苦しむ患者さんを減らせる一助となりますように。(山下)

■論文情報
論 文 名:Structure and mechanism of oxalate transporter OxlT in an oxalate-degrading bacterium in the gut microbiota
掲 載 紙:Nature Communications
著  者:Titouan Jaunet-Lahary, Tatsuro Shimamura, Masahiro Hayashi, Norimichi Nomura, Kouta Hirasawa, Tetsuya Shimizu, Masao Yamashita, Naotaka Tsutsumi, Yuta Suehiro, Keiichi Kojima, Yuki Sudo, Takashi Tamura, Hiroko Iwanari, Takao Hamakubo, So Iwata, Kei-ichi Okazaki, Teruhisa Hirai, Atsuko Yamashita
D O I:10.1038/s41467-023-36883-5
U R L:https://www.nature.com/articles/s41467-023-36883-5

■研究資金
 本研究は、日本学術振興会・科学研究費補助金(JP20H03195, JP18H02415, JP26440086)、公益財団法人小柳財団、公益財団法人武田科学振興財団、国立研究開発法人日本医療研究開発機構・創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム事業(JP20am0101079)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
尿路結石形成を防ぐ腸内細菌で働く鍵分子・シュウ酸輸送体の立体構造解明


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬域(薬)
教授 山下 敦子
(電話番号)086-251-7974
(FAX)086-251-7974

自然科学研究機構 分子科学研究所
准教授 岡崎 圭一
(電話番号)0564-55-7468

京都大学大学院医学研究科
特定准教授 島村 達郎
(電話番号)075-753-4389

理化学研究所放射光科学研究センター
チームリーダー(当時) 平井 照久

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