国立大学法人 岡山大学

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食者との同居は死んだふりを長くする~5世代で見られた迅速な進化反応~

2025年07月08日

◆発表のポイント

  • 死んだふりは生物が外部からの刺激を受けた後に突然動かなくなる行動です。哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類・甲殻類・等脚生物などさまざまな動物で死んだふりをすることがわかっています。では死んだふり行動は、野外で本当に進化するのでしょうか?
  • 今回、私たちは捕食者であるコメグラサシガメと同居させた環境と、同居させない環境で貯穀害虫である甲虫のコクヌストモドキを累代飼育(進化実験)した結果、5世代同居させた甲虫は同居させない甲虫に比べ死んだふりの持続時間が3倍以上も長くなることを確認しました。
  • 私たちはこれまでも野外から採集したコクヌストモドキについて、野外でサシガメと同居する集団と同居しない集団で死んだふり行動を比較し、同居集団では死んだふり持続時間が長いことを確認していました(Konishi et al. 2020)。今回の実験進化では、捕食者と世代を超えて同居する環境では、餌昆虫の死んだふり持続時間が(野外と同様の環境下で)わずか5世代で長い方向に迅速に進化することを実証しました。

岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の宮竹貴久教授は、東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系の松村健太郎助教と、岡山大学農学部の卒業生たちとともに、コクヌストモドキを餌とし、コメグラサシガメを捕食者として、5世代のあいだ同居させたところ、死んだふりの持続時間が有意に長く進化することを確認しました。一方、死んだふりの生じる頻度や活動量に、捕食者同居による影響はみられませんでした。捕食者が存在する場所で暮らすコクヌストモドキは、存在しない環境のそれより死んだふり持続時間が長いという先行研究の結果(Konishi et al. 2020)と併せ、捕食者の存在によって死んだふり行動が進化することを実証できました。この研究成果は7月8日午前0時(日本時間)、Springerの日本応用動物昆虫学会誌「Applied Entomology and Zoology」にオンライン掲載されます。

◆研究者からひとこと

 昆虫記を書いたアンリ・ルアール・ファーブルが死んだふり行動の適応に興味を持って以来、野外で死んだふり行動が本当に進化するのか、誰も解明していませんでした。「誰も解明していないことなら自分が挑戦しようという姿勢」を学生と共有できたことが今回の研究成果につながったと思います。
宮竹教授

■論文情報
論文名:Experimental evolution of prey by predation pressure: death-feigning duration becomes longer in the presence of predators
邦題名「捕食圧による餌の実験進化:捕食者の存在によって死んだふり持続時間が長くなる」

掲載誌:Applied Entomology and Zoology
著者:Yuuki Miura, Takii Hayato, Kentarou Matsumura, Takahisa Miyatake
DOI:10.1007/s13355-025-00913-z.
U R L:https://link.springer.com/article/10.1007/s13355-025-00913-z.

■研究資金
本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(研究・23K21343,25K09771研究代表:宮竹貴久)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
食者との同居は死んだふりを長くする~5世代で見られた迅速な進化反応~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)
教授 宮竹 貴久
(電話番号)086-251-8339 (FAX番号)086-251-8388

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