国立大学法人 岡山大学

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40年未達成であった(±)-rivularin Aの全合成に世界で初めて成功!~Rivularin Aの毒性を生かした新規医薬品の開発に期待~

2023年12月11日

◆発表のポイント

  • (+)-Rivularin Aは、1982年にオーストラリアのウェスタンポートベイで単離されたインドールアルカロイドです。2量体構造持つことに加えて、臭素原子を6つと軸不斉を有する興味深い天然物です。
  • 挑戦的な合成標的の一つとして知られていましたが、この40年間、全合成はもちろん合成に関する研究すら報告されていない合成困難化合物でした。これは、(+)-rivularin Aの骨格であるインドールの3位炭素原子と1位の窒素原子が結合した2量体(C3-N1' ビスインドール)は、マイナスとマイナスを結合させなければ合成が難しいためです。
  • 今回、極性転換型のインドール試薬HITABとインドリンを反応させることによって収率良く多様なC3-N1' ビスインドールを合成することに成功しました。
  • 本手法を用いることで、40年間未達成であった (±)-rivularin Aの初全合成を達成しました。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)薬品合成学分野の徳重慶祐大学院生(博士後期課程1年)、学術研究院医歯薬学域(薬)精密有機合成化学分野の阿部匠講師は、40年間全合成が未達成であった天然物(±)-rivularin Aの初全合成を達成し、その構造が提唱された構造と相違ないことを明らかにしました。Rivularin Aは分子内に6つの臭素原子を有するインドール2量体であり、一部の癌細胞に対する毒性が報告されています。
 本研究成果は、2023年11月21日、ヨーロッパの科学誌「Chemistry - A European Journal」に掲載されました。今後、本手法を用いた(+)-rivularin Aの不斉全合成と類似天然物の全合成が期待されます。

◆研究者からひとこと

苦節1年。ようやく本研究を形にすることができました。ご助力いただいた阿部先生をはじめとした先生方や支えてくれた家族にまずは深く感謝します。実際のチャート等が無く、全合成を達成したその時でさえも達成した実感はありませんでしたが、論文を形にするに際してふつふつと実感が湧いてきました。長く、時には苦しい時期もありましたが、最後には自前の根性と執念で全合成を達成できたことを嬉しく思います。
徳重大学院生

阿部講師

■論文情報
論文名:On Demand Synthesis of C3–N1' Bisindoles by a Formal Umpolung Strategy: First Total Synthesis of (±)-Rivularin A
掲載誌:ChemistryA European Journal
著者:Keisuke Tokushige, Takumi Abe
DOI:10.1002/chem.202302963
URL:https://chemistry-europe.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/chem.202302963

■研究資金
本研究は科学研究費補助金(22K06503)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
40年未達成であった(±)-rivularin Aの全合成に世界で初めて成功!~Rivularin Aの毒性を生かした新規医薬品の開発に期待~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)
講師 阿部 匠

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