国立大学法人 岡山大学

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味覚障害の一端を解明~味細胞のシナプス不全で酸味が異常に~

2025年07月02日

◆発表のポイント

  • 味細胞のシナプスに異常をきたすマウスでは酸味に対する応答だけが減少しました。
  • このマウスの味覚組織を調べると、酸味受容細胞の維持ができないことがわかりました。
  • また、他の味覚(甘味、うま味、塩味、苦味)には影響が見られませんでした。
  • 味覚の情報処理には複数の神経メカニズムが関与することが明らかとなりました。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(歯)口腔生理学分野の堀江謙吾助教、吉田竜介教授らの研究グループは、味細胞で特異的にシナプス関連遺伝子を欠損させたマウスを作成することで、味細胞におけるシナプスの機能的役割について調べました。味細胞シナプスを欠損したマウスで、基本味(甘味、うま味、塩味、苦味、酸味)に対する応答を調べると、酸味に対する応答のみが異常をきたし、他の味に対する応答には影響が見られませんでした。また、このマウスの舌組織を調べると、酸味受容細胞の維持ができないことが明らかとなりました。この研究成果は、2025年6月24日、生理学系専門誌「The Journal of Physiology」に掲載されました。
 本研究は、味細胞から味神経への情報伝達機構が複数存在することを明らかとし、味細胞のシナプス異常が酸味特異的味覚障害(sour ageusia)の要因の一つとなりうることを示しました。

◆研究者からひとこと

5つの基本味(甘味、うま味、塩味、苦味、酸味)のうち、「なぜ酸味を感じる味細胞だけ化学シナプスを利用しているのか?」、「他の味を感じる味細胞との違いは何か?」と疑問は尽きませんが、この研究は味覚の面白さを示す1つのランドマークであると思っています。
吉田教授

■論文情報
論文名: Dual functions of SNAP25 in mouse taste buds
邦題名「マウス味蕾におけるSNAP25の二重機能」

掲載誌:The Journal of Physiolog
DOI: 10.1113/JP288683
U R L: https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/JP288683
発表論文はこちらからご確認できます。


■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤研究(B)21H03106、23K21484、挑戦的研究(萌芽)24K22186、研究代表:吉田竜介)、うま味研究会、および糧食研究会の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
味覚障害の一端を解明~味細胞のシナプス不全で酸味が異常に~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(歯)口腔生理学
教授 吉田 竜介
(電話番号)086-235-6640
(HP)https://www.okayama-u.ac.jp/user/oralphys/OralPhysiology.html

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