国立大学法人 岡山大学

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ヤーヌス構造をもつ二次元半導体の生成と生成過程の解析に成功~二次元半導体の新しいデバイス応用展開に期待~

2023年05月12日

◆発表のポイント

  • 原子レベル厚みの半導体材料である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)のヤーヌス構造(ヤーヌスTMDC)の生成に成功しました。
  • プラズマによる原子置換法を利用して、ヤーヌスTMDCの生成過程を詳しく調べました。
  • ヤーヌスTMDCの特性の制御により、TMDCの新しいデバイス応用展開に大きく寄与します。

 劉怡君(研究当時 岡山大学大学院自然科学研究科博士前期課程2年、現東京大学 大学院生)と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の鈴木弘朗助教、鶴田健二教授、林靖彦教授、研究推進機構の中野知佑サイテックコーディネーター、三澤賢明(研究当時 岡山大学学術研究院自然科学学域 助教、現福岡工業大学 助教)らの研究グループは、原子レベルに薄い半導体材料(遷移金属ダイカルコゲナイド、TMDC:Transition Metal Dichalcogenide)のヤーヌス構造の生成(ヤーヌスTMDC)と生成過程の解析に成功しました。
 今回の研究成果は、2023年5月8日に米国化学会(American Chemical Society)発行の学術雑誌「Nano Letters」に掲載されました。
 TMDCは原子3つ分の厚みの半導体材料で、機械的柔軟性に加え、優れた電気・光特性を持つことから、次世代のフレキシブル光電子デバイスへの応用が期待されています。最近、TMDCの表面原子層を別の原子に置換したヤーヌスTMDCの新しい物性と応用が注目されています。ヤーヌスTMDCを生成する画期的な手法が最近報告されましたが、その生成過程はまだよくわかっていませんでした。今回の研究ではヤーヌスTMDCに至る過程の結晶構造や電子状態を実験と理論計算から詳しく解析することに成功しました。この成果は、TMDCの物性制御や新しいデバイス応用展開に繋がります。

◆研究者からひとこと

新しい材料で、先行研究も少なかったので苦労しました。たくさん実験した研究が成果になりとても嬉しいです。(劉)

地道な研究でしたが想定していなかった発見があり、サイエンスの面白さを再認識できました。(鈴木)

劉大学院生(M2)

鈴木助教

■論文情報
論 文 名:Intermediate State between MoSe2 and Janus MoSeS during Atomic Substitution Process
掲 載 紙:Nano Letters
著  者:H. Suzuki, Y. Liu, M. Misawa, C. Nakano, Y. Wang, R. Nakano, K. Ishimura, K. Tsuruta, Y. Hayashi
D O I: https://doi.org/10.1021/acs.nanolett.3c00972
U R L: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.nanolett.3c00972

■研究資金
 本研究は、若手研究(21K14497、20K14378)、2020年度矢崎科学技術振興記念財団、2021年度笹川科学研究助成、2022年度池谷科学技術振興財団研究助成、2022年度公益信託小澤・吉川記念エレクトロニクス研究助成金の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
ヤーヌス構造をもつ二次元半導体の生成と生成過程の解析に成功~二次元半導体の新しいデバイス応用展開に期待~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院 環境生命自然科学学域
助教 鈴木 弘朗
(電話番号)086-251-8133
(FAX)086-251-8133

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