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鎮静薬の局所投与で炎症が抑制 革新的歯科用局所麻酔剤の開発に前進

 岡山大学病院歯科麻酔科の樋口仁講師、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯科麻酔・特別支援歯学分野の助川信太朗大学院生、宮脇卓也教授、同研究科口腔病理学分野の長塚仁教授らの研究グループは、現在広く臨床で使用されている鎮静薬「デクスメデトミジン」を局所に投与することにより、投与部位の炎症を抑制するという新たな薬理作用を世界で初めて明らかにしました。
 本研究成果は、2014年2月発行の国際雑誌『Anesthesia and Analgesia』に掲載されました。
 同研究グループはこれまでに、デクスメデトミジンを局所麻酔薬に添加することにより局所麻酔の効果が増強されることも報告しており、デクスメデトミジンを局所麻酔薬に添加することにより、抗炎症作用を有する革新的な次世代の歯科用麻酔剤の開発を目指します。
<業 績>
 岡山大学病院歯科麻酔科の樋口仁講師、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯科麻酔・特別支援歯学分野の助川信太朗大学院生、宮脇卓也教授、同研究科口腔病理学分野の長塚仁教授らの研究グループは、現在、集中治療室など広く臨床で使用されている鎮静薬の一つである「デクスメデトミジン」を局所に投与することにより、投与部位の炎症を抑制するという新たな薬理作用を世界で初めて明らかにしました。
 同研究グループは、炎症を引き起こす物質であるカラゲニンとカラゲニンにデクスメデトミジンを混ぜたものをそれぞれマウスの足に注射し、その腫れの程度、炎症に関わる細胞(白血球)の数、炎症に関わるタンパク質の発現を比較しました。その結果、デクスメデトミジンを注射した足では、炎症による腫れが有意に抑制され(図1)、炎症に関わる細胞の数も減少していました。さらに炎症に関わるタンパク質の産生についても、デクスメデトミジンを投与した足では有意にその産生が抑制されていました。これによりデクスメデトミジンを局所に投与すると、投与部位の炎症を抑制するというデクスメデトミジンの新たな薬理作用を報告しました。

図1. カラゲニンにより誘発された腫れに対するデクスメデトミジンの作用。
  デクスメデトミジンの局所投与により腫れが抑えられている
   a: カラゲニンのみを注射したマウスの足
   b: カラゲニンとデクスメデトミジンを注射したマウスの足

<見込まれる成果>
 現在、歯科治療に使用されている局所麻酔剤は、局所麻酔薬のみでは麻酔効果が弱いため、麻酔作用を増強するために血管収縮薬が添加されています。しかしこの血管収縮薬には心拍数をあげるなどの副作用があり、高齢者や心疾患を有する患者さまでは使用に注意が必要です。
 さらに局所麻酔が必要な歯科手術(抜歯、歯科インプラント手術など)においては、手術の後の炎症による腫れや痛みはどうしても避けられません。そのため局所麻酔薬に麻酔作用の増強と抗炎症作用を付加でき、副作用の少ない新たな添加薬の開発が望まれています(図2)。
 同研究グループはこれまでに、デクスメデトミジンを局所麻酔薬に添加すると局所麻酔の効果が増強されること報告しており(発表論文:Yoshitomi T, et al: Anesth Analg, 107: 96-101, 2008)、さらに、このデクスメデトミジンの局所投与は心拍数を上げるなどの副作用をおこさないことを近日報告しています(発表論文:Yabuki A, et al: Reg Anesth Pain Med. 2014)。
 本研究は、デクスメデトミジンを局所へ投与することにより抗炎症作用を発揮するという新しい薬理作用を証明し、デクスメデトミジンが局所麻酔薬への新たな添加薬の候補となることを世界で初めて示しました。
 現在、副作用が少なく、さらに抗炎症作用を有する革新的な次世代の歯科用麻酔剤の開発を目指して精力的な研究を進めています。

図2. 歯科用局所麻酔剤に抗炎症作用が有る場合と無い場合の違い
<補 足>
 本研究グループは、従来の局所麻酔剤(局所麻酔薬+血管収縮薬(アドレナリン))にデクスメデトミジンを配合した合剤の特許申請を国内外で行っており、米国および中国ではすでに承認を得ています。
   ・国内特許出願:局所麻酔用組成物(特願2008-279142, 2008.10.30)
   ・国際特許出願:COMOSITION FOR LOCAL ANESTHESIA(PCT/JP2009/005718, 2009.10.29)
   ・米国特許出願:COMOSITION FOR LOCAL ANESTHESIA(US13/123545, 2009.10.29)
   ・欧州特許出願:COMOSITION FOR LOCAL ANESTHESIA(09823324.0号, 2009.10.29)
   ・中華人民共和国特許出願:局所麻酔用組成物(200980143285.1号, 2009.10.29)

 本研究は、平成23年度独立行政法人科学技術振興機構(JST)知財活用促進ハイウェイ「大学特許価値向上支援」の助成を受け実施しました(研究名称「抗炎症作用を有する局所麻酔剤開発に向けての発展的研究)。

発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Sukegawa S, Higuchi H, Inoue M, Nagatsuka H, Maeda S, Miyawaki T. Locally injected dexmedetomidine inhibits carrageenin-induced inflammatory responses in the injected region. Anesthesia & Analgesia. 2014 Feb;118(2):473-80. doi: 10.1213

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
(所属)岡山大学病院歯科麻酔科 講師
(氏名)樋口 仁
(電話番号)086-235-6721
(FAX番号)086-235-6721
(歯科麻酔科のページ)//www.okayama-u.ac.jp/user/shimasui/