◆発表のポイント
- 反復性膀胱炎の膣細菌叢が、一般的な膀胱炎の膣細菌叢とは異なることを突き止めました。
- 乳酸菌の膣坐剤投与が、膣細菌叢の乱れを改善し安定化させ、反復性膀胱炎の予防につながる可能性を見出しました。
- 膣をターゲットとした乳酸菌の坐剤は新たな反復性膀胱炎の予防法となることが期待されます。
岡山大学病院泌尿器科の関戸崇了医員・定平卓也助教(感染症グループ主任)、学術研究院医歯薬学域の荒木元朗教授、岡山大学病院ゲノム医療総合推進センターの冨田秀太副センター長の共同研究グループは、反復性膀胱炎の膣細菌叢が単純性膀胱炎の膣細菌叢とは異なり、乳酸菌の膣坐剤を投与することで、破綻した膣細菌叢が安定し、膀胱炎の原因となる尿路病原性大腸菌の働きを抑えることができることを突き止めました。これらの研究成果は5月18日、スイスの学術雑誌「Frontiers in Microbiology」のResearch Articleとして掲載されました。
閉経後の女性では、ホルモンバランスの影響で膣内の乳酸菌が減少し、かつ変化すると言われ、膣内に尿路病原性大腸菌が定着し膀胱炎が治りにくくなるといわれています。今回、膣細菌叢を詳しく研究することで、膣細菌叢の『乱れ』と反復性膀胱炎が関連すること、乳酸菌膣坐剤が膣細菌叢を安定化させ、繰り返す膀胱炎の発症を防ぐ可能性を見出しました。本研究成果は、抗菌薬では十分に改善することができない反復性膀胱炎に苦しむ数多くの人を救う新たな予防法となりうるだけでなく、抗菌薬に頼らないことで、耐性菌(1)の出現を減らし、不要な抗菌薬投与を削減することが期待されます。
◆研究者からひとこと
約1年かけて試行錯誤しながら研究を続けてきました。研究成果が雑誌に掲載されると決まった時は本当に嬉しくて飛び上がりました!このような形で皆様にご報告でき、大変光栄です。なかなか治らない膀胱炎で困っている方々のため、膣坐剤の実用化を目指してこれからも頑張ります! | 関戸医員 |
■論文情報
論 文 名:Etiology of Recurrent Cystitis in Postmenopausal Women Based on Vaginal Microbiota and the Role of Lactobacillus Vaginal Suppository
邦 題 名「膣内細菌叢に基づく閉経後女性の反復性膀胱炎の病因とLactobacillus膣坐剤の役割」
掲 載 紙:Frontiers in Microbiology
著 者:Takanori Sekito, Koichiro Wada, Ayano Ishii, Takehiro Iwata, Takehiro Matsubara, Shuta Tomida, Masami Watanabe, Motoo Araki, Takuya Sadahira
D O I:https://doi.org/10.3389/fmicb.2023.1187479
U R L:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2023.1187479/full
■研究資金
本研究は、以下の支援を受けて実施しました。
・日本学術振興会 科学研究費(JP17K11183, JP20K18117)
・公益社団法人日本化学療法学会 上原感染症・化学療法研究奨励賞
・GSKジャパン研究助成 2017
<詳しい研究内容について>
反復性膀胱炎の病態を、膣の細菌叢を解析し解明!~乳酸菌膣坐剤は抗菌薬の代わりになるか~
定平助教
<お問い合わせ>
岡山大学病院泌尿器科 助教 定平卓也
(電話番号)086-235-7287
(FAX)086-231-3986