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高齢者の新たな健康リスク要因は“性格”!?

 本学大学院医歯薬学総合研究科の葛西洋介大学院生(疫学・衛生学分野)、土居弘幸教授らの研究グループは、日本の高齢者においてType D気質と呼ばれる性格・気質を初めて調査しました。日本人高齢者では男女ともに、Type D気質があると、心理的な苦痛を4倍以上感じやすく、自分が不健康だと2倍以上に感じやすくなることが示唆されました。特に75歳以上に比べて65~74歳の方がよりその傾向が強く、定年退職直後の方などで注意する必要があると思われます。本研究成果は2013年10月17日、米国のオンライン科学雑誌『PLoS ONE』に掲載されました。
 本研究は、先進各国における老年医学研究に関する新たな視点を与えるものであり、今後の社会的サポートの提供などについて大きな貢献が期待されます。
<業 績>
 性格や気質と呼ばれるものは、その人の考え方や行動に影響して、ひいては個人の健康に影響を及ぼします。最近、Type D*1という性格・気質が注目されていますが、日本人での研究はされたことがなく、世界でも高齢者を対象にした研究はありませんでした。この度、岡山大学大学院疫学・衛生学分野他の共同研究グループ5人(葛西洋介院生、鈴木越治助教、岩瀬敏秀助教(地域医療人材育成講座)、土居弘幸教授、高尾総司講師)は、日本人高齢者におけるType D気質の心理的・身体的健康影響について検証し、その研究結果について報告をしました。
 本研究では、2010年8月に岡山県内の3市町に居住する65歳以上の全人口を対象として調査票を郵送し、回収された13,929名を分析しました。
 まず、Type D気質を有する割合は46.3%と先行研究に比べて高いことがわかりました。年齢やアルコール、喫煙、肥満、教育歴、社会経済的地位、同居人数を統計学的に調整し解析した結果、Type D気質を有する男女ともに心理的苦痛を感じるリスクは4~5倍、自分で不健康だと感じるリスクが2倍高いことが示されました。特に注目すべき点として、65~74歳の人達が、75歳以上の人達に比べてよりリスクが高くなることが示唆されました(表1)。さらには、65-74歳ではType D気質を有する場合、気分障害などの精神的疾患に関する重篤な心理的苦痛へのリスクは9.92倍(調整後)と著しく高くなり、より注意が必要ということが示唆されました。

*1 negative affectivity(否定的な感情や視点、考えを抱きやすい傾向)とsocial inhibition(他者からの否認や非難などを恐れるため、否定的な感情を表現できない傾向)を併せ持った気質


表1.Type D気質と心理的苦痛および主観的不健康の関連(発表論文から改変)


<見込まれる成果>
 近年、我が国のみならず、先進各国は高齢化問題に直面しており、高齢者に対するヘルスケアシステムの需要は増大しています。つまり、少なくなっていく若者人口を背景に、増大する高齢者にどのように社会的なサポートをしていくかを考慮するため、より効率的な資源の投入が望まれています。病気にならないように予防的にサポートをしていくことが重要ですが、まずはどのような人達のリスクが高いかを知ることはとても有用です。本研究成果を更に発展させることは、効果的な社会的サポートの提供を検討する上で重要であると考えられます。

<補 足>
 性格・気質の研究は以前からあり、様々な病気へのかかりやすさや、寿命にも影響していると言われています。先行研究によると、Type D気質は心血管疾患やメタボリックシンドロームなどの身体疾患、うつ病やPTSDといった精神疾患にかかりやすいという結果も出ています。性格や気質というと生まれつき持ったもので変わらないものだとの印象がありますが、大きな出来事の前後で変わるということも言われています(手術前後で変わったという研究があります)。年齢層や人種、文化的背景によって性格・気質の健康影響は大きく異なりうるため、欧米の研究がそのまま日本人にはあてはまりづらい分野とも考えられます。それだけに、本研究はType D気質に関して初めて日本人を対象にしている、さらには世界で初めて一般人高齢者を対象にした研究ということで、先駆的です。
 本研究は自記式の調査票を用いた研究ですが、答えがなかった質問項目を、多重補完法という統計学的手法を用いてサブ解析しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Kasai Y, Suzuki E, Iwase T, Doi H, Takao S (2013) Type D Personality Is Associated with Psychological Distress and Poor Self-Rated Health among the Elderly: A Population-Based Study in Japan. PLoS ONE 8(10): e77918. doi:10.1371/journal.pone.0077918

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
 疫学・衛生学分野 
(氏名)葛西洋介、土居弘幸
(電話番号)086-235-7174