◆発表のポイント
- アフリカツメガエルが黄色ブドウ球菌や緑膿菌などのヒト病原性細菌により感染死することを発見しました。
- ヒト病原性細菌によるアフリカツメガエルの感染死は抗生物質により抑制されました。
- ヒト病原性細菌の病原性遺伝子の欠損株はアフリカツメガエルへの致死効果が低下しました。
- 本研究結果は、細菌感染症のメカニズム解析と治療薬開発の効率化を実現すると期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の栗生綾乃大学院生(博士前期課程1年)、学術研究院医歯薬学域の石川一也助教、古田和幸准教授、垣内力教授らの研究グループはアフリカツメガエルがヒト病原性細菌の感染モデルとして利用できることを発見しました。
本研究成果は5月1日に米国の科学雑誌「Infection and Immunity」のオンラインサイトに掲載され、6月号のカバーイメージに採択されました。
細菌感染症の分子メカニズムを解明するためには、動物感染モデルの使用が必要不可欠です。これまでに汎用されてきたマウスなどのほ乳動物の感染モデルは、倫理面・コスト面の問題から多数の個体を用いて薬剤などを探索することが困難でした。本研究では、ほ乳動物と類似した臓器を有し、発生生物学のモデル動物として利用されてきたアフリカツメガエルがヒト病原性細菌の感染モデルとして利用可能かを検討しました。その結果、ヒトに対する病原性細菌である黄色ブドウ球菌、緑膿菌、リステリア•モノサイトゲネスがアフリカツメガエルを感染死させること、その感染死が臨床上使用されている抗生物質により抑制されることが明らかとなりました。また、ヒト病原性細菌によるアフリカツメガエルの感染死には、溶血毒素など、ほ乳動物への感染に必要な細菌の病原性遺伝子が必要でした。
アフリカツメガエル感染モデルは、細菌感染症のメカニズム解析と治療薬開発の効率化を実現すると期待されます。
◆研究者からひとこと
今後はアフリカツメガエル体内の細菌の感染プロセスを解析し、ヒト病原性細菌の病原性に関わる遺伝子を探索する予定です。実験に協力してくれた研究室メンバーや、論文作成において多大なご指導とご助言をいただいた先生方に深く感謝申し上げます。 | ![]() 栗生大学院生 |
■論文情報
論 文 名:Xenopus laevis as an infection model for human pathogenic bacteria
掲 載 紙:Infection and Immunity
著 者:Ayano Kuriu, Kazuya Ishikawa, Kohsuke Tsuchiya, Kazuyuki Furuta, Chikara Kaito
D O I:10.1128/iai.00126-25
U R L:https://journals.asm.org/doi/10.1128/iai.00126-25
カバーイメージ:https://journals.asm.org/toc/iai/93/6
■研究資金
本研究は、科学研究費補助金(23K24131、24K01760、23K06130)などの支援を受けて実施しました。
■倫理審査
本研究は、岡山大学動物実験委員会の審査を受けて実施しました(OKU-2024557)。
<詳しい研究内容について>
アフリカツメガエルを使ったヒト病原性細菌感染モデル
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)
教授 垣内 力
(電話番号)086-251-7960