国立大学法人 岡山大学

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酪農を救う!!ウシの繁殖改善に新たな可能性~子宮内細菌叢が受胎に関与か?~

2023年05月17日

岡山大学
NOSAI北海道
北海道大学
麻布大学


◆発表のポイント

  • ウシの子宮内膜組織生検のために採材した検体を用いて、ウシの子宮さいきんそう解析を行いました。
  • 子宮内細菌叢は農場ごとの飼養管理の違いで異なる細菌叢を形成し、受胎性と関連して変動することを明らかにしました。
  • 研究が進むことで、低受胎の原因を診断するための新たなアプローチ方法として子宮マイクロバイオーム検査が確立され、畜産現場における繁殖管理の改善に寄与することが期待されます。

 NOSAI北海道の八木沢拓也 係長と岡山大学学術研究院医歯薬学域の内山淳平 准教授、北海道大学大学院獣医学研究院の市居修 准教授、片桐成二 教授、麻布大学獣医学部の村上裕信 准教授の研究グループは、ウシの子宮内細菌叢1)と受胎との関連性を見出しました。
 これらの研究成果は令和5年4月26日、アメリカ微生物学会の雑誌「Microbiology Spectrum 」のResearch Articleとして掲載されました。
 受胎性の低下は、ウシが分娩して搾乳がまた可能となるまでの期間が延長することで飼養コストの増大につながり、酪農家への経済的負担を大きくします。今回、農場の飼養管理の違いで子宮内細菌叢が異なること、また、受胎性に関連して子宮内細菌叢が変動することを明らかにしました。この研究成果は、ウシの低受胎を早期診断できる技術を開発できる可能性があり、受胎性の改善に向けた飼養管理方法の提案など、酪農の繁殖における諸問題の解決が期待されます。

◆研究者からひとこと


八木沢 係長
(NOSAI北海道)
繁殖の仕事をしていると、牛の状態は臨床的には問題ないにもかかわらず、受胎しない個体が少なからずいます。「受胎しない牛はなぜ受胎しないのか?」この、畜産に関わる人間にとっての永遠の課題に対して、今回の研究では、農場ごとの飼養管理の違いで個々に形成された子宮内細菌叢が受胎に関係するという、新たな可能性を見出すことができました。この成果を形にしてくださった内山先生をはじめとする各大学の先生方、そして、快く研究に協力していただいた農家の皆様に改めて感謝申し上げます!
この研究は、3年前冬の北海道での学会の後の飲み会で、臨床獣医師である八木沢先生と熱く語り合ったのがきっかけでスタートしました。これまでに、多くの先生方の支援があり、ようやくここまで辿り着きました。関係者の方々本当にありがとうございました。
最近、ヒトを含む動物種の間での子宮細菌叢の共通点や相違点が見えてきています。ワンヘルス的な観点からヒトや動物の生殖学と微生物学が融合し、新たな科学が切り開ければと考えています。共同研究に興味がある先生・医療関係者・獣医療関係者の方、お話を頂ければ幸いです。

内山 准教授
(岡山大学)

■論文情報
論文名: Metataxonomic analysis of the uterine microbiota associated with low fertility in dairy cows using endometrial tissues prior to first artificial insemination
邦題名「初回授精前の乳牛における低受胎に関連した子宮内細菌叢の解析」

掲載誌: Microbiology Spectrum
著者: Takuya Yagisawa, Jumpei Uchiyama, Iyo Takemura-Uchiyama, Shun Ando, Osamu Ichii, Hironobu Murakami, Osamu Matsushita, Seiji Katagiri
DOI: 10.1128/spectrum.04764-22
発表論文はこちらからご確認できます。
https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.04764-22


■研究資金
本研究は、令和2年度伊藤記念財団研究助成(研究代表:内山淳平)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
酪農を救う!!ウシの繁殖改善に新たな可能性~子宮内細菌叢(そう)が受胎に関与か?~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域 病原細菌学分野
准教授 内山 淳平
(電話番号)086-235-7158 (FAX番号)086-235-7162

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