診断と治療をつなぐセラノスティクスPET診断薬の開発!~神経疾患や心不全・がんなどの画像診断と治療評価に革新~
2025年08月20日
◆発表のポイント
- パーキンソン病や心不全の早期・精密診断に加え、交感神経系腫瘍の診断にも革新をもたらすことが期待されるPET診断薬を開発し、世界初の臨床研究が進行中です。
- これまで画像化が困難だった心筋・腎臓の微細な病変や、がんの悪性度に関わる分子変化を高精細に可視化することを可能にする放射性診断薬を開発しました。
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)の能勢直子助教および樋口隆弘教授(特任)の所属する研究グループは、ドイツ・ヴュルツブルク大学との国際共同研究により、次世代型の高精細PET診断薬の開発に成功しました。この成果は、「大学改革促進のための国際研究拠点形成プログラム(RECTOR)」の分子イメージングプロジェクトによるもので、2つの診断薬があります。
1つ目は、パーキンソン病や心不全、交感神経系腫瘍などの早期診断・治療評価に有用な新規PET診断薬で、日本で世界初の臨床研究が始まったのち、ドイツでも臨床応用が始まりました。
2つ目は、心筋・腎臓の微細な病変、がんの悪性度に関わる分子変化を高精細に可視化する放射性診断薬「F-18標識化合物[18F]DR29」で、安全性・有効性が確認され、実用化が期待されています。さらに、個別化医療やセラノスティクスの実現に貢献すると期待されています。
本成果は、米国心臓協会(AHA)が発行する医学雑誌『Hypertension』に8月8日に掲載されました。
◆研究者からひとこと
日本とドイツそれぞれの強みを生かし、基礎から臨床応用まで一気通貫で推進してこられたこと自体が画期的であり、大きな成果だと考えています。神経疾患や心不全、がんといった幅広い疾患領域において、これらのPET診断薬が早期診断や治療評価、さらにはセラノスティクスを通じた個別化医療の実現に貢献することを強く期待しています。 | ![]() 樋口教授(特任) |
■論文情報
論 文 名:Redefining AT1 receptor PET Imaging: Introducing the Radiotracer [18F]DR29
掲 載 紙:Hypertension
著 者:Xinyu Chen, Hiroyuki Kimura, Takanori Sasaki, Konrad Klimek, Saskia Mühlig, Paula-Anahi Arias-Loza, Naoko Nose, Yusuke Yagi, Steven Rowe, Constantin Lapa, Rudolf Werner, and Takahiro Higuchi
D O I:10.1161/HYPERTENSIONAHA.124.24441
U R L:https://doi.org/10.1161/hypertensionaha.124.24441
■研究資金
本研究は、大学改革促進のための国際研究拠点形成プログラム(RECTOR)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
診断と治療をつなぐセラノスティクスPET診断薬の開発!~神経疾患や心不全・がんなどの画像診断と治療評価に革新~
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院医歯薬学域(医)
RECTOR分子イメージングプロジェクト
教授(特任) 樋口 隆弘
助教 能勢 直子
(電話番号)086-235-7742