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社会行動が概日リズムに影響を与えると神経レベルで解明

 岡山大学大学院自然科学研究科時間生物学教室の吉井大志助教、富岡憲治教授らの研究グループは、モデル生物にキイロショウジョウバエを用いて、オスの一日の行動リズム(概日リズム)がメスのリズムによって影響を受けることを明らかにしました。また、メスとの接触により、オスの脳内時計細胞に影響が現れることを世界で初めて突き止めました。本研究は、社会行動が体内時計に影響を与えることを神経レベルで明らかにした世界で初めての研究成果です。
 本研究成果は2013年12月18日、米国のオンライン科学雑誌『PLoS One』に掲載されました。
 本研究が進めば、睡眠障害など概日リズムの変調に関与する疾患の原因の一つとして、社会的要因が関与することが明らかになる可能性があります。
<業 績>
 岡山大学大学院自然科学研究科時間生物学教室の吉井大志助教、富岡憲治教授ら5人の研究グループは、体内時計が約19時間のリズムで動くキイロショウジョウバエの突然変異体を用いて、オスとメスを同居させた場合の行動リズムを解析しました。
 野生型のハエは夕方に活動が高まりますが、突然変異体は活動時間が早まり、昼には活動が高まります。この突然変異体のメスと同居した野生型のオスはメスの活動時間に合わせて、昼の活動が高まりました(図1)。
図1.早く活動するメスに合わせて、オスの活動も早くなる。

そこで、オスの脳を特殊な抗体で染色し、時計タンパク質PDP1の発現リズムを観察したところ、DN1と呼ばれる神経細胞群がメスのリズムに影響を受けていることが明らかになりました(図2)。
図2.キイロショウジョウバエの脳にある時計細胞の分布と本研究で注目した細胞群DN1における時計タンパク質PDP1の発現

 これまで社会行動と概日リズムの関係は、主に哺乳類や社会性昆虫(ミツバチなど)で研究されてきました。本研究では、モデル生物であるキイロショウジョウバエを用いることで、社会行動と概日リズムに関与する神経細胞群を同定することが世界ではじめて可能になりました。キイロショウジョウバエにおいては、オスがメスの行動リズムに合わせることにより、交尾の機会を増やし、子孫を増やすことにつなげていると考えられます。

<見込まれる成果>
 体内時計により制御されている概日リズムは光などの24時間の環境サイクルに同調します。社会行動が概日リズムに及ぼす影響はこれまで長く議論されてきましたが、未解明の部分が非常に多く、研究も進んでいませんでした。
 体内時計のメカニズムは種を超えて共通する部分が非常に多いことから、本研究のキイロショウジョウバエのように、他の動物種(ヒトを含む)においても雌雄の社会的関係が概日リズムに影響を与える可能性が考えられます。
 概日リズムの乱れは、睡眠障害、うつ病、肥満などを引き起こす要因となることが明らかになっています。本研究の成果は、ヒトの概日リズムの乱れにおいても社会的要因が関与する可能性を示唆しています。将来、睡眠障害などの疾患が体内時計と社会因子の観点からも研究されることが考えられます。

<補 足>
 キイロショウジョウバエは概日リズムを制御する“時計細胞”が正確に同定されている実験モデル動物です。脳内の150個の神経細胞が概日リズムに関わる時計細胞であることが明らかになっています。DN1と呼ばれる神経細胞群も時計細胞であります。時計タンパク質はその時計細胞の中で体内時計の歯車となるタンパク質であり、その多くは約24時間の周期でタンパク質の量が変化します(発現リズム)。
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費 若手研究B、基盤研究Bおよび稲盛財団、住友財団の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Hanafusa S, Kawaguchi T, Umezaki Y, Tomioka K, Yoshii T Sexual interactions influence the molecular oscillations in DN1 pacemaker neurons in Drosophila melanogaster. PLoS One, 2013, 8, e84495

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
(所属)岡山大学大学院自然科学研究科 助教
(氏名)吉井 大志
(電話番号)086-251-7870
(FAX番号)086-251-7870
(URL)http://www.biol.okayama-u.ac.jp/tomioka1/top.html