信州大学
科学技術振興機構(JST)
岡山大学
【発表概要】
信州大学学術研究院繊維学系の佐野航季助教(科学技術振興機構さきがけ研究者)と信州大学総合理工学研究科繊維学専攻の近藤翔麻大学院生(修士課程1年)らの共同研究グループは、酸化グラフェン(GO)ナノシートの表面に存在する負電荷と対になる陽イオン(対(たい)カチオン)の種類を制御することによって、温度応答性高分子を利用することなく温度応答性GOナノシートを開発することに成功しました。
温度応答性GOナノシートは様々な機能性ソフトマテリアルを作製するための基盤となる物質として利用されますが、GOナノシートに温度応答性を付与するためには温度応答性高分子の利用が必要不可欠でした。今回、共同研究グループは、GOナノシート表面に存在するカルボキシ基などの酸性官能基の対カチオンを自在に制御する簡便な方法を確立し、様々な対カチオンにおける温度応答挙動を精査したところ、特定の対カチオンを有するGOナノシートが温度応答性を示すことを見出しました。得られた温度応答性GOナノシートの水分散液は、温度に応答してGOナノシートが自己集合/解離することで可逆的なゾル-ゲル転移を示すことが明らかになりました(図1)。さらに、この水分散液をインクとして利用することで、三次元形状がデザイン可能なハイドロゲルを作製することにも成功しました。本戦略は機能性ソフトマテリアルの新たな設計指針として広く用いられることが期待されます。
本研究成果は、2023年7月24日(現地時間)に米国化学会の学術誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載され、同誌のSupplementary Coverにも選ばれました。
■論文情報
タイトル: Countercation Engineering of Graphene-Oxide Nanosheets for Imparting a Thermoresponsive Ability
著者: Shoma Kondo, Tomoki Nishimura, Yuta Nishina, and Koki Sano*
掲載誌: ACS Applied Materials & Interfaces
DOI: 10.1021/acsami.3c07820
■共同研究グループ
信州大学 総合理工学研究科 繊維学専攻 大学院生 近藤 翔麻
信州大学 学術研究院繊維学系 助教 西村 智貴
岡山大学 異分野融合先端研究コア 研究教授 仁科 勇太
信州大学 学術研究院繊維学系 助教 佐野 航季
■研究資金
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業さきがけ(JPMJPR20A6)、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(JP22H02057、JP22H04548)などの支援を受けて実施されました。
<詳しい研究内容について>
対カチオン制御によって温度応答性酸化グラフェンを開発〜機能性ソフトマテリアルの設計に新たな指針を提示〜
<お問い合わせ>
<研究に関すること>
信州大学 学術研究院繊維学系
助教 佐野 航季
<報道に関すること>
信州大学 繊維学部 広報室
TEL: 0268-21-5305
科学技術振興機構 広報課
TEL: 03-5214-8404 FAX: 03-5214-8432
岡山大学 広報課
TEL: 086-251-8415 FAX: 086-251-7294
<JST事業に関すること>
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
安藤 裕輔
TEL: 03-3512-3526 FAX: 03-3222-2066