国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

骨折治癒へのソニックヘッジホッグの関与を解明

2013年12月03日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の口腔顎顔面外科学分野の志茂剛准教授、佐々木朗教授、堀切優歯科医師らの研究グループは、胎生期の形態形成において重要な因子として同定されたタンパク質「ソニックヘッジホッグ(Sonic Hedgehog:SHH)」が骨折治癒過程における骨の改造に関与することを、世界で初めて明らかにしました。
 本研究成果は、2013年10月4日、米国のオンライン科学雑誌『PLoS One』に掲載されました。
 今後、このSHHシグナルについての研究が進めば、そのシグナルを応用した早期の骨折治癒の促進が期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の口腔顎顔面外科学分野の志茂剛准教授、佐々木朗教授、堀切優歯科医師、米国ペンシルバニア大学の岩本容泰准教授らの共同研究グループは、胎生期の形態形成に重要な働きを担うタンパク質「ソニックヘッジホッグ(Sonic Hedgehog:SHH)」が骨折治癒過程における骨改造を促進させる可能性を明らかにしました。
 骨折治癒では、膜性骨形成と内軟骨性骨形成の両者が協調し、骨を壊す細胞(破骨細胞)が骨の断端部や軟骨を吸収し、その後吸収部位に骨をつくる細胞(骨芽細胞)が新しい骨を埋めながら治癒がおこってきます。
 SHHは、骨折初期には骨折部位の骨髄細胞に発現し、仮骨形成期には軟骨表面の骨芽細胞に発現してきます。SHHは、骨芽細胞の分化を直接促進させる一方で、骨芽細胞から破骨細胞分化因子(RANKL)を誘導し、間接的に破骨細胞分化を促進するメカニズムが明らかとなりました(図1)。


図1 骨折後初期,仮骨形成期にSHHは発現し,骨改造に関与する

<見込まれる成果>
 顎顔面骨折は、摂食・嚥下(食べものを口に入れ、咀嚼して、飲みこむ一連の動作)など、患者の生命の質(Quality of Life:QOL)を著しく低下させます。そのため、早期の回復が望まれます。
 今後、SHHによる骨髄細胞、骨芽細胞の活性化に関わる生体分子群を明らかにすることで、これらの因子を応用した早期の骨折治癒が期待されます。

<補 足>
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費挑戦的萌芽研究の助成(3,770千円)を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Yuu Horikiri, Tsuyoshi Shimo, Naito Kurio, Tatsuo Okui, Kenichi Matsumoto, Masahiro Iwamoto, and Akira Sasaki. Sonic Hedgehog Regulates Osteoblast Function by Focal Adhesion Kinase Signaling in the Process of Fracture Healing. PLoS One. 8(10):e7678, 2013; (doi: 10.1371/journal.pone.0076785)

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
(所属)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
口腔顎顔面外科学分野 准教授
(氏名)志茂 剛
(電話番号)086-235-6702
(FAX番号)086-235-6704

年度